2008年06月06日

一人デモ

「日本はもうすぐ韓国に抜かれるよ」

1980年代の初頭、親戚のおばさんにそう言われたのを覚えています。ソウル五輪の開催が決まった頃から、日本のマスメディアはさかんに韓国を礼賛してきました。しかしいまだに韓国という国は、抜いた抜かれたという表現はともかくとしても、少なくても多くの日本人にとって、羨望のまなざしで見るような存在ではないと思います。

そんな韓国にあって、イ・ミョンバク政権の誕生は、少なくてもぼくにとっては、20年以上前に聞いた叔母の言葉に対して、正直初めて「あるいは」と、思わせるような出来事でした。

日本のマスメディアと政治が後ろを向いて、未来に対しては軽薄なメッキ仕立てのメッセージしか発せられない今、ドライなビジネスマインドを持つ人物を政治指導者に選んだ韓国は、あるいは数年後には、日本人から見て羨むような立場に立てるかもしれないと、思ったものでした。

しかしぼくは、韓国をなめていたようです。

反発拡大、再び数万人抗議 韓国の米国産牛肉輸入問題
共同 08年6月6日


テレビ発のデマに扇動されて、連夜の反政府ロウソク集会。はたから見ていて痛々しいほどです。アメリカではあまり大きく取り上げられていいませんが、掲示板などを見ると、「ヒュンダイ車の事故で死者が出たら、韓国車の輸入禁止デモでもしようか」とかいう調子で、生暖かくスルーされている感じで哀れです。

チベット騒乱における中国もそうですが、ほんとに日本は、反面教師に事欠きません。

韓国の境界例的反応は、そのうちまた日本に矛先を向けるはずです。しかし、そのときこうした人たちの行動を真に受け、納得もしていないのに譲歩したりするのは、お互いのためにならないどころか、韓国の真の愛国者たちの足を引っ張る行為です。

漢陽大新聞放送学科のイ・セジンさん(25)は4日午後、キャンドル集会が開かれているソウル広場から500メートルほど離れたソウル・ファイナンスビルの前で、「われわれは今、自分たちで狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)を作っています」「ろうそくは暗闇を照らすために使うものです。自分の家を燃やすために使ってはいけません」といった文言が書かれたプラカードを掲げ、一人だけのデモを繰り広げた。

これに対し、キャンドル集会の参加者30‐50人がイさんの周りに集まり、「頭がおかしいんじゃないのか」などと罵声を浴びせたり、脅したりした。だが、イさんは「正直、一人だけで立つのはとても怖いけど、支持してくれる人も多い」と語った。高齢の男性数人が「頑張れ」と言って4万‐5万ウォン(約 4100‐5200円)の小遣いを渡したり、弁当やジュース、アイスクリームなどを買い与える市民もいるという。

米国産牛肉:抗議集会に反対する大学生の「一人デモ」
ネット上で支持広がる
朝鮮日報 08年6月5日


ヒステリックな独善に酔う社会の中で、冷静さを保ち、一人モブに立ち向かうとはなんという勇気!韓国との友好とは、こういう人に握手を求めることだと思います。

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2008年06月05日

タクシーで晩酌

官僚は、叩いておいてたいてい間違いはないのですが、これは的外れなような気がします。

財務省や金融庁など9省庁の官僚約160人が深夜にタクシーで帰宅する際、運転手から「サービス」としてビールや、つまみの提供を計約2900回受けていたことがわかった。大半が税金から支出されるタクシー券を利用して、個人的なサービスを受けていたと見られる。

長妻昭衆院議員(民主)が全省庁にタクシー利用状況の調査を求め、4日までの回答を集計して判明した。大半の省庁は07年度分を調べたが、一部はそれ以前にさかのぼった。調査中の省庁もあり、件数はさらに増えそうだ。

