2009年08月13日

オバマジョリティ?

広島市が、核廃絶を訴えたオバマ大統領を応援するという意味で、「オバマジョリティ」という標語をアピールしています。Obama と Majority(多数派)をかけてオバマ支持を意味する造語ということで、Tシャツやらテーマソングやらを作ってプッシュしているようですが、ひどい気まずさを感じるのはぼくだけではないと思います。

「♪ハー 本当に 核なき平和をね 
全力尽くして 世界のために
力満ちたる 約束の 次はアクション
Yes,you can
応援してるよ 世界から
みんながあなたのサポーター
オー オー オーバマ
オーバーマジョリティー
シャン シャン シャンときて マジョリティー」

「オバマジョリティ音頭」RCCニュースより

幸いあちらの掲示板などを見ると、「オバマジョリティ音頭」はまだ世界に知られておらず、またほとんどの人は「オバマジョリティ」という用語をスルーして議論しているので胸をなで下ろしました。しかしスルーされているということは、「オバマジョリティ」を前面に立ててのPRが失敗しているということを意味していて、それはそれで問題です。

オバマ氏の当選から就任までは、小浜市のバカ騒ぎを笑えないほどに、確かに世界中がブームに沸いていました。あの頃アメリカメディアは、オバマ当選の喜びのために、「オバマベビーブーム」になりそうだとまで予想していたものです(結局ベビーブームは起きませんでした)。たぶん広島の秋葉市長は、今もその頃の余韻に浸り続けていて、広島のメッセージを世界にアピールするチャンスだと考えているのかもしれません。

しかしここ2ヶ月ほどで、事情は大きく変わりました。

アメリカでは、オバマ氏の支持率は歴代大統領に比べても目を見張るペースで急降下し、今では不支持率の方が支持率を上回っています。外交は弱腰、内政は国内の亀裂を深めるばかりで、オバマ氏のカリスマは急速に色あせ、Yes, we can! という標語は過去のものになりつつあり、The One とか The Great Unifier とかいう称号は、もはや皮肉としてしか使われません。今やオバマ氏は誰からも愛されるアイドルではないのです。

小浜市の悪のりはまだギリギリで微笑ましさを残していましたが、広島の悪のりは完全にタイミングを外している分たちが悪く、しかも被爆という厳粛な問題に絡んでいるだけに、笑い飛ばすわけにもいきません。

前述した通り、「オバマジョリティ」に対する日本以外での反応はほとんどないのですが、あちらのブログや掲示板でなされた数少ない反応をいくつかあげておきます。

オバマの政治姿勢には賛成できないが、広島の思いはわかる。

なんとも難解な言葉だ。

核廃絶には大賛成。でも核廃絶を訴えた政治指導者はオバマだけか?

オバマと何の関係があるんだ?オバマは式典に出なかったし、「ヒロシマジョリティ」にすべき。

ところで、「オバマジョリティ」というのは秋葉市長の造語と喧伝されていますが、決して市長のオリジナルではありません。2008年の初め頃、「ポピュリスタ」と名乗る活動家が、オバマ派の下院候補者を支援するために、オバマジョリティという運動をウェブ上で展開したことがあります。「オバマ大統領のために多数派議会を!」というわけで、オバマジョリティという語感からは、普通こういうことを連想します。世知辛い政治状況の中、オバマジョリティを訴える広島市の姿は、奇妙にしか映りません。

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