2008年04月30日

北朝鮮変動の兆候

先日福田首相が訪露したおりに、プーチンさんが妙にはっきりと北朝鮮を非難する態度をあらわしました。

ロシアのプーチン大統領が26日の福田康夫首相との首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致事件について「許せない行為だ」と述べ、かつてない強い口調で北朝鮮を批判し、拉致問題解決に向けての協力を惜しまない考えを示していたことが明らかになった。北朝鮮に隠然たる影響力をもつロシアの首脳の「怒り」が、北朝鮮を動かす圧力になる可能性がある。

プーチン大統領「北朝鮮許せない」 拉致問題に“激怒” 日露首脳会談
MSN産経ニュース 08年4月29日



もっともこの記事によれば、

日露関係筋は「拉致問題でロシアが真剣に北朝鮮の尻をたたくとは思えない。北方領土問題で日本側を懐柔するために、日本を後押しするポーズをみせているのではないか」と指摘している。


ということですが、北を餌にして日本を釣るのだったら、正直今ではなく、拉致問題の解決を最優先課題とする一方で、「自由と繁栄の弧」政策でロシアを牽制していた安倍政権時の方が篭絡しやすく、効果も大きかったように思います。

福田さんは、確かに以前からなぜかロシアに対してだけは強硬派なのですが、何しろレイムダック状態ですし、それに正直拉致問題に力を入れていません。たとえポーズだとしても、北朝鮮カードを切る相手として最適とは思えません。

プーチンともあろう策士が、なぜそんなタイミングで北朝鮮を安売りしようとするのか?そう考えると、あるいはプーチン大統領は、北朝鮮株が暴落するというインサイダー情報でもつかんでいるのではないかと勘ぐりたくなります。

その兆候は他にもあります。

北朝鮮をめぐる状況は、米ブッシュ政権の弱体化で、もう長らく北にとって好ましい方向に推移していました。北朝鮮に埋蔵するレアメタルの存在が脚光を浴び始めるなど、北への妥協により得られる利益も強調され始めていました。そして先月、アメリカの融和的姿勢は頂点に達しました。

北朝鮮のプルトニウム申告でテロ支援指定を解除か、米国
CNN 08年4月12日


米政府、核計画の検証完了前に対北朝鮮制裁緩和も
ロイター 08年4月18日


対北最強硬派の一人であるボルトン前国連大使は、検証手段なしの合意に踏み切ろうとするブッシュ政権の態度を、北への降伏だと非難しました。

Bush's North Korea Capitulation
WSJ 08年4月15日(英語)


ブッシュ政権のやり方を、クリントンやカーター政権と同列視するボルトン氏の主張は、ブッシュ大統領にとって最大限の侮辱です。

しかしここで、ブッシュ政権は唐突にUターンします。



去年9月にイスラエルが空爆したシリアの核施設への北朝鮮の関与は前々から疑われてきたことです。なぜその発表が今このタイミングでなくてはならないのか、また発表内容の信憑性そのものについても、強硬派の中ですら首をかしげる人がいます。

とにかくアメリカは、対北融和による合意という選択肢を、この発表で、それこそ不可逆的に破棄してしまいました。弱腰と見られることを何より嫌うブッシュ大統領が、黙って北朝鮮に妥協するとは考えにくいことでしたが、それにしてもなぜここまでの力技に出たのかどうも解せません。

これまで粛々と進めてきた対北融和を唐突に反故にしてしまったブッシュ。そしてやはり唐突に拉致問題に激怒してみせたプーチン。“ビッグボーイズ”たちの態度の豹変ぶりは、北朝鮮で何かが起きる前兆のような気がしてなりません。

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2008年04月29日

名誉の殺人

17歳のイラクの女学生、ランドは、一人の男性に恋をしました。相手は、バスラに駐屯する22歳のイギリス兵、ポールでした。

粗野で無学なイラクの男たちにくらべて、彼はいかに洗練されていて優しいか、ランドは親友に語りました。キリスト教徒との結婚は両親から絶対に許可されないという親友の忠告にも耳を貸さず、彼との将来を夢見ていました。

2人に肉体関係はありませんでした。2人のデートはわずか4回で、会うのは常に衆目の面前でした。ポールはランドをプリンセスと呼び、小さなぬいぐるみをプレゼントしました。

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そんなある日 ― ランドが最後に彼と会ってから2ヵ月後の3月16日 ― 、ランドの父アリは、友人から、娘がイギリス兵と仲良くしていると聞きました。

アリは激昂しました。妻のレイラは泣き叫び、2人の息子に父を止めるようにと頼みました。しかし、アリから事情を聞いた息子たちは、父に協力しました。

アリはランドの首を足で踏みつけて窒息死させ、「名誉は守られた!」と叫びながら、娘の遺体を何度も刺しました。

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アリは逮捕されましたが、2時間後には釈放されました。

ランドの葬儀はひっそりと行われました。ランドは汚れた存在だからです。親戚たちは、ランドの遺体につばを吐きかけたといいます。

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英兵に恋をした10代のイラク女性、実の父に名誉の殺人で殺される
Daily Mail 08年4月28日(英語)

