このニュース、欧米のマスコミでは連日トップニュースなのですが、日本のマスコミであまり大きく取り上げられないためか、欧米のマスコミはどうかしてる(米の陰謀、白人の価値観のおしつけ等)ととらえている人もいるかもしれません。しかしどうかしているのは日本のマスコミの方です。
まあ、大日本帝国の昔から、パキスタンから西は大東亜共栄圏の圏外と規定していた伝統は今でも生きていますから、つい無視してしまうのは仕方ないのかもしれませんが、イランという地政学的に極めて重要な場所で、1979年のイスラム革命以来という大規模な反政府デモ発生というのは、極東の片隅で友愛とか正義とか叫ぶ兄弟の話よりもずっと重い出来事です。
ちなみにこの騒乱は、保守派vs改革派というわけでもありません。現職のアフマディネジャド大統領は保守派で、選挙結果に文句を言っているムサビ氏も保守派で、政治姿勢はそんなに変わりません。ただ、保守派の中でも過激派のアフマディネジャドさんをよろしく思わない人は多く、そういう人たちが、事実上唯一の対立候補であるムサビ氏に肩入れしていた所に、不正選挙としか思えない結果が出て、体制に不満を持つ人々の怒りが爆発したのです。
さて、この出来事は、そうした政治的な側面はもちろんですが、もしかしたらそれ以上に大きなターニングポイントになるかもしれない可能性を秘めています。
それは、ニュースの作られ方に関することで、このドラマを世界に広めているのは、既存のマスコミではなく、Twitter、Flickr、Youtube、そしてBlogという、ウェブが中心となっているということです。
“ひとことブログ”という感じのTwitterは、日本だけでなくアメリカなどでも、騒がれているわりには面白くないと言われてきたのですが、災害や騒乱などでは大変な威力を発揮するようで、ものすごいスピードで膨大な情報が飛び交っています。
Iran Unrest (英語)
そして人々は携帯などで現地の様子を撮影し、動画はYoutubeへ、静止画はFlickrに、続々とアップしています。イラン政府から取材を制限されている既存メディアは、ほとんど新しい情報を提供することができません。マスコミの発信する一次情報に群がるネットユーザーというのがこれまでのパターンでしたが、完全に逆転した形で、マスコミが懸命にネット情報をフォローしている有様です。そしてそうした情報をまとめるスピードにおいても、既存マスコミはブログの後塵を拝しています。
Revolutionary Road...(イラン人ブロガーによる現場からの英語によるまとめサイト)
1991年の湾岸戦争において、弱小ニュースチャンネルに過ぎなかったCNNが空爆の様子を生中継し、一気にケーブルニュースチャンネルの地位を高めたように、もしかすると今イランで起きている出来事は、ネットとマスメディアの力関係を、劇的に変えることになるかもしれません。