福田首相は、15分刻みだかで2日間で計20カ国以上の首脳とマラソン会談をしたとか。手にしたメモを棒読みするだけの、会談とは名ばかりの儀式に過ぎませんが、アフリカのエリートたちというのは結構こういうことをありがたがったりするので、意味がないことはないと思います。
中国の資源外交攻勢を軸に、今アフリカでは、19世紀末の植民地獲得競争以来の「アフリカ争奪戦=Scramble for Africa」が起きているといわれ、これもまた、アフリカ争奪戦の一幕というわけです。
19世紀のアフリカ争奪戦の原動力は、いうまでもなく、「植民地を持つことで国家の威信を高めたい」という、欧州列強の純粋なるエゴでしたが、それは、「未開の民に文明を伝える」「イスラム商人による奴隷取引を止める」という、当時としては美しい大義を伴っていました。
現代のアフリカ争奪戦も、「資源」と「国際会議における議席獲得」という大国の思惑は必ず、「エイズ治療」や「貧困撲滅」などという美しいお題目を伴い、アフリカを伝える報道では、そういう決まりでもあるかのように難民キャンプの子供たちや貧しい人々が主役の地位を与えられます。
昨晩見た「報道ステーション」でもそうでした。
中国の資源外交やレアメタルの高騰で、今アフリカの国々は年4パーセントを越える経済成長をしているが、一般の人々はその恩恵に与れず、むしろ世界的な食糧価格の高騰で生活は苦しくなっている…。エチオピアの現状を伝えるVTRに続いて、司会の古館氏は、アフリカに対する先進国の欺瞞と責任を熱く語り、コーナーを締めくくりました。
しかしこの報道の肝は、その後にありました。古館氏の締めに続いて間髪をいれず、サブキャスターがこうテロップミスを謝罪したのです。
「先ほどのVTRで、福田総理と会談していた首脳のテロップが、エチオピアとなっていましたが、中央アフリカの間違いでした。訂正して謝罪いたします」
ええ、ええ、そりゃ仕方ありません。大方の日本人にとっては、エチオピアも中央アフリカも似たようなものですし、首脳の顔も同じに見えます。いくらアフリカの悲惨を言葉を尽くして語っても、貧しい庶民の救済を訴えても、所詮はレポートの主役として取り上げた国の首脳を間違えてしまう程度の他人事に過ぎず、こればかりはどうしようもないのです。
19世紀末から現在に至るまで、おそらくアフリカほどに人道家の眼が向けられた地域はありません。しかし、今もってアフリカの大部はグダグダです。たぶん「報道ステーション」は、そういう虚しい現実を、思い切った新手法により伝えてくれたのです。
参加国「温暖化で被害」強調
毎日 08年5月29日