*名誉の殺人(めいよのさつじん、honor killing)
女性の婚前・婚外交渉を女性本人のみならず「家族全員の名誉を汚す」ものと見なし、この行為を行った女性の父親や男兄弟が家族の名誉を守るために女性を殺害する風習のことである。バスラでは去年だけで47人の女性が、名誉の殺人により殺された。

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2008年04月28日

西欧エリートの世界観

IOCのロゲ会長が、欧米諸国に対し、北京五輪を控える中国への人権問題を振りかざした非難を中止するよう呼びかけました。彼の言葉は、いろいろな意味でアイ・オープニングです。続きを読む

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2008年04月27日

燃費計のすすめ

またガソリンの値段が上がりそうな雰囲気なので、今のうちにと実家に行ってきました。ぼくの車は環境の敵とも言われるSUVで燃費が悪く、しかもガソリンはハイオクしか受け付けないので、往復150キロともなると大きく違ってきます。

このガソリン高騰時代に、貧乏人がでかい車に乗るとこうなるという見本のようで情けないのですが、今の車にかえた2年ほど前からなるべく車の使用を控えるようになり、そして燃費を気にするようになりました。

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2008年04月26日

死を誘発するマスコミの罪深さ

マスメディアというのは、ただの情報発信機関ではなく、情報という凶器を振り回す怪物です。いびつな寡占構造により付与されたあまりに大きすぎる影響力が、情報を凶器に変えるからです。

そんなマスメディアがもっとも取り扱いに気をつけなくてはならない危険物のひとつが、自殺報道です。著名人の自殺、流行の自殺…そうしたことは、その事実を伝えるだけで確実に何人かの人間を死に追いやる魔情報です。にもかかわらず、今マスメディアはこぞって硫化水素による自殺を伝え、流行に拍車をかけています。

さらにその自殺流行の責任を、案の定ネットに押しつけています。先日見たNHKニュースでは、薄暗いバックにパソコンのキーを叩くおどろおどろしい映像を映して、ネットの恐ろしさを印象づけていました。それを文章にすると、次の毎日新聞の社説になります。

インターネットが普及してからというもの、自殺サイトが同じ手段による自殺を広い範囲で誘発させる新しい現象が生じた。

最近は見知らぬ者同士が練炭で集団自殺を図るケースが相次いでいるほか、自殺願望者が“殺し屋”を募り、実際に請け負った男に殺害される事件まで起きている。命を軽んじる風潮を背景に、自殺へと駆り立てるインターネットの魔力の不気味な広がりに、慄然(りつぜん)とするばかりだ。

…警察当局は監視に努めて、ネットの開設者やプロバイダーに自粛や削除を求めるべきだ。自殺との因果関係が認められた場合は、自殺ほう助罪の適用なども視野に入れて取り締まりを強める必要がある。自殺サイトに限らず、反社会的なサイトを追放する機運も、盛り上げねばならない。

社説:硫化水素自殺 死を誘発するサイトの罪深さ
毎日新聞 08年4月25日


最後の方はもうドサクサ紛れに言いたい放題。

確かにネットは、自殺の形を変えました。生活のさまざまな部分を変えたのと同様に。しかし、今回のような“ブレーク”がネットの力学で起こったと結論づける根拠はどこにもありません。

ネット上には硫化水素を発生させるだけではなく、たくさんの興味深い危険情報が転がっています。しかもはるか以前から。それがなぜ今、硫化水素なのか?

火をつけた犯人は、マスメディアの報道と考える方が妥当です。

確かにネットは危険な爆発物であふれています。しかし突き詰めれば、あらゆる生きた情報というものは、危険をはらんでいるものです。問題はそれに火をつけるかどうか。ネットが危険なもののように感じられるのは、ネットの登場により、実はマスメディアの持つ危険性が表出しやすくなっただけという側面が大きいのです。

ぼくはこれまで、この話題について書くのを意図的に避けてきました。1日わずか数千人の参加者しかいないブログといえども、おかしな流行の拡大に加担したくなかったからです。同じ思いのブロガーは多いと思います。しかしマスメディアは、平然と危険な爆発物に火をつけました。そして何人もの命を奪いました。

警察当局は監視に努めて、テレビ局や新聞社に自粛を求めるべきだ。自殺との因果関係が認められた場合は、自殺ほう助罪の適用なども視野に入れて取締りを強める必要がある。自殺報道に限らず、反社会的な情報を追放する機運も、盛り上げねばならない。

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2008年04月25日

売国奴竹中?

先日2ちゃんねるを見ていたら、

【経済】竹中平蔵氏「民営化した日本郵政はアメリカに出資せよ」「アメリカにも貢献できるし、新たなビジネスの基礎も出来る」★4

というスレッドが立っていました。タイトルを見て、「郵貯を民営化したのは、うわさ通りアメリカに献上するためだったのか!」とか思う人も多いと思います。実際スレッドの内容も、ひどい売国奴バッシングでした。

でも少し考えればわかることですが、これはアメリカ経済の中枢である金融機関を、彼らの苦境に乗じて買い叩けと主張しているわけで、アメリカからすればジャパンマネー・インベージョンです。

外資規制を訴える人は、「外国人に日本の財産を安く買い叩かれてなるものか!」と叫びますが、外国の投資を呼び込むのも売国、外国に投資するのも売国となれば、どうすればいいのかわかりません。鎖国でもしろと言うのでしょうか?それこそ売国の極みのような気もしますが。

