2012年02月05日

ネットの暗部は、ネットにより作られたものではないということについて(2)

ネットで起きるたいていの炎上は、以前からマスメディアのバックステージで起きていた隠れ炎上や、リアルワールドで起きる摩擦の焼き直しでしかありません。しかしネットで起きる炎上には、「バブル化した情報つぶし」というユニークな傾向もあるように思います。

バブル化した情報とはなにかというと、実体としては10円の価値しかないのに、10万円の価値が与えられているような情報のことです。たとえば、「著名なコメンテーター」のコメントは、内容に関係なく、いきなり10万円の価値をもたされてネットの中に放たれます。それが「著名なコメンテーター」の名に恥じない内容なら問題はありません。しかし10円の価値しかないと判断されると、そのコメントは炎上のターゲットになります。

ネットというのは、情報を売り買いして価格を設定する、「情報の自由市場」という性格を持つので、不自然にバブル化した情報に敏感で、その膨らんだ価値をバーストさせようとするのです。もちろんそれは、「真の価値」などという高尚な概念とは何の関係もない、需要と供給の関係における価値のことです。

この範疇から外れるように見えるツイッターのおバカコメントによる炎上でさえ、よく考えてみれば、情報のバブルバーストという性格を帯びています。ツイッターの炎上はつねに、大学生にふさわしくない行為のツイート、A社の職員としてふさわしくない行為のツイートなど、社会的な期待値(表示価格)と言動(実体価格)が不一致なところに生じます。高校中退の無職がフリーダムな行為をツイートしても炎上は起きません。

現代社会において、最大のバブル情報供給組織は、テレビや新聞のマスメディアです。以前にも書いたように、マスメディアというのは、あまりに多くの人々にリーチしすぎるために、伝えるあらゆる情報がバブル化してしまい、適正な情報を伝えられないという欠陥を持ちます。

原発が危険だと伝えれば、1の危険は10の危険にふくらみ、安全だと伝えれば、1の安全は10の安全にふくらんでしまうので、ズバリものが言えない、言えばウソになるというジレンマを抱えているのです。

しかし、ズバリものを言わないと、刺激がないので視聴者/読者は離れてしまいます。だからマスメディアは、ときに世の中を狂わせる凶器となることも辞さずに、バブル化した情報を発信します。するとネットは牙を剥きます。

前回のエントリーで引用した津田氏は、炎上の例として、2006年頃に起きた亀田叩きを取り上げていました。あれなどはその典型的なケースです。テレビにより作られた人工的なハイプを、ネットは夢中で売り浴びせて暴落させようとし、上村愛子さんはそのコラテラル・ダメージを受けたのです。

マニフェスト詐欺団やKの国からの出稼ぎ、国民的ハンドシェーカーは、バブル化した情報の代表です。ここ数年のマスメディアは、バブル沈静化システムとしてのネットの反応をおりこんで情報発信しているようで、以前にもまして躊躇なくバブル化した情報をまき散らしているように見えます。

だからネットは年々とげとげしく、殺伐としていきます。「嫌韓」などは、マスメディアが燃料を注がなければ、遠に過去の遺物となっていたに違いありませんが、あいかわらず元気です。マスメディアが出した廃棄物の処理を負わされて、汚い、臭いと後ろ指をさされるネットは、ほんとうに都合のよいスケープゴートです。

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