件数が圧倒的に多かったのは財務省。タクシーでの帰宅が07年度中に160回にのぼり、そのうち120回もビールなどを提供された職員もいた。1人が2千円分の図書券を受け取っていた。財務省は「頻繁にビールなどの提供を受けるのは国民の疑念を招きかねない。金券の受領は、事案を調べて対処する」としている。

タクシー業界では、運転手が得意先の客にビールなどを出すことがある。深夜残業が頻繁な官僚の場合は、特定の個人タクシーの得意先になる例が少なくない。

道路運送法は業者が受け取った運賃を割り戻すのを禁止し、金券提供はこの規定に違反する可能性があるが、ビールなどの提供は規定されていない。国家公務員倫理法などは、利害関係者以外から国家公務員が「社会通念上相当と認められる程度を超えて接待や利益供与を受けること」を禁止している。ビールの提供について、人事院は「事例ごとに判断するが、現状では何とも言えない」としている。(五郎丸建一)

官僚160人、深夜タクシーで晩酌サービス
asahi.com


ぼくもかつて、年に150日くらいタクシーで帰る仕事をしていましたが、自宅が都心から1万5千円くらいかかる遠距離なので、目的地を告げると、たいていの場合運転手は大喜び。20回に1回くらいは、缶コーヒーだのお菓子だのをくれて、「今度はぜひ呼び出してください」と、名刺をくれたりしたものでした。

個人タクシーからすれば、ごくあたりまえの営業活動だと思います。

こういうのをまさに、重箱の隅をつつくというのであって、こういう軽薄な批判ばかりしていると、本来正当になされなければならない官僚批判が説得力を失ってしまいかねません。

そんなことよりもぼくが思うのは、タクシー帰宅それ自体の是非です。

ビールなどを出したタクシー運転手は、別に客が官僚だからと接待しているのではなく、長距離の客だからそうしているわけで、1回あたりの運賃が1万円を越えるのは間違いありません。そうすると、財務省などは、去年1年間でビールなどの提供を受けた回数だけでも2千回を超えるそうなので、それだけで2千数百万円がタクシー代に消えていることになります。そしてビールなどを出されるのは例外的なケースなので、タクシーによる長距離帰宅はその数十倍と推測されます。

これは、ものすごく無駄なことではないでしょうか?

アメリカなどでは、あまり交通費を支給されることがないようですが、深夜タクシーなどの交通費を別途支給するという日本のシステムは、おかしなシステムのような気がします。

連日終電の時間を越えるほどの激務が求められる職場であれば、その分3割くらい給料を増やしてやって、そのかわり交通費は自己負担とする方が、「タクシー目当ての残業」もぐっと減って、結果的に税金の節約になるはずです。

タクシー業界は壊滅的打撃をこうむることになるでしょうが。

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2008年06月04日

シートベルト

自動車の後部座席のシートベルト着用を義務付けた改正道交法施行から一夜明け、最初の平日となった2日午前、東京・永田町の議員会館に車で乗り付けた国会議員35人に共同通信が直撃取材したところ、約3割に当たる11人がベルトを着用していなかった。

加藤紘一自民党元幹事長は党交通安全議連会長も務めるが、この日はベルトを非着用。「きのう地元では装着していたが今朝はうっかり忘れてしまいました。着用義務化はいいことです」と神妙に語った。

ベルトを締めていない議員らは「高速道では締めていたが一般道では…」(坂口力元厚生労働相)、「短距離だったのでつい」(森裕子民主党参院議員)などと漏らし、着用はまだ習慣化していないよう。「装着しにくく毎回の着用は非現実的」(亀井亜紀子国民新党参院議員)という指摘もあった。