「日本のカネは国内に投資して、外国になど投資して欲しくない」と考える人もいるかもしれません。しかし日本は貿易黒字の国ということもあり、米ドルをはじめたくさんの外貨を持て余しているので、いずれ外国に投資しないわけにはいきません。

外国と交易して黒字になるということは、家計が黒字になるのとはわけが違い、例えば相手がアメリカであれば、ただ米ドルがたまるだけです。日本国内においておく限りは、ただの紙キレです。これを生きたカネにするには、米ドルの通用する国に何らかの形で投資するしかないのです。(これをして、アメリカが富を自国に還流するためのからくりだと言う人がいますが、黒字を出せばこうなるというのは国際交易の基本です。いやなら黒字を出さないようにするしかありません)

今がアメリカの買い時なのかは難しいところです。しかし、「民間のカネで何を買おうとアメリカは警戒しないし、金融不安を抱えている今ならむしろ大歓迎してくれる。ノウハウまで盗めて一石二鳥だし、今こそアメリカの金融機関を買いまくれ!」というのは、提案としては大ありで、売国どころか国粋的ですらあります。

2ちゃんねるというところは、数年前からあからさまな政治的プロパガンダの主戦場と化している趣がありますが、大メディアの報道同様、警戒してかからないとコロリとだまされかねません。

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2008年04月24日

被害者株バブル

前回のエントリーで、

差別される側がそう思ったら同じということにも単純に賛同できないです。基本的にはされる人も思いは尊重されるべきですがセクハラの問題のように行き過ぎないように常に考えられるべきと思います。


というご意見をいただきましたが、ぼくもそう思います。ぼくが言いたかったのは、セクハラに例えると、

A)上司がやりたい放題セクハラして女性社員を精神的に追い詰める
B)被害妄想の強い女性社員がセクハラされたと訴えて上司を追い詰める

というふたつの極端なケースは、いずれも暴力の力としては同じだということです。決して、「被害者が差別と感じたら差別だ」とか言いたいのではありません。

たぶん、19世紀的価値観は、Aに近いと思います。弱いものは泣き寝入り。泣いても誰も同情してくれないどころか、軽蔑されてさらに足元を見られるだけ。見返したければ歯を食いしばって耐えて自分を強くするしかありません。「力すなわち正義」の世界です。

それに対して20世紀はBの傾向が強く、強者と弱者がいれば、まず強者を疑い、弱者の証言に重きを置くことをよしとする時代です。ある意味強大であること自体罪を背負うことであり、弱者であることがそれだけで無垢として価値を与えられる、「力すなわち悪」「涙すなわち正義」の世界です。

どちらも行き過ぎは禁物で、両方の立場に立ってケース・バイ・ケースで判断していくべきなのは言うまでもありませんが、世の中の流れというのはほどほどの所に落ち着くということはなかなかありません。相場と同じで、暴騰と暴落を繰り返します。

19世紀的な「力すなわち正義」株は、世紀の変わり目くらいにバブルの頂点に達しましたが、ソフトランディングできずに第一次大戦で破滅的な暴落をしました。

20世紀的な「涙すなわち正義」株は、あらゆる先進国で高止まりの状況です。ヨーロッパでは、ヨーロッパの伝統を大切にしたいという「強者」の声は疑問視され、多文化共生を訴える「弱者」の声は賞賛され、アメリカでも日本でも、それは同じです。

ブッシュアメリカの先制攻撃論は、ある意味「涙すなわち正義」株の暴騰をソフトランディングさせるためのひとつの方策と見ることもできますが、見事に失敗し、株価はさらに上昇してしまいました。

今のチベットをめぐる状況など、外国から見れば無軌道なセクハラ上司が中国で、無力な女性社員がチベットですが、それをうけた中国は、中国こそかわいそうな女性社員であり、セクハラ上司は西欧だと反論する。まるで被害者の椅子を奪い合う椅子取り合戦です。

とても醒めた言い方ですが、ここまで来るとやはり、第一次大戦クラスの暴落は避けられないような気がします。そして誰がいつその引き金を引くのかと考えると、大きな図体をして被害妄想に凝り固まった中国と、20世紀の象徴である五輪の組み合わせは、パーフェクトすぎる気がしてなりません。

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2008年04月23日

新黄禍論

黄禍(おうか)ということばがあります。英語だと Yellow Peril 、ドイツ語だと Gelbe Gefahr 。

「19世紀半ばから20世紀前半にかけてアメリカ合衆国・ドイツ・カナダ・オーストラリアなどの白人国家において現れた、黄色人種を蔑視し、差別する考え方。人種差別の一種。 なお、近代の黄禍論で対象とされる民族は、主に日本人並びに中国人である」―ウィキペディアより

ヨーロッパにおける黄禍論は、日清戦争で日本が勝利したあたりから本格化しました。そして黄禍論の到来を象徴的に告げるのが、1895年にドイツ皇帝ヴィルヘルム二世が、ロシアのツァー、ニコライ二世に贈った次の絵とされています。
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2008年04月22日

親中派からのアドバイス

ぼくは、北朝鮮「美女軍団」の生みの親であると自認しています。

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2008年04月21日

文革の子供たち

サンフランシスコの五輪トーチ・リレーにあわせて行われた親チベット、親中国両派の抗議活動で、チベット側についたとして人民の敵になってしまった中国人留学生、王千源さんの手記が、ワシントンポストに掲載されていました。

