2009年12月17日

ふたつの日本

ハチャメチャな民主党政権が誕生して、ハチャメチャであるものをハチャメチャであると指摘することに虚脱感を感じてブログを休止して早3ヶ月あまり。ぼくは一昨日香港から帰ってきました。香港に行っていたのに深い理由はありません。日本にいる限りは避けられない日本という空間の精神的閉塞感から一時でも自由になりたいという、ただその程度の思いからでした。

そんな動機で初めて訪れた香港でしたが、結果から言えば、良くも悪しくも、日本の呪縛から逃れることはできませんでした。

何しろ香港という所は、徹底的に日本に汚染されています。人気のカジュアルウェアはユニクロとMUJI(無印良品)で、街のいたる所で見かける香港最大の菓子チェーンは妙な日本語の店名で日本風のお菓子を売る「優の良品」で、街で一際長い行列を作っているレストランは回転寿司とうどん屋で、マクドナルドの一番プッシュは「Ebi Burger」で、化粧品から健康グッズまで一番の売りは「日本で高評価」で、スーパーの食料品を見れば「日式」の嵐。日本から逃れて生活する術はありません。

とは言うものの、香港人には、東南アジアの一部や、或いは欧米のジャパノフィル(日本狂い)に見られるような、日本を過度に美化するような卑屈な態度は感じられません。彼らを魅了しているのは、幻想の中の日本ではなく、あくまで等身大の日本であり、ただとにかく日本の製品や文化をいいと感じるから、日本食をおいしいと思うから素直にそれを評価し、生活の中に受け入れているという風なのです。

逆説的になりますが、だからこそぼくは、いわば日本から逃避したい気持で香港を訪れた今回、皮肉にも以前したどの旅よりも強烈に、日本という巨大な存在に打ちのめされてしまいました。軍事力や圧倒的な経済格差で現地の人々を隷属させるわけではなく、ごく自然に等身大の姿で香港の人々を惹き付け、彼らの生活の中に刻々と根を伸ばしている日本という存在は、とてつもないモンスターです。

そんなモンスターである日本と、日本にいる時に感じた「沈みゆく日本」は、どうにも整合性がとれません。しかし「沈みゆく日本」もまた、決して幻想ではありません。

歴史的な日本の夜明けであり、東アジアの連帯を訴えて海外での評価も高いはずの鳩山政権の動向は、香港ではほとんど伝えられることはなく、唯一そこそこの大きさで伝えられた経済刺激策の発表は、ブルームバーグの香港支局で散々に叩かれていました。いわく、「民主党政権の経済政策はかけ声倒れで歴代政権と変わらぬ思い切りを欠いた対症療法に過ぎず、すでに日本はポイント・オブ・ノーリターンを越えた」・・・。

思うに、香港に根を下ろしている日本的なものは、どれもこれも「下賤」なものばかりです。ユニクロにしろ袋詰めの菓子にしろ、エリートには何の関係もなく、高尚な意図の下にはむしろ有害とすら言える庶民的で悪趣味なシロモノであり、回転寿司やうどんは言うまでもなく庶民のものです。香港の道路を埋め尽くす日本車にしても、日本で最初に自動車製造に目をつけたのは市井のメカオタクとベンチャー企業家であり、エリート役人は冷淡でしたし、ここ数年日本文化の牽引役を務めているアニメやカワイイファッションも、最近でこそ変に公的なお墨付きを得ていますが、昨日までは下の下という扱いでした。

今、香港に限らず世界を惹き付けているモンスターな「日本」のほとんどは、エリート的、或いは官的な感覚とは無関係なところで雑草のように生まれた庶民文化ばかりなのです。

一方、官的な力が強く働いている分野はどうかといえば、こちらは一様にダメダメです。規制のためにガラパゴス化してしまったと言われる携帯電話分野におけるプレゼンスはゼロに等しく、経済政策は世界に反面教師を提供するばかり。そして日本エスタブリッシュメント層の権化たる現首相に至っては、彼から学歴と生まれを取ったら何も残りません。

日本には2つあるのです。モンスターな日本と、その背中に乗り、操縦士をきどる虚弱体質の日本の。

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