自動車の後部座席のシートベルト着用を義務付けた改正道交法施行から一夜明け、最初の平日となった2日午前、東京・永田町の議員会館に車で乗り付けた国会議員35人に共同通信が直撃取材したところ、約3割に当たる11人がベルトを着用していなかった。
加藤紘一自民党元幹事長は党交通安全議連会長も務めるが、この日はベルトを非着用。「きのう地元では装着していたが今朝はうっかり忘れてしまいました。着用義務化はいいことです」と神妙に語った。
ベルトを締めていない議員らは「高速道では締めていたが一般道では…」(坂口力元厚生労働相)、「短距離だったのでつい」(森裕子民主党参院議員)などと漏らし、着用はまだ習慣化していないよう。「装着しにくく毎回の着用は非現実的」(亀井亜紀子国民新党参院議員)という指摘もあった。
一方、ワゴン車で現れた冬柴鉄三国土交通相はしっかり着用しており「わたしは前からちゃんと締めているんです」と笑顔。
後部ベルト、3割が非着用 国会議員を直撃取材
共同 08年6月2日
この近年まれに見る傑作記事については、今朝の朝日新聞の天声人語も書いていて、こちらもまた、珍しく共感できる内容です。
…「安全を強いる」というのも妙な話だが、後ろに座る人のほぼ9割が、万一の備えより束(つか)の間の自由を選んでいる現実があった▼なるほど、交通事故はないと決めてかかれば、ベルトをたぐる小さな面倒は大きく、上半身を包むささやかな窮屈は耐え難くもなる。重労働に拷問である。これが、事故を前提に考えるとあっさり逆転、それで済むなら喜んでとなろう。望遠鏡をどちらからのぞくかで、物は大きくも小さくもなる▼タクシーの運転手さんは夜が心配だという。お酒が入った客とのやりとりがこじれ、「お前の指図は受けん」などと逆上されないか。なにしろ、後方のわがままでとがめられるのは運転席なのだ▼75歳以上のドライバーには「もみじマーク」の表示も義務化された。もみじ付きのタクシーは、これまた後席の反応が気にかかる。プロの運転者でなくても、年齢を示して走るのに抵抗がある人はいる▼もみじの区切りは、不評の「後期高齢者」と重なる。あれもこれも、議員と高級官僚が永田町で決めたこと。ふだん黒塗りの後席でふんぞり返っている人ほど、足元が見えにくい。人生ままならぬ者の痛みにも鈍くなる。慣れないベルトはこたえるに違いない。
天声人語
asahi.com 08年6月4日
シートベルトとは何の例えなのか?車に乗るたびにベルトを締め、同乗者にも締めさせ、その窮屈さ、とげとげしさ、理不尽さ、そして滑稽さを感じながら日々自問しましょう。