王さんは、留学先のデューク大でチベット人学生と知り合い、チベット人への理解を深めていたことで、デモでは積極的に両派の仲裁につとめたといいます。

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2008年04月20日

KY事件とマスメディアの社会的責任

19年前の今日、1989年4月20日の夕刊で、朝日新聞は自らサンゴに落書きした写真を掲載してこう訴えました。

これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、直径8メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この「K・Y」のイニシャルを見つけたとき、しばし言葉を失った。
(中略)
日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。

にしても、一体「K・Y」ってだれだ。

参考:朝日新聞の「朝日珊瑚事件」


…。

しばらく前に続々発覚した産地偽装や賞味期限改ざんなどを起こした企業は、みなそれなりに社会的制裁を受けました。

しかしなぜ朝日はこれほどの不始末をしでかしておきながら、社員を大量解雇するような事態に陥るようなこともなく、体質も一向に変わることなく、一流企業として高収益をあげながら平然と高級紙を名乗り続けてこられたのか?

それこそが、この事件の最大の問題点です。

はっきり言えば、こういう事件を起こした新聞社は、本来であれば民事再生法を申請するまで追い込まれるのが筋です。そこまでいかなくても、せめてゲンダイと並び称されるくらいのところまで落ちなければおかしいのです。

そうならないのは、マスメディアが国に手厚く守られているからです。

大新聞とテレビは、社会にとってものすごく大事なものとして扱われ、間接的に国からお金をもらって運営されているので、普通の会社のようにつぶれることはありません。世間もなんとなくそう思い込まされているので、仕方ないのでこう叫びます。

「社会的責任を自覚しろ!」

でもそんなことで問題が解決するのだったら、今ごろ官僚は社会で一番効率的かつ良心に満ち溢れた仕事をしているはずです。

ところで―

映画「YASUKUNI」でもそうですが、何かあるたびに「言論の自由」を叫ぶ人たちは、普段マスメディアで仕事をするときに自由を感じているんでしょうか?社会的責任とか、良識とか、そういうことを始終意識しながら仕事して、自分たちの思考が束縛されていると感じたりしないのでしょうか?

彼らがちょっと気が緩んだときに、社会の良識に反するような発言をしたりすると、最近ではネットでガンガン叩かれます。そうすると彼らは、「窮屈な世の中になった」とか「何か恐ろしいものを感じる」とかこぼします。

でもそうした非難が起きるのは世間の人々が彼らをマスメディアの人間として認識しているからで、彼らにそれにふさわしい社会的責任とか良識を求めているからに他なりません。ですからそこに窮屈さや恐怖を感じるのは、実はネットに問題があるのではありません。窮屈で不自由なのは、マスメディアの方なのです。

マスメディアに課せられた“社会的責任”は、マスメディアの犯罪的行為を防ぐのに無力な一方で、メディアを過度に束縛しています。

それは、本質的にヤクザな商売である情報屋に、まるで社会の牧童であるかのような妙な特権意識ばかりを与えて独善を助長するだけでなく、情報屋のキモである自由を抑圧しているのです。

大衆に情報を届ける手段が限られていた時代には、それも致し方ないことでした。でもネットの普及した今は違います。今こそマスメディアは政府の保護を離れて自立し、その代価である過度な社会的責任を放棄することで本当の言論の自由を勝ち取るべき時です。

そしてその暁には、貴重なサンゴに自らKYと刻んで捏造報道するような会社は、意味のない放送法とかではなく、民事再生法のお世話になることになり、結果としてメディア全体としての自浄作用も期待できるようになるはずです。

そうなるまでは、KYは決して過去の記念碑ではなく、今もこの社会に刻み続けられている現在進行形の問題なのです。

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中国暴走しすぎ

ジンバブエ第3の都市ムタレで、地元の目撃者により、中国軍の兵士が確認された。中国の兵士は野党が呼びかけて失敗に終わった火曜のゼネストに前後して、ジンバブエ軍の兵士とともにパトロールしていたという。

ピストルで武装した10人の中国兵は、70人のジンバブエ軍兵士とともに街のホテルに滞在していた。

身元を明かさないという条件で証言してくれた一人の目撃者によれば、「街中で制服姿の中国兵を見たのは初めて」だという。

「ジンバブエの市内に中国兵と目撃者」
The Independent 08年4月19日(英語)


何この微妙なときにアフリカに直接介入してるんだか。ヨーロッパの裏庭で軍服着てうろうろするなんて、火にガソリン注いでるとしか思えません。中国の指揮系統は想像以上にガタガタなようです。こりゃ本当に崩壊が近いかも。

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2008年04月19日

資本主義は失敗したのか?

