それはともかく、ステマはウザいです。ユーチューブで数千万ビューを稼ぐKポップアーティストを見るたびに、哀れみを感じるとともに、なんとか掃除する方法はないかとため息が出ます。でも、根絶する方法はありません。各サイトがいくら警戒しても、ステマ業者はウラをかいて、対症療法にしかなりません。
結局ステマをなくすには、その大元である、モノを売りたい側、ステマ業者に発注する側に、マーケティング・リテラシーとでもいうものを身につけてもらうしかないのだと思います
どういうことかというと、ステマというのは、バレたときの反動が極めて大きい、愚策中の愚策だということです。今回の食べログの件でも、ステマ業者に発注した店は、もし店名が表に出たなら、廃業は必至です。それまでコツコツと築いてきた客の信頼を、瞬時にして半永久的に失うことになりかねないステマは、万が一バレたときのリスクを考えると、とても割りに合わないのです。
一昔前なら、お店の経営者にできる広告展開は、せいぜいチラシとかサービス券の配布くらいで、マーケティングに関するリテラシーはそれほど必要ありませんでした。しかし今は違います。いかに小さな店の主でも、ネットを利用するのであれば、宣伝の基礎を知り、客の信頼を裏切る破滅的宣伝をしないように気をつけ、悪徳業者にそそのかされないようにしなければならないのです。
ぼくがレストランのオーナーだとするなら、いくら食べログのランクをあげるのが至上命令だとしても、絶対にステマ業者など使いません。自力であげるチャンスはいくらでもあるからです。
たとえば、ネットを通じて新メニューのテスターを募集します。何組かカップルでディナーに招待して、店主直々に新メニューとサービスについての意見を聞き、それを店の改善に取り入れると約束するのです。そうすれば、テスターのうちの何人かは、必ずやランキングサイトに投稿してくれるはずです。しかも、ステマ業者などにはおいそれとマネできない、情熱に溢れた推薦をしてくれるに違いありません。
これはホーソン効果という心理学の手法を使い、ザッと組み立ててみた宣伝方法です。ホーソン効果とは、人は自分の意見を重視されたり、特別なサービスを受けたりして、一般ピープルとは違う扱いをされると気分が良くなり、自分をそう扱う対象に親近感を抱き、その対象を喜ばせようと積極的に動くようになる、という心理効果です。
商品開発のテスターに選ばれた人が、報酬度外視で活動するようになるというのはよく見られる現象で、クチコミ宣伝に長けた近頃の広告屋の常套手段でもあります。これも広義にはステマといえますが、クチコミを広める当人は誰から要請されたわけではありませんし、店が実際に彼らの意見を取り入れれば、もはや広告の枠を超えたサービス向上の一環にもなるわけで、店も客も得をする「良いステマ」だと思います。
ツイッターにうかつな書き込みをして炎上する人が跡を絶ちませんが、それと同様に、悪質ステマをめぐる騒動は、情報を発信する側のリテラシー不足に起因する問題です。ネットの時代には、情報を送るときも、受けるとき同様に、それなりのリテラシーが必要とされるのです。面倒くさい時代ではあります。しかしネットは怖いと考えるのは誤りです。ネット登場以前は、あらゆる情報がすべてステマだったわけですから。