2011年11月05日

米韓FTAは不平等条約か?

TPP反対の根拠として、10月に合意した米韓FTAの例をあげる人がいます。日経の記事によれば、

米韓FTAが発効してもすぐには関税率が下がらない。乗用車は韓国側が主張した「関税の即時撤廃」が「5年後撤廃」になり、商用車については「米側は10年目に撤廃。韓国側は現行10%の関税を即時撤廃」にまで押し戻された。

しかも、米側には「自動車に限定したセーフガード(緊急輸入制限)条項」が付いた。米国車に対し韓国国内で協定違反があった場合、「米側は韓国メーカーに関税を2億ドル課することができる」決まりもある。

http://www.nikkei.com/biz/editorial/

とのことで、これを読んだ人の多くは、「なんという不平等条約」「TPPもこれと同じだ」とあきれているようです。

たしかにこの部分だけ見ると、アメリカに都合のよい不平等条約です。しかしFTAで取り決めたのは自動車の輸出入についてだけではありません。

たとえばコメはFTAの除外項目ですし、牛肉の関税撤廃は発効から15年後です。また、ケブラーなどの繊維分野は明確に韓国有利で、アメリカは即時関税撤廃なのに対して、韓国は5年間関税を維持できます。ただでさえ衰弱しているアメリカの繊維業は壊滅的な打撃を受けるといわれています。

というように、全体として見れば、米韓FTAを一方的にアメリカ有利な不平等条約と呼ぶことはできません。だいたい自動車のアメリカ有利の条項にしても、現状として年間80万台の韓国車を買うアメリカに対して、韓国はアメ車を4千台しか買っておらず、そもそも韓国の年間新車販売台数は150万台にすぎないことを思えば、この程度の不平等条項はほとんどなんの効力も持ちません。

前回も書きましたが、米韓FTAはアメリカの民主党支持者の間でとても評判が悪く、十数万の職が失われるとも算出されています。オバマ大統領は、こういう条項を入れることで労組の気持ちをどうにかなだめ、まるで隠れるかのように協定にサインしたわけです(NAFTA以来16年ぶりの大型FTA締結にもかかわらず、ホワイトハウスは報道をトーンダウンさせたのです)。

オバマ大統領はもともと自由貿易協定には反対で、就任当初は米韓FTAもTPPも保留項目とし、NAFTAでさえ大幅見直しすると息巻いていました。ところが2009年の暮れから2010年にかけて大きくスタンスを変えて、なりふり構わず各国に自由貿易協定を提案し始めました。

不平等条約でアメリカを利するためではありません。そうすることを断念したからです。そんなことをしていたら、中国に交易パートナーをとられて、経済的、政治的にアメリカは大損害を被ると気づいたからです。

それはともかく、米韓FTAに話を戻すと、あれで一番大笑いしているのはアメリカ人ではなく、ヒュンダイとサムスンをはじめとする韓国企業であることは確かです。早急に経済ブロックを固めたいアメリカの弱みをついて、うまいタイミングで協定を結んだものだと感心します。

アメリカとの間に関税障壁をなくせば、競合する日本企業は早々に駆逐されてしまうに違いありません。日本政府が何もしなければ、ヒュンダイがトヨタを抜くのは時間の問題です。

韓国は小さな国ですが、普通の国ではありません。ヴォルテール風に言うなら、「ヒュンダイとサムスンは韓国の企業ではなく、国土を持つ企業なのだ」というところです。そんな国に暮らす韓国人を幸せだとは思いませんし、真似をすべきとも思いません。しかし日本の隣には現実としてヒュンダイ=サムスン二重帝国があり、日本の製造業と競合しているのです。

真にこの国の将来を憂うのであれば、米韓FTAは重箱の隅をつついて笑うネタではありません。競合する日本企業を駆逐して、世界に冠たる地位を確固たるものにしようとする韓国企業と、中国を叩き落とすために大きな一歩を踏み出したアメリカの、「肉を切らせて骨を切る」態度に衝撃を受けるべきテーマなのです。

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