アメリカのリバタニアンで、共和党から大統領選にも立候補していたロン・ポールさんが、「資本主義は失敗したのか?」という論考を書いていました。世界的な景気減速で、市場経済の限界を指摘する声もちらほら聞かれますが、ポールさんは言います。

今起きていることを市場経済のせいにするのはバカげている。なぜなら今資本主義があるようには見えないからだ。今あるのは、政治家と癒着する者たちに大きな利益を誘導する、介入主義的な計画経済だ。現在の経済システムのペテンは非難されるべきだが、それは正しい名前で呼ばれなければならない。ケインズ主義的インフレーショニズム、国家介入主義、コーポラティズムという。
「資本主義は失敗したのか?」より(英語)


要するに、逆だというわけです。今世情の不安をあおる人たちというのは、大抵いわゆる大きな政府を求める国家介入主義者で、この危機を政府に金を集める口実に使おうとしますが、そうではないと。それこそまさに今トラブルを招いている原因であり、病根を絶ちたいのであれば、真の市場経済を取り戻さなければならない、というわけです。

確かに、レーガンやサッチャーが自由主義の復活を謳った1980年代以降、介入主義は廃れたように思われていますが、実際のところは、自由競争の総本山のように思われているアメリカでさえ、政府は大きくなり続けています。自由主義全盛の20世紀初頭までに比べれば、今の状態はとても市場経済とは呼べません。

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まあロン・ポールという人はあまりに理想家すぎて、自由主義とは現実主義であると考えるぼくからすると、いろいろな点で突き抜けすぎてあさっての方向に行っちゃった感は否めないのですが、それでもこの指摘については正しいと思います。

時代は、あらゆる面において20世紀的価値観から21世紀的価値観への過渡期を迎えていますが、20世紀を国家介入主義の時代とするなら、新しい時代に求められるのはその強化ではないはずです。

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2008年04月18日

チェックメイト

チベット問題 小沢氏「中国が変化を」

民主党の小沢一郎代表は17日、北海道釧路市内で講演し、チベット問題に関して、「中国の政権が抱えている矛盾が民族問題を契機に持ち上がってきた。共産主義独裁の政権と、経済や政治の自由(の両立)は原理からして成り立たない」と指摘。「中国の指導者にも言っているが、本当に中国共産党政権が生き延びようとするなら、時代の変化に応じて自分自身が変化しなければならない」と述べ、中国指導部は体制変革を模索していくべきだとの持論を展開した。

また、小沢氏は北朝鮮による日本人拉致問題に関し「いくら(日本が)北朝鮮に言っても解決しない。中国は朝鮮半島の現状維持を国策にしており、金正日政権を変えようという気はない」と強調。さらに「米国経済の後退と同時に、中国経済がおかしくなるのではないかといわれている。中国の政治経済的混乱は政治的動乱につながり、朝鮮半島の動乱につながる」との見方を示した。

MSN産経 08年4月17日


あらゆる点において同意。

もしかしたらこれも、ただ政府の方針と逆のことを言っているだけかもしれませんが、もしそうだとしても、東アジアワールドに何のためらいもなく頭からダイブしていこうとしている福田政権よりは100倍ましです。

小沢さんは確か今日、来日中の中国・楊外相と会う予定だと思いましたが、そこでどんな態度をとるかに注目です。それ次第では、来月にも小沢政権誕生ですね。

政権をとった暁には、小沢さんが一番輝いていた頃の小沢さんに戻ってくれることを祈ります。

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2008年04月17日

日本のメッセージ

日本政府はあるメッセージを世界に発信しています。

胡主席に首相親書 チベット問題で自公幹事長
北海道新聞 08年4月16日


「チベットの自治なんて論外!」「西側の五輪ボイコットの動きは陰謀だ!」と涼しい顔でド偏狭ぶりを発揮した中国のフューラー。それに対して日本政府は、「五輪と政治を絡めるのは支持しません」などと空虚な文句を唱える事なかれ主義ではなく、一歩踏み込んで態度を明確にしました。

「北海道洞爺湖サミットで各国首脳に対し、北京五輪成功に向けた協力を要請する考えを示した」

…フューラーから頼まれたわけでもないのに、自ら進んでそう提案したのです。これは、「チベット問題で、日本はすすんで中国の側に立つ」という国際社会に向けたメッセージと見て間違いありません。

「そんな大げさな」と思う人もいるでしょう。でもそうなのです。日本政府が本気であることは、ほぼ同時に出た次の報道から明らかです。

首相、大型連休中の欧州歴訪断念
日経 08年4月16日


福田首相は、イギリス、フランス、ドイツという、自由と民主主義を共有する友好国訪問を中止することにしました。それだけではありません。それと同時に権威主義的国家であるロシア訪問を発表し、そして極めつけが、友好国訪問を取りやめた理由です。

「連休明けには中国の胡錦濤国家主席の来日も控えており、欧州歴訪は困難と判断した」

…これはもうどこからどう見ても、日本は自由と民主主義を軽視し、権威主義的国家とともに歩むという意思表示をしているとしか思えません。

ついでに政府は、「日本では自由な商取引はできない」というメッセージまで出しました。

Jパワー株買い増し:英投資ファンドに初の中止勧告
毎日新聞 08年4月16日


日本という国は、政治においても、経済においても、「自由」と決別することを世界に宣言したのです。

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2008年04月16日

小さくなる街

ぼくは、日本の人口はある程度少なくなるのが自然であり、どんな手を打とうと、かけた費用に見合うようなレベルでの人口増加はないと考えています。

よって政治家たちがすべきことは、国の都合に合わせて無理やり人口を増やそうとするのではなく、人口が伸びないという現実の方に合わせて、国の運営の形を変えることだと思っています。