一方、ワゴン車で現れた冬柴鉄三国土交通相はしっかり着用しており「わたしは前からちゃんと締めているんです」と笑顔。

後部ベルト、3割が非着用 国会議員を直撃取材
共同 08年6月2日


この近年まれに見る傑作記事については、今朝の朝日新聞の天声人語も書いていて、こちらもまた、珍しく共感できる内容です。

…「安全を強いる」というのも妙な話だが、後ろに座る人のほぼ9割が、万一の備えより束(つか)の間の自由を選んでいる現実があった▼なるほど、交通事故はないと決めてかかれば、ベルトをたぐる小さな面倒は大きく、上半身を包むささやかな窮屈は耐え難くもなる。重労働に拷問である。これが、事故を前提に考えるとあっさり逆転、それで済むなら喜んでとなろう。望遠鏡をどちらからのぞくかで、物は大きくも小さくもなる▼タクシーの運転手さんは夜が心配だという。お酒が入った客とのやりとりがこじれ、「お前の指図は受けん」などと逆上されないか。なにしろ、後方のわがままでとがめられるのは運転席なのだ▼75歳以上のドライバーには「もみじマーク」の表示も義務化された。もみじ付きのタクシーは、これまた後席の反応が気にかかる。プロの運転者でなくても、年齢を示して走るのに抵抗がある人はいる▼もみじの区切りは、不評の「後期高齢者」と重なる。あれもこれも、議員と高級官僚が永田町で決めたこと。ふだん黒塗りの後席でふんぞり返っている人ほど、足元が見えにくい。人生ままならぬ者の痛みにも鈍くなる。慣れないベルトはこたえるに違いない。

天声人語
asahi.com 08年6月4日


シートベルトとは何の例えなのか?車に乗るたびにベルトを締め、同乗者にも締めさせ、その窮屈さ、とげとげしさ、理不尽さ、そして滑稽さを感じながら日々自問しましょう。

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2008年06月03日

ゲンタン

減反政策をめぐって与党内の意見が割れています。

福田首相は1日、首相公邸前で記者団に米の減反政策について問われ、「たくさんお米を食べて、減反をしないで済むようになれば自給率は自動的に上がる。まずはそれをやりましょう。できることからやりたい」と述べた。町村官房長官は5月31日に「減反政策を見直していく必要がある」と語ったが、首相は政策見直しには言及しなかった。

一方、5月30日に発足した自民党食料戦略本部の本部長を務める加藤紘一元幹事長は1日のフジテレビの番組で「お米は余っている。それよりも大豆や小麦を作らないといけない。『農業は米だ』というこびりついた発想だ」と町村氏の見直し発言を批判し、自給率の低い大豆や小麦などの安定確保のため、国内生産のあり方や輸入ルート確保策の検討が必要だと指摘した。

お米たくさん食べる→減反不必要→自給率上昇 首相語る
asahi.com 08年6月2日


加藤さんが減反政策見直しに反対している最大の理由は、「減反政策をやめると米あまりが加速して米の値段が暴落するから」です。

米の値段が下がると多くの農家は米作りをやめることになり、結果的に減反になります。そのことは、町村氏も重々承知しているはずで、何も米の増産を目論んでいるのではありません。

減反政策を続けても、見直しても、米作農家は減るわけで、その意味では、町村氏も加藤氏も同じ方向を向いているのであり、違いは、それを実現するための手段だけということになります。

農水省の計画経済下で、カネを出して米作りをやめさせるのか、勝手に米を作らせることで米価を下げさせ、自主的にやめさせるのか、ということです。

今、世界中で米価の暴騰が叫ばれていますが、それでも国際価格は、日本の米の半分にすぎません。政府は、べらぼうに高い関税をかけることで、国民から海外の安い米を買う機会を奪っているわけで、いわば国民は、米を買うたびに50パーセントの税金を払っているのです。

そしてその税金は、国内で米の値崩れを防ぐための生産調整を立案、実行する巨大な官僚機構を動かすために当てられているというわけです。

今の食糧価格暴騰を口実にして、詐欺師たちの取り分を少しでも減らせれば不幸中の幸いですが、「たくさんお米を食べて…」などと、頓珍漢な発言をする首相の下では、期待できそうにありません。

