シェーファー氏が主宰するゲーム制作会社「ダブルファイン・プロダクションズ」は、アメリカのクラウド型出資募集サイト「キックスターター」で、次のように出資者を募りました。
「大作ゲームを作るには大金が必要です。Xbox ライブアーケードのようなシンプルなゲームでも、200から300万ドルかかります。ディスクで売られるようなゲームになるとその10倍です。こうした大規模なプロジェクトを制作、宣伝、販売するために、ダブルファインのような制作スタジオは、パブリッシャー、投資会社、ローンに頼らなければなりません。そうした出資者は、資金を提供するかわりにゲーム制作に口をはさみ、ゲームを違う方向に歪めたり、制作をキャンセルに至らしめることさえあります」
「クラウドソースで寄付を募れば、消費者は自分が求めるゲームをサポートでき、制作スタジオはより実験的に、リスクを恐れず、誰にも妥協することなくゲームを作ることができます」
というわけで、40万ドルを目標にして入札を開始したところ、開始8時間で目標額を突破。2日目には140万ドルを超えてしまいました。キックスターターで100万ドルを超えたのは初めてのことだといいます。
入札締め切りまでまだ1ヶ月あるので、最終的にいくら集まるのか楽しみです。
さて、こうした「クラウドファンディング」サイトは、日本にもいくつかでき始めています。「CAMP FIRE」とか「READYFOR?」などがそれです。
こういうサービスはどうしても、「既存のやり方ではお金が集められないプロジェクトに可能性を提供する」という面が強調され、チャリティなどの社会貢献活動を助けるシステムというイメージをもたれがちです。しかし今回のような現象を見ていると、クラウドファンディングの本質はそこにはありません。
クラウドファンディングは、既存のやり方でも資金を集められるプロジェクトにこそ向いているのです。たとえば大きなファンベースを抱えるミュージシャンが、完成したアルバムの提供とコンサートの無料招待を引換にファンにアルバム制作資金を募れば、目もくらむ額が集まるのは確実です。
クラウドファンディングとは、「パブリッシャー、投資会社、ローン」というレガシー・ファンディングと競合する新しい資金調達方で、社会奉仕的性格はおまけにすぎないのです。
しかしそうなると、パイを食われることになるミドルマンたち、「パブリッシャー、投資会社、ローン」はおまんまの食い上げです。指をくわえて時代の変化を眺めるだけとはとても思えません。