しかしそうなると地方都市へのダメージは大きく、夕張市のようにインフラが維持できずに身動きがとれなくなる自治体が続出するに違いありません。それを防ぐためには、時にはそれこそアメリカのヤングスタウンのようにドラスティックな方針転換をすることが求められていると思います。

Incredible Shrinking City
CNNMoney.com 08年4月14日


かつてアメリカ第3の製鉄の街として栄えたアメリカオハイオ州のヤングスタウンは、製鉄所の閉鎖によりこの40年間で人口が半分に減少して、街のあちこちがゴーストタウン化していたといいます。そこで市は ―

思い切った政策転換で廃屋を撤去し、痛んだ道路をはがして、あちこちを緑のオープンスペースに変えている。すでに1000を超える建造物が撤去された。

プラン2010と呼ばれるこの計画では、人口が極端に減少している地区の住民に対しては最高5万ドルのインセンティブを与えることで移転を促し、無人となった地区をまとめて更地に変える。そうすることで市は、過疎地区のごみの収集や街灯の維持費用を節約できる。

…人口8万人のヤングスタウンは、少し前まで、16万5千人の人口をようした過去の栄光を取り戻そうとしてきた。

「長い間、成長政策を追求してきました」と若くて精気に溢れたウィリアムズ市長。「街の人口を再び15万人にするために、あらゆる手を尽くしました」

ばかげた計画もあった。

「飛行船の工場を作る計画もありました」と市長。「それがすべてを象徴しています。今聞くとばかみたいな話です。またクリントン大統領は、5000人を雇用する軍事施設の建設を約束しました。わたしたちは救世主を求めていたんです」

その約束は守られなかった。しかし今、ヤングスタウンのインフラ縮小政策は、凋落した他の街に再生のお手本を示すことになるかもしれない。

すでにミシガン州フリント、ウエストヴァージニア州ウィーリング、オハイオ州デイトンのような町からは視察団が訪れている。

「わたしたちは、ある程度の規模を持つ市としては、アメリカで最初に縮小を受け入れた街なのです」と市長。

奇妙なパイオニアである。「アメリカの風土では、成長なくして成功はないと考えられいます」と、プラン2010の助言者であるヤングスタウン州立大学の都市と地方学研究所所長、ハンター・モリソン。「誰も縮小について語ろうとはしません。政治家にとっても、開発業者にとっても、商工会にとっても、それはとんでもない考えなんです」

…ひとつ確かなのは、プラン2010は住民の見方を変えたことだとモリソン所長。「計画により、わたしたちは街の将来について思いをはせるようになりました。過去のことではなく」

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2008年04月15日

毎日がエイプリルフール

エイプリルフールは2週間前のことでしたが、ネット上には、プロパガンダや誤解に基づくガセネタだけでなく、意図的な「ひっかけ」記事やパロディ記事が地雷のように埋もれていて、記事をうのみにするとバカを見るということが少なくありません。

だから、できすぎな記事を見つけると、記事の日付を確認したり、「このサイトはパロディサイトではないのか?」と素直に受け入れられません。この話もそんな、何度もソースを確認せずにはいられないような、何かのパロディとしか思えない話のひとつです。

イスラム教徒、2人の妻の間を行き来するために免停を逃れる
Daily Mail 08年4月5日(英語)


記事によれば、スコットランドに住むイスラム教徒、モハメド・アンワルさんは、制限速度時速30マイルの道路を64マイルで走行して警察に捕まりました。

これは即時免停に値するスピード違反で、アンワルさんも違反の事実を認めたといいます。しかしアンワルさんの弁護士は、こう主張して罰の軽減を訴えたといいます。

「彼はマザウェルとグラスゴーに2人の妻を持っていて、一晩おきにそれぞれの妻とベッドをともにしている。免許を失うと、その生活が続けられなくなる」

その結果アンワルさんは、罰金200ポンドと、反則6点ですんだそうです。ちなみに、イスラム教では4人の妻を持つことが認められていますが、イギリスではもちろん多重婚は違法です。

???

くだんの弁護士は、アンワルさんがレストランを経営していて、免許がないと仕事ができなくなることや、過去に無事故無違反だったことも申し立てており、おそらくそっちの方で情状酌量されたのだとは思います(そう思いたい)。が、弁護士が2人の妻との生活について大真面目に主張したことは事実で、それは、そういう理屈が通用しそうな社会であるということを示唆しています…

「何かが間違っているぜ、いつの頃からか」(佐野元春)

「ゼッタイ故障ダ。テイウカアリエナイ」(Perfume)

先進国は、共通の重い病を抱えています。今回紹介したような記事よりも、あえて訳しませんがこういうパロディ記事(英語。短いので生きた英語の教材にどうぞ)の方が、よほリアルな気がします。

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2008年04月14日

スペインの実験と日本

4年前に政権についたスペインのサパテロ首相は、近頃珍しい硬派の左翼で、革新的な政策を次々と実行に移してきました。

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イラクからの撤退は言うに及ばず、同姓婚を認めたり、男女の賃金格差を法律で是正したり…まあヨーロッパの中堅国であるスペインの政治など、遠く離れた日本にあまり関わりはないのですが、そんな彼の政策でひとつ、日本から見てとても興味深いものがあります。

