世界の資金の流れに焦点を当てると、金融危機の「震源」は欧州の銀行だった、とするリポートを日本銀行がまとめた。サブプライム問題を生み出したのは米国だが、資金が欧州の銀行を経由し過ぎていたため危機が一気に世界に拡大した、と分析する。
金融市場局が国際決済銀行の統計を用い、世界の金融ネットワークを分析した。英国、スイス、ユーロ圏内の欧州3地域の銀行部門は02年以降、産油国や新興国との取引を拡大。米国や日本の銀行部門を押しのけ、世界の資金が集まる最大級の「ハブ」(中継地)に成長した。
ハブでショックが起きた場合、資金のネットワーク全体に瞬時に広がるおそれがあるという。サブプライム問題を契機に途上国が資金を引き揚げ始めると、欧州の銀行間でドル資金の取引が凍りつき、金利は急上昇した。ユーロ圏と英国の銀行が緊密に資金をやりとりしていたため、「ショックが両地域間でピンポンラリーのように増幅し、影響は世界各地に広がった」という。
金融危機「震源は欧州」だった?! 日銀が資金リポート
金融危機というと、サブプライムの発生源はアメリカですし、強欲なアメリカの金融業界が暴走して起こしたような印象がありますが、マネーゲームに精を出していたのは、むしろヨーロッパです。
90年代後半に社民勢力が大きく伸長したヨーロッパは、行きすぎた労働者保護などにより、産業の海外流出に悩まされていました。各国政府は、補助金や罰則強化などのアメとムチで食い止めようとしましたがうまく行かず、やむを得ず社会保障の削減に乗り出しましたがそれも限界。経済は停滞し、でも痛みは受けたくないし・・・と、そこで目を付けたのが、マネーゲームなのです。
ドイツなどでは、国有銀行が先頭切って放漫経営して破綻しましたし、元来反米で左派的傾向の強い欧州で「資本主義は終わった!」などという左派陣営の煽りが効果を発揮しないのは、そういう事情もあるわけです。
要するに金融バブルというのは、「居心地のよい福祉国家を維持するために、欧州左翼が暴走して起こした」ともいえるのです。
さらにいえば、アメリカのサブプライム問題ですら、社会主義的思惑がその起因にあります。
「貧しい者も一軒家に住む権利がある」ということで、クリントン政権時代に、貧困層に住宅ローンを貸し出すことを半ば強制で奨励するようになりました。日本でいえば、零細企業を救うためにと設立された、新銀行東京のようなものです。
サブプライムが奨励されるようになる以前には、貧困層の利益を代表する市民団体が、「貧困者にも金を貸せ!」と銀行経営者の自宅に押しかけてデモをしていたものでした。しかし今は同じ団体が、「強欲な金融資本家にだまされて家を取り上げられようとしている。税金で何とかしろ!」と訴えています。
まさに今回の金融危機の縮図です。