日本の財政がどれだけ借金漬けになっているかを示す「国内総生産(GDP)に対する 純債務比率」が2010年に先進国で最悪の水準になる見通しだ。 総債務残高を使った国際比較では既に1999年から先進国で最悪になっているが、 資産を差し引いた純債務ベースでも、これまで最悪だったイタリアを初めて上回る。 日本の財政が世界でも際立って深刻な状況にあることが改めて浮き彫りになった。
純債務は政府の総債務残高から、政府が保有する年金積立金などの金融資産を差し引いた 金額。経済協力開発機構(OECD)の09年12月時点のまとめでは、国と地方、 社会保障基金を合わせた一般政府ベースの純債務のGDP比率は10年に104.6%に達し、 初めて100%の大台に乗る見通しだ。
日本、借金漬け深刻 純債務のGDP比、先進国で最悪水準
日本はかなりヤバイです。「日本は外国に借金しているわけじゃないから、じゃんじゃん札刷ればOK!」と主張している人たちも、それにより起こりえる悪性インフレを否定しているわけではありません。そう遠くない未来に、日本は悪性インフレか大増税の2択を迫られることになるのは、よほどの幸運に恵まれない限り避けられそうにありません。
しかし大増税は、長期にわたるさらなる景気低迷を約束するようなものですし、国民がオーケーするはずもありません。となればインフレによる政府債務の希釈化しか道は残されておらず、しかもけた外れの借金額を考えるとアウト・オブ・コントロールになる可能性は否定できず、最近では、リフレに反対する人の中にも「ひと思いにリセットしてしまえ!」と、やけ気味に言う人も出てきています。
しかし、ハイパー級のインフレはリセットになるのでしょうか?
確かに政府の債務はリセットされます。でも国民の生活は?
インフレを望む人の中には、高齢者の貯蓄を無に帰すことで、高齢者も若者も、富者も貧者も同じスタートラインに立てるとイメージしている人も多いようです。しかし昔の人の話を聞く限り、極度のインフレはそんなおいしい話ではありません。
例えば先日、19世紀末に生まれたオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイクの「昨日の世界」という本を読み返していたら、こんな一節にあたりました。
(第一次大戦前の世界は)インフレの時代のように、持たざる者が奪われ、堅実な者が騙されるようなことはなく、辛抱強い者、非投機的な者が最も得をする時代だった。
第一次大戦後のハイパーインフレを体験したツヴァイクの、それ以前の安定した世界を懐かしむ言葉です。そう、要するに激しいインフレの世界とは、正直者が損をし、ならず者が得をする世界なのです。
今ぼくたちは、退職金をがっぽり手にして投資にまわす高齢者や、マネーゲーマーばかり潤い、こつこつ働く者の報われない世の中に幻滅しています。しかし、激しいインフレにそれを是正する力はありません。それどころか激しいインフレというのは、そんな社会の不公平を極限まで拡大し、マネーゲーマーの中でも特に悪質な者、詐欺師と盗人の跋扈する、ルールなき弱肉強食の世界であることを承知しておかなくてはなりません。そして本当に裕福な者はあまりダメージを受けないのです。
カネをジャブジャブ刷って借金を返済しても健全なインフレになるだけで済むのか、それとも制御不能に陥るのか、そんなことは予言者でなければわかりません。しかしながら日本はそろそろ、一か八かギャンブルに出るしかない状況に追い込まれてきています。
だからぼくも、念のためハイパーインフレに備えておきたいのですが、残念ながらぼくのような持たざる者は備えようにも備えられません。ハイパーインフレというのは、よほどの富豪は別にして、防衛策など立てるだけムダだからです。ハイパーインフレで勝ち組になれる投資は、武器を集めて武装集団を組織するくらいしか思いつきません。