それは、移民政策です。

先日、少子化の日本は移民を受け入れないとだめだという外国人の主張を紹介しましたが、移民のススメは、国内でも特に財界から聞こえてきます。

海外からの単純労働者受け入れ推進を、同友会が提言
日経 08年4月6日


財界人の提言を、カネの亡者のたわごと視する人たちもいますが、理想ではなく現実を相手にして、自由な商いを求める彼らの提言は、好む好まざるに関わらず多くの場合正鵠を射ています。しかし、単純労働者の受け入れについては、首を傾げざるを得ません。

日本の文化を守るべきとかそういうことではありません。単純な話、経済的な理由から積極的に移民を入れて成功した例は、アメリカやオーストラリアのような移民国家を除けば、歴史的に見てあまり見当たらないからです。短期的には成功しても、中長期的には社会に混乱をもたらすケースばかりです。原理原則ではなく経験からして、移民が富をもたらすとはにわかに信じられません。

移民をめぐるスペインの状況は、そんな疑問に「生きた教材」を提供してくれています。

要するにサパテロ政権は、もろ手を上げて移民を迎え入れました。経済が好調なスペインでは、もともと不法移民が多く働いていたのですが、100万人に及ぶ不法移民に居住権を与えるとともに、どんどん来てくれと国境を開放したのです。

おかげで移民の数は、1998年の年間5万7千人から、サパテロ政権下では年間60万人にまで膨れ上がり、今ではスペインの総人口4千4百万人のうち400万人は外国生まれで、その割合は、移民国のアメリカとも肩を並べるほどになりました。

北欧の国々に比べて「閉鎖的」だったスペインが、北欧の国々が移民に慎重になる中、移民の受け入れに積極的になったのは、経済発展のために労働力を必要としていたこともありますが、それだけではありません。そこには、少子化の問題があります。

スペインの女性は日本の女性よりも子供を産みません(移民が子沢山なため、近年は日本と同レベルにまで上昇している。ちなみにサパテロ政権は、子供を産むと2500ユーロを支給する制度を導入した)。このままいけば国力の低下は避けられず、2030年までに移民を人口の2割程度にまで増やさないと、年金システムは破綻すると予測されています。

少子化が進むと年金システムが破綻するというのは、日本とて同じです。日本の場合今はまだ、「国際競争力を維持するために単純労働者を入れたらどうか?」くらいな議論ですが、やがてより切羽詰った理由で移民の是非が問われるようになるのはたぶん間違いありません。

さて、移民に門戸を開いたサパテロスペインですが、その後しばらくはとてもうまく運んでいました。経済は相変わらず好調で世界8位まで上昇し、失業率も低いままで、去年の春ごろまでは、「移民はうまくいく」という好例として、あちこちから賞賛されていました。

移民大歓迎:国境開放による好況と社会の再興
Business Week 07年5月21日(英語)


ところがスペイン経済を牽引していた不動産バブルがはじけてしまいました。不動産業者の4割は倒産し、3パーセントを超えていた経済成長率は1.8パーセントに急落。そして真っ先に職を失ったのは、予想通り移民の単純労働者たちです。

それでもサパテロ首相は強気で、メキシコからの不法移民を取り締まろうとするアメリカを揶揄したりしていました。しかし先月行われた総選挙にかろうじて勝利し、再選されたサパテロさんはどうしたか?なんと一転して今度は、母国に帰る移民には、800ユーロを支給すると発表しました。

現金支給で移民の帰国をうながす
Welt 08年4月11日(独語)


母国で仕事を見つけられそうな東欧出身の移民たちは歓迎しているようですが、移民の大半を占める、おそらく本音では一番帰国して欲しいに違いない北アフリカ出身の移民たちは、「いくら帰国のインセンティブをつけられても、出身国の経済状況が悪ければ意味がない」と、帰る気などないようです。

スペインの実験が成功するにしても失敗するにしても、身を挺してテストケースを提供してくれる国があるということは、日本にとって幸運なことです。

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2008年04月12日

「YASUKUNI」と言論の自由

映画「YASUKUNI」をめぐる議論というのは、安倍前首相が官房長官時代にNHKに圧力を加えたのなんのと騒がれた時に似ています。

安倍さんの時は、NHKの幹部に「中立な番組作りをお願いします」と伝えたら、その言葉に関係あるのかないのかNHKが慰安婦をテーマにした番組の内容を急遽大幅に変え、それが、政治による言論弾圧にあたるのではと批判されました。

今回は、稲田、有村両議員が「この映画は助成の条件を満たしていないのではないか」と問うたところ、街宣右翼が騒いだこともあっていくつかの映画館が上映を中止し、それが言論弾圧にあたるのではないかと批判されています。

決してどちらも<表現者>の口を無理やりふさごうとしたわけではありません。

「中立な番組作りををおねがいします」「助成の条件を満たしていないのではない か」― これらの意見は、どう聞いても何かを弾圧しているようには聞こえません 。



「政治家のことばは重く、時にそれは圧力になるのだ」という人がいるかもしれません。しかし社会のさまざまなことについて意見を口にすることこそ政治家の仕事で、意見を持たない政治家などただの害虫です。

彼らの言葉が弾圧とまで呼ばれる力を持つのはもっと下世話な理由で、それは両ケ ースとも、政治家が<表現者>のパトロンだからです。

NHKは<税金>で運営され、ある種の映画は政府の援助で製作されます。彼らからすれば、パトロンの機嫌を損ねたらオマンマの食い上げですから、その顔色をうかがわざるをえません。だから、政治家のつまらない一言を、いちいち圧力と感じて過剰反応するのです。

