2011年12月06日

資本主義の生みの親

前回のエントリーでぼくは、19世紀から20世紀のトレンドを、「製品化のトレンド」とか「製品化の波」という言葉で表現しましたが、通常この現象は「資本主義」と呼ばれます。しかし、インターネットにより破壊されるシステムとして資本主義という言葉を使うと、微妙ではあるけれども決定的にニュアンスが違う気がして、あえてその言葉を使うのを避けました。

この違和感はどこから来るのだろうと思い、資本主義という言葉の由来を調べてみました。すると謎はすぐに解けました。

資本主義という言葉を世の中に広めたのは、マルクスです。capitalist とか capitalism という言葉はそれ以前から時おり使われていましたが、その定義は曖昧でした。現代の使用法と同じ意味で使用し、それを固定したのは、1867年に出版された「資本論」であり、資本主義という言葉は、「資本論」の翻訳を通じて各国に伝搬したのです。

国会図書館の電子ライブラリーで調べると、資本主義という言葉を使用した日本で最も古い書籍は明治39年(1906年)出版で、それすら、「資本(本位)主義」という表現であり、資本主義という語彙のなじみのなさを伺わせます。以降、資本主義という言葉はたくさんの本で使われていくことになりますが、戦前から戦後にかけて、そのほぼすべては、階級闘争の観点から共産主義と対で語られたものです。

18世紀の思想家アダム・スミスのことを、よく「資本主義の父」などと呼んだりしますが、スミスは資本主義など知りませんでした。資本主義を発見したのはマルクスであり、共産主義により克服されることを運命づけられた概念なのです。

だから資本主義を壊すなどと言うと、浮かんでくるのはその対義語としての共産主義です。今ある経済システムを資本主義と定義したら最後、共産主義の世界観にとらわれてしまうのです。20世紀初頭にはすでに時代遅れな思想と見られていたにもかかわらず、今日までも影響力を持ち続ける共産主義の力の源は、共産主義思想自体の魅力というよりも、資本主義を発見したことにあるのかもしれません。

言葉というのは、このように非常に強力な力を持つのです。

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