温暖化懐疑派からすれば悪いジョークですし、グリーンな人たちからすればバカにした話ですし、現場の人たちからすれば実現不可能。やれやれです。
そんな折、中国は中期目標の設定を拒否しました。理由はこうです。
中国外務省のスポークスマン、キン・ガンは、中国はまだ途上国なので、経済を発展させ、貧困を減らし、生活水準をあげることの方が大事であり、「従って中国の排出量が増えるのは当然のことであり、拘束性のある目標設定を受け入れることは不可能だ」と述べた。
Climate pact in jeopardy as China refuses to cut carbon emissions
中国の排出量は今やアメリカを抜いて世界1位ですが、確かに国民の大部分はまだまだ貧乏で、中国の立場に立てば当然の主張です。しかし気をつけなくてはならないのは、中国は決して温暖化懐疑派ではないということです。むしろ温暖化と排出規制に大いに乗り気な、環境派なのです。
ですから、日本の中期目標に対してははっきりと首を横に振りました。
日本、中国、韓国3カ国の環境相会合に出席するため北京を訪れた斉藤環境相は14日午後、中国政府で地球温暖化対策を担当する解振華・国家発展改革委員会副主任と会談した。麻生首相が10日表明した、20年までに温室効果ガス排出量を「05年比で15%減」とする日本の中期目標を説明した斉藤氏に対し、解氏は「より高い目標を求めたい」と述べ、日本の取り組みが不十分との認識を示した。
温室ガス削減、日本の中期目標「不十分」 中国政府幹部
なにこのダブルスタンダード?と思われるかもしれませんが、実は中国の態度は一貫しています。中国の主張は、「中国は地球温暖化を大いに憂えている。過去200年間地球を汚してきた先進諸国はその責任をとるべきで、発展の途上にある貧しい国々の負担を減らすためにも、より厳しい排出削減にとりくむべきだ」というものだからです。
だから中国を含む途上国は、2020年までに、1990年比で19%の排出削減を日本に求めています。先日発表された日本政府の中期目標は1990年比で8%の削減で、それでも国民の負担は大変なものになるという試算でした。19%削減するということは、要するに現実的には、経済活動を縮小しろということです。縮小して、そのぶん中国を含む途上国の発展に尽くせということなのです。
自己中の詭弁に聞こえますが、「1800年を基準年にしてみれば、中国の排出量はたかだか1000%しか増えていないが、先進国の排出量は5000%もアップしてる。何とかしろよお前ら!」というようなことであり、十分“あり”な論理であり主張です。
その一方にあるのは、常々言われている「中国、インドなどを巻き込まない先進国のみの排出削減では意味はない」という主張で、これまた正論です。
というわけで、CO2をいわば基軸通貨化して温暖化ビジネスで世界を制したい欧州は、「中国を動かすためにも大幅削減しろ!」と日本に迫り、気がつくと日本は、世界に糾弾される「地球の敵」となるわけです。なんとか逃げ道を探さないと、日本という物語は、自分の手で自分の富を壊すという喜劇的な最終章を迎えることになりかねません。