2009年08月18日

アメリカが揺れている理由

医療保険改革を巡って、なぜアメリカが揺れているのか?

その理由について説明するコラムを見つけましたが、これは誤解を誘います。

米国(の一部)が医療保険改革に反対なのは「クレージー」だからか――ニュースな英語

長いコラムをひと言でまとめれば、「アメリカの保守派は非理性的で陰謀論に染まりやすいのだ」ということです。

しかしこれでは、「保守派はバカだな」で終わりです。民主党の無謬性に立脚した、一方的すぎる見方です。

実際に起きたことはあれこれ分析するまでもありません。reddit(redditは中道左派的なユーザーが多いです)で見つけた明快なコメントを借りれば・・・

民主党は完ぺきにドジった。最悪のプレゼン。メッセージは複雑で、まとまりがなく、おかげで国民に要点は伝わらず、もちろん細かいことなんてまるで伝わらない。印象として残るのは、企業に対する公的支援と同じで、とにかく借金して大量のカネをつぎ込み、余計なお役所仕事を増やし、その結果コバンザメたちがもうかるということだけだ。


重要な政治課題に対してこれでは、失敗するのは当たり前です。民主党は、オバマ人気に頼って準備不足で電撃戦を仕掛けてコケたのです。

ところが民主党はそこでリグループしようとせずに、さらに傷を広げてしまいました。「法案が反対されるのは、反対者がバカだからだ!」と考えて、それを態度に表してしまったのです。

大物議員たちは、反対者を「ナチスだ」「非国民(アンアメリカン)だ」「アストロターファーだ*」と呼び、民主党贔屓のインテリたちは、人種問題やら文化論を持ち出したりして反対者の愚を指摘しました。

冒頭で紹介したコラムの筆者は、そうした民主党シンパの考え方を踏襲しているのですが、外国人ジャーナリストの表面的な日本批判と同じで、こんな上から目線で実験動物でも見るような分析をされた保守派からすれば、それこそ怒髪天を突くです。

「なにその自分を棚に上げた独善的なエリート意識?」ということで、保守派はますます態度を硬化させ、もともとのオバマ支持者たちも鞍替え続出で、おかげで支持率はフリーフォール状態です。

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医療保険改革を巡って露わになった民主党のエリート意識に対する疑念は、この問題にとどまらず、長く尾を引きそうです。

*Astroturfer=アメリカでは、人工芝のことを、初の人工芝球場であるアストロドームにちなんで、アストロターフと呼びます。草の根運動のことはグラス・ルーツと呼び、これは「天然芝の根」を意味しますが、アストロターファーはこれにかけたスラングで、人口の草の根運動=動員されたデモを意味します。語感としては、「プロ市民」に近いかもしれません。なお、反対派をアストロターファー呼ばわりした民主党側は、タウン・ミーティングに自派のアストロターファーを動員していたことが明らかになっています。

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