2008年06月01日

クロになるグレーとシロになるグレー

先週は、インサイダー取引絡みで、あちこちのニュースサイトでNHKという文字をよく見かけました。第三者委員会の調査については、NHKの中でこれまでにない激しい反発が起きていたのを知っていたので、よくあれだけ大勢が調査に協力したものだと感心してしまいました。

しかし逆の見方をすると、基となる母数(株取引をしている人)が想像以上に大きかっただけとも考えられます。

だとすれば、株を保有している職員(またはその家族)は2700人どころではすまないはずで、職員の取引履歴を精査すれば、パンドラの箱を開けることになるのは間違いありません。

それは、近年世間を賑わせたような、ライブドアや村上ファンドといった、出た杭を叩くのとはワケが違います。拝金主義とか格差とかをことさら社会的テーマとして糾弾する「正義の味方」が、指折りのトレーダー軍団だったという軽い皮肉にとどまらず、半世紀あまりの間放っておいた下水道の中をのぞくような、おぞましい体験になるはずです。

今回の報告では、06年1月16日、報道局社会部の記者が、フジテレビ株10株を売却していた事実も明らかにされた。東京地検が証券取引法違反の疑いでライブドアの家宅捜索に乗り出した日だった。

当日、捜索のニュースはNHKが午後4時すぎ、大相撲中継を中断して特ダネとして報じた。社会部記者が売却したのは勤務中の同日午後0時半ごろで、原稿を編集・出稿する報道情報端末に元原稿が「防衛一報」というタイトルで入る約2時間前だった。

10株の売却代金は計320万円で、記者はその直後にヤクルト株を約260万円で買いつけた。

調査に対し、記者は「家宅捜索は知らなかった。この日になぜ売ったのかは偶然としか言いようがない」と説明。ライブドア事件の取材者ではなかったため、報告書は「何らかの方法で捜索の情報を入手した疑念は払拭(ふっしょく)されないものの、具体的な証拠はなく、問題事案とは評価できない」と判断した。

ライブドア捜索当日、フジTV株売却も NHK職員
asahi.com 08年5月28日


振り返れば、ライブドアの強制捜査における午後4時すぎの特ダネというのはNHKの誤報で、実際に捜査が始まったのは6時半ごろのことでした。NHKは、検察のリークを受けて強制捜査が行われることを事前に知っており、上の記事によれば午後2時半ごろには、Dデーは今日だ!という最終的な確証を得て仮原稿を仕上げていたわけです。

当然、記事を書いた記者がその情報をつかんだのはさらにその前になるわけで、情報を事前に仲間と共有しないわけもなく、市場が開いている時間に、トレーダーの溜まり場でそれがどんな意味を持つのか考えるととゾッとします。

上の記事にある社会部記者は午後0時半に売買をしており、「情報を入手した疑念は払拭(ふっしょく)されないものの、具体的な証拠はなく、問題事案とは評価できない」とされています。グレーだけれどもクロとはいえない、というわけです。

しかし、堀江氏も村上氏も、跳ね返り者たちは、いずれもそうしたグレーな件で起訴されてクロとされたのです。

まだ行われてもいない強制捜査を特ダネとして伝えて「風説の流布」をしたNHK、捜査の当日に不審な取引をした社会部記者、そしてそもそも、マスコミに事前に情報をリークするという検察の行為自体、どれもこれもグレーです。

しかしそうした行為は、グレーだけれども見逃されるのです。

もし、NHKの調査が徹底して行われ、2006年1月の大発会から16日までの株売買だけでも洗いざらい調べれば、よりクロに近いケースがでてくるに違いありません。そしてそれがインサイダー取引にあたるのかを立証するために、検察とマスコミの癒着までメスを入れれば、この国を揺るがすような大スキャンダルに発展するはずです。

しかし、この国の支配層はそれを望まず、よってそうした調査は行われるはずもなく、NHKは順調に受信料収入を伸ばし続け、せいぜい株取引を禁止された職員たちが暇つぶしの手段を失い途方に暮れるだけで終わるのです。

banner_03.gif
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。