2008年05月04日

中国という符号

5月4日といえば、中国では1919年に起きた五・四運動の記念日。3年前の春に吹き荒れた反日運動では、この日に大変なことが起きるのではと危惧されたものです。

3年前は、NYTのオーニシさんのように、ここぞとばかり日本を糾弾する工作員もいれば、中国の悪乗りを非難する声もあれば、お決まりの喧嘩両成敗的な論調もありと、欧米の識者の意見は定まりませんでした。ただいずれにしても中国の反日活動は大きく報道され、「中国人と日本人はものすごく仲が悪い」という印象を市井の人たちに残したことは確かです。

去年の秋、東南アジアを旅行したときに、イングランド人のカップルと1日過ごす機会がありました。フットボール好きで、涼しい顔して超早食いで、ブリティッシュという単語は絶対に使わずにイングランド人であることを強調し、日本というと変な日本人モドキが出てくるバラエティ番組のことがまず浮かぶという、ごく平均的なイングリッシュ・カップルです。

日本について聞きたいことがあるという男性の方が、「失礼な質問やめなさいよ」という彼女の制止を振り切り最初にした質問は、「日本人てほんとにテレビで見るみたいなおじぎするの?」

そんな普通のイングリッシュマンが2番目にした質問が、「何で日本人と中国人は仲が悪いの?」でした。それほどまでに、あの事件の印象は強かったということです。

ところでぼくは、そう質問されて答えに困ってしまいました。シリアスに議論するというのだったらいくらでも説明できますが、彼はもっと軽い好奇心から聞いているにすぎません。

くどくどと長い説明をしても怪訝に思われるだけで、たぶん彼を納得した気にさせることはできません。論理ではなく、感覚で理解しあえる共通の「符号」が見つからないのです。

仕方がないので、「お隣同士というのはどこもいろいろあるんじゃないかな」とお茶を濁すと、「そうか、イングランドとフランスみたいなものなのかな」と、大いにずれてはいますが、とりあえず彼の持つ符号のレパートリーのひとつをクリックして、話題はフットボールに移りました。

今、中国国内のみならず、世界中の都市で紅い旗を振り回す中国人の異様な愛国活動を、3年前の反日活動に比べる論調をあちこちで見かけます。

もし今彼に「何で日本人と中国人は仲が悪いの?」と聞かれたら、答えは簡単です。

というより、たぶんそんな質問をする人はもういません。

どこの国の政治家や企業が中国人の抗議活動に屈しようと、中国人は今回の一連の愛国行動で、世界中に共通の符号をばらまいたのです。それは10年や20年では消えません。



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