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2008年06月01日

クロになるグレーとシロになるグレー

先週は、インサイダー取引絡みで、あちこちのニュースサイトでNHKという文字をよく見かけました。第三者委員会の調査については、NHKの中でこれまでにない激しい反発が起きていたのを知っていたので、よくあれだけ大勢が調査に協力したものだと感心してしまいました。

しかし逆の見方をすると、基となる母数(株取引をしている人)が想像以上に大きかっただけとも考えられます。

だとすれば、株を保有している職員(またはその家族)は2700人どころではすまないはずで、職員の取引履歴を精査すれば、パンドラの箱を開けることになるのは間違いありません。

それは、近年世間を賑わせたような、ライブドアや村上ファンドといった、出た杭を叩くのとはワケが違います。拝金主義とか格差とかをことさら社会的テーマとして糾弾する「正義の味方」が、指折りのトレーダー軍団だったという軽い皮肉にとどまらず、半世紀あまりの間放っておいた下水道の中をのぞくような、おぞましい体験になるはずです。

今回の報告では、06年1月16日、報道局社会部の記者が、フジテレビ株10株を売却していた事実も明らかにされた。東京地検が証券取引法違反の疑いでライブドアの家宅捜索に乗り出した日だった。

当日、捜索のニュースはNHKが午後4時すぎ、大相撲中継を中断して特ダネとして報じた。社会部記者が売却したのは勤務中の同日午後0時半ごろで、原稿を編集・出稿する報道情報端末に元原稿が「防衛一報」というタイトルで入る約2時間前だった。

10株の売却代金は計320万円で、記者はその直後にヤクルト株を約260万円で買いつけた。

調査に対し、記者は「家宅捜索は知らなかった。この日になぜ売ったのかは偶然としか言いようがない」と説明。ライブドア事件の取材者ではなかったため、報告書は「何らかの方法で捜索の情報を入手した疑念は払拭(ふっしょく)されないものの、具体的な証拠はなく、問題事案とは評価できない」と判断した。

ライブドア捜索当日、フジTV株売却も NHK職員
asahi.com 08年5月28日


振り返れば、ライブドアの強制捜査における午後4時すぎの特ダネというのはNHKの誤報で、実際に捜査が始まったのは6時半ごろのことでした。NHKは、検察のリークを受けて強制捜査が行われることを事前に知っており、上の記事によれば午後2時半ごろには、Dデーは今日だ!という最終的な確証を得て仮原稿を仕上げていたわけです。

当然、記事を書いた記者がその情報をつかんだのはさらにその前になるわけで、情報を事前に仲間と共有しないわけもなく、市場が開いている時間に、トレーダーの溜まり場でそれがどんな意味を持つのか考えるととゾッとします。

上の記事にある社会部記者は午後0時半に売買をしており、「情報を入手した疑念は払拭(ふっしょく)されないものの、具体的な証拠はなく、問題事案とは評価できない」とされています。グレーだけれどもクロとはいえない、というわけです。

しかし、堀江氏も村上氏も、跳ね返り者たちは、いずれもそうしたグレーな件で起訴されてクロとされたのです。

まだ行われてもいない強制捜査を特ダネとして伝えて「風説の流布」をしたNHK、捜査の当日に不審な取引をした社会部記者、そしてそもそも、マスコミに事前に情報をリークするという検察の行為自体、どれもこれもグレーです。

しかしそうした行為は、グレーだけれども見逃されるのです。

もし、NHKの調査が徹底して行われ、2006年1月の大発会から16日までの株売買だけでも洗いざらい調べれば、よりクロに近いケースがでてくるに違いありません。そしてそれがインサイダー取引にあたるのかを立証するために、検察とマスコミの癒着までメスを入れれば、この国を揺るがすような大スキャンダルに発展するはずです。

しかし、この国の支配層はそれを望まず、よってそうした調査は行われるはずもなく、NHKは順調に受信料収入を伸ばし続け、せいぜい株取引を禁止された職員たちが暇つぶしの手段を失い途方に暮れるだけで終わるのです。

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