そういう人たちの叫ぶ言論の自由など、「政治家は金だけ出して口を出すな」という程度の意味でしかありません。言論の自由という、民主社会においてもっとも大切な原則を私利私欲のために利用する横暴、言論の自由を冒涜する行為とさえ言えます。



言論の自由というビッグワードに目くらましされてはいけません。

この問題で問われるべきは、「中立な番組作りををおねがいします」「助成の条件を満たしていないのではない か」というような、政治家として当然の意見の発露が言論の自由の問題にされてしまうような、そうした状況はおかしいのではないかということです。

政府が表現者のパトロンになるという構造の是非こそを問うべきなのです。

「文化大国」になるために、なぜ政府が助成金を出す必要があるのでしょう?そんなことをするよりも、例えば文化事業の税を控除したり、映画のロケ等をやりにくくしている各種規制を撤廃したりするほうが、ずっと効果的なように思えます(ついでに文化庁の一部署を廃止することで役人も減らせます)。

そうなれば政治家が何を言おうと、それこそ「政治的に好ましくない映画を規制する法律を制定すべきだ」とでも発議しない限り、言論の自由を脅かすことはできません。

NHKにしても同様です。政府がパトロンでなければ、官房長官が何を言おうと、首相が何を言おうと、圧力になどなりはしません。



だいたいパトロンの支援を受けつつパトロンから完全に自由であることなど可能なのでしょうか?

ぼくは不可能だと思います。例えば子供は、経済的に親に隷属しつつ自立した人間になれるとはとても思えません。

親の庇護下にありつつ親に抗うのは、自立した個ではなく、ただの反抗期の子供です。反抗期の子供の親批判などあくまで表面的なものにすぎず、たいていの場合、親の一番醜いところをそのまま引き継いでいるものです。

国にぶら下がりながら言論の自由を叫ぶ表現者たちなど、親の金で暮らしていながら親に暴力をふるい、親が少しでも怖い顔をすると、「親には扶養の義務がある!」などと屁理屈をこねる最悪の子供と同じです。

大新聞、テレビ局、そして助成金を受けて作られる映画…本当に自由をのぞむなら、政府の庇護を拒否して自立すべきです。さまざまな形で国がパトロンにならざるを得なかったのは昔の話で、今の時代、政府の関与しないところで、いくらでも情報を発信できるのですから。

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2008年04月11日

洞爺湖サミットは食糧サミットにすべきだ

ハイチで打ちこわしが起こっています。1日200円以下で暮らしている人たちが人口の8割を占める国で、食料の値段が1年で5割も上昇したら、そりゃ暴れる気持ちもわかります。



日本でも食料の値段は軒並み上昇していますが、2007年の中ごろに比べて、世界平均で食料の値段は4割も上昇してるっていうんですから、ハイチの暴動は世界的な一揆頻発の序章にすぎないでしょう。

イギリスのブラウン首相は、福田首相にサミットで食糧問題を議題にしようという書簡を送り、農作物のバイオ燃料への転用の影響を調査する必要があると指摘しているということですが、当たり前ですね。食いもんを燃して暖を取ってれば、そりゃ食うもんも不足するはずです。



もうこの際洞爺湖サミットは、「環境」から「食糧」へと看板を架け替えるべきだと思います。

バイオ燃料は金になるっていうんで、トウモロコシだの大豆だのを燃料つくりにまわして、ほかの作付けまでやめてそっちを優先するもんだから、小麦からなにからガンガン値があがって、米の値段まで世界的に急上昇して、東南アジアの米輸出国じゃ国内の米価が急騰して、相次いで輸出制限しています。

日本でも減反が叫ばれていましたが、他の値段があがれば米を食べるようになる人が自然と増えるわけで(わが家でも米の消費が増えました)、米の値段はじりじり上がっているといいます。このままいけば、減反どころか米不足に陥ることだってありえます。

もちろん食糧不足の犯人はバイオ燃料だけではありません。しかし、環境のためにと、バイオ燃料の使用にインセンティブをつけたりして人工的に食糧危機を加速させていることは間違いありません。

一流の頭脳を持つ科学者やら政治家やらは、なんでこんな、素人にも予測できそうな深刻なリスクを無視していたんでしょうか?将来的な食糧不足の可能性は以前から叫ばれていたのに、なぜ傷口にカラシを塗りこむようなことを嬉々として奨励してしまったんでしょうか?

ついでにバイオ燃料ブームはCO2排出削減に寄与しているどころか悪化させているという話まで今さらになってぞろぞろ出始めていて、しょせん人は神にはなれず、神のように世界をコントロールしようとする傲慢さはしっぺ返しを受けるという教訓に、また1ページを書き加えてしまったようです。



いずれにしてももう世界では、バイオ燃料とかCO2産業にすでに気が遠くなるほどの投資がなされていて、今急ブレーキをかけたって、1年や2年じゃとまりません(今さら誰もブレーキを踏もうとはしないでしょうが)。そりゃ世界が不穏になって経済活動が鈍ればCO2の排出も減るでしょうし、飢餓で人が減ればなおさら地球は大喜びなのかもしれませんが。

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