そもそも、はたして著作権は必要なのでしょうか?よく、「違法コピー」は万引きと同じだといわれたりします。しかし、それは詭弁です。スーパーでリンゴを盗めば、スーパーからリンゴがなくなりますが、いくら音楽をコピーしても、音楽は誰からも奪われません。
あるいはこんな主張もされます。「違法コピーが蔓延すると、クリエーターが稼げなくなり、創作活動する動機が失われ、文化産業の発展が妨げられる」。そういわれると、そんなものかなと思えます。しかし、実情はそうではありません。
たとえばAV業界。AVといえば、ネットに落ちているものの代表です。ほとんどあらゆるアダルトビデオが、乱立するエロビデオ共有サイトや、ファイル共有サイト、トレントなどでダウンロードできます。AVにももちろん著作権はありますが、もともと後ろめたい業界であるせいか、音楽、映画、テレビ業界のように堂々と著作権保護を訴えられず、また訴えたところで焼け石に水なので、ノーガード状態でやられまくりです。
しかし、そのせいでAV業界が衰退したようには見えません。それどころか、Internet Pornography Statistics によれば、AV業界は活況を呈しまくっています。たとえば、アメリカにおけるポルノビデオの発売本数は、ネットの普及とともに爆発的に伸びています。
また、ポルノ産業の各国収入を比べると、中国と韓国が他を圧倒していますが、中国と韓国といえば、言わずと知れた違法コピーのワイルドウエストです。違法ダウンロードでいくらでもタダで楽しめるというのに、そういう傾向が強ければ強いほど、なぜか男たちは懐をゆるめ、産業は潤うのです。
では、質はどうでしょうか?違法ダウンロードにより、AV業界は粗悪品の量産を強いられ、年々質が低下したりしているでしょうか?そうとは思えません。AVの質はひとえに女優の質で測られますが、聞くところによれば、最近のAV女優の質はとてつもなくレベルアップしています。
というように、著作権がないがしろにされて違法ダウンロードが蔓延しても、しっかりとカネはまわり、産業は発展するのです。これはなにも現代のポルノ産業だけについていえることではありません。歴史的に見ても、そういう実例はいくらでもあります。
たとえば19世紀のアメリカでは、外国人に著作権はありませんでした。19世紀中庸に活躍したディケンズのようなイギリス人作家の本は、著者に著作権料を支払うことなく、いくらでもコピーして販売できたのです。しかし、おかげでイギリス人作家は大損したのかといえば、そんなことはありませんでした。
アメリカの出版社は、ライバルに先駆けて出版するために、イギリス人作家に多額のフィーを支払ったのです。そのためイギリス人作家は、著作権で守られたイギリスでの出版よりも、アメリカでの出版でより儲けることになったといいます。アメリカの方が人口が多いからではありません。当時の人口は、両国とも同じくらいでした。
著作権がないために、安価なコピー本が出まわり、それが読者層を開拓し、著者の知名度をあげ、著者の収入アップにつながったのです。安価なコピー版が出まわっても、著者にフィーを支払った「正規版」はしっかり売れ、読者も出版社も著者も、みんなハッピーでした。
というわけで、著作権が侵害されると、文化産業が育たないというのは「神話」でしかありません。泥棒でもなく、文化産業を衰退させもしない違法コピーは、ならばなんのために駆逐されねばならないのでしょうか?著作権を柱に構築された利権構造を守るため、ただそれに尽きます。