2009年07月10日

ロシア人気質

サミット前に意気揚々とモスクワに乗り込んだオバマ大統領について、ニューヨークタイムズが興味深い記事を書いています。

In Russia, Obama's Star Power Does Not Translate

"世界で愛される大統領”としての魅力でロシア人を虜にしようとしていたオバマ大統領の魂胆むなしく、ロシア人はことごとくオバマ氏の魔性のウィンクをスルーし、醒めた目で見ていたという内容です。

「なんでオバマがそんなにスターなのか、私たちにはほんとに理解できないんです」と25歳のキリル・サゴロドノフ。「彼の振る舞いとか、見せ方を信用できないとうか、ああいういかにものカリスマは、ロシアではパロディーのネタなんです。ロシア人はああいうのを受け付けないんです。民衆を操ってるみたいでだめなんです」


オバマ贔屓のNYTとしては、"The One”の魅力が伝わらないのはロシア人の特殊性にあるとしたいようで、「特殊なのはお前たちの方だ!」と言いたいところですが、オバマのスター光線は日本では効果満点だと思いますので、やめておきます。

それはさておき、NYTに指摘されるまでもなく、オバマ氏のように“へんに見た目がいい口の達者なインテリ”というのは、ロシア人に最も信用されないタイプに思えます。

現代史を見ても、ロシア人の信頼を勝ち得たのは、理屈でも情でも見映えでもありませんでした。

1930年代から今まで、ロシア人に自分の要求を飲ませることに成功した政治家は、ヒトラー、ケネディ、レーガンと、みな一様にマッチョです。

1941年に日ソ中立条約を結んだとき、普段は猜疑心の塊のような独裁者スターリン(スターリンはグルジア人だという野暮なツッコミはなし)は有頂天で、松岡洋右外相をモスクワ駅まで見送りにまで行き、世界を驚かせました。

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日本を手強い相手として認識していたからこその満面の笑顔です。当時の西側諸国は、同盟国のドイツを含めて、日本の能力を過小評価していましたが、日露戦争で刃を交えたロシア人は、武人としての日本人をリスペクトせずにいられなかったのかもしれません。

ぼくの知り合いの女性が、1人でモスクワのホテルに連泊しまして、従業員の態度がどうもよくなく、特にカウンターに常駐する女性の、客をバカにしたような対応に腹を立てていました。ロシアだから言うだけムダと堪えていたのですが、ある日ぶち切れて責任者を呼びつけ、つたない英語でも構うことなく、「ホテルマンとして恥ずかしくないのか!」と大上段から滔々と説教したといいます。すると翌日から、カウンターの女性は姿を消し、すれ違う全従業員の態度が一変したそうです。

ロシアらしいなと思います。

最近、日本が北方領土を固有の領土と明記した法案を成立させたことに対してロシアの愛国者たちが怒り、「千島列島から北海道までぜんぶロシア」などと訴えているそうですが、それに対して「まあまあ」と紳士ぶった態度をとるのは誤りです。

「千島列島も樺太もぜんぶ日本だ。それを認めないとバイカル湖から東を侵略する」と返すのが正しいのです。

お互いに銃口を向けながらにらみ合い、頃合いを見て、「なあ、北方領土問題を解決して手を組まないか。俺たちがチームを組めばアメリカも中国も目じゃないぜ」と呟く。これでロシアはイチコロ、のはずです。

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