2012年02月25日

脱原発に愛想を尽かすドイツ人たち

ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙を見ていたら、ドイツの連邦ネットワーク庁所長のインタビューが出ていました。連邦ネットワーク庁というのはインターネット関連の官庁ではなく、電力全般を統括する官庁です。

„Es wird zu früh Hurra gerufen“

インタビューは、この冬のドイツの電力事情を総括する内容です。日本の新聞の中には、この冬のドイツは原発大国のフランスに電力を輸出して、脱原発/自然エネルギーの有効性を示したと伝えるものもありました。(→脱原発でも電力輸出超過 再生エネルギー増加で)

ではドイツの監督省庁の見解はどうなのか?マティアス・クルト所長は、次のように述べています。

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…エネルギーシフトにのぞむにあたり、ドイツはここまでとてもよく対処しています。しかし、だから大丈夫と考えるのは早計です。厳しい冬を乗り越えた今だからこそ油断大敵で、気を引き締めてかからなければなければなりません。

…エネルギーシフトの成功を喜ぶのは少し早すぎます。まだドイツの電力のおよそ6分の1は原発によるものです。エネルギーシフトの本当の試練は、これらの原発を稼働停止しはじめてから始まるのです。われわれは、今後10年かけて大変な問題に取り組んでいかなくてはなりません。

…自然エネルギー施設の拡充方針に反対する人はいません。しかし問題は建設地の確保で、特に南ドイツでは不足しています。現在建設中の発電所では不十分なのです。すべての関係者には、この冬の経験を通じて新規建設の必要性を認識して欲しいと思います。

…今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです。

…極度の寒波とガス輸送の停滞により、予想を超えた困難に直面しました。…非常に逼迫した状況で、数日間は予備電力に頼らねばなりませんでした。万が一の場合もう後がないわけで、極めて異例な措置でした。

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すでにこのブログでも何度か伝えたように、ドイツは一時的にフランスに電力を輸出したものの、その後深刻な電力不足に見舞われていました。クルト氏は穏やかな口調で、日本では伏せられているその事実を認めています。

ではドイツの人たちは今回の電力危機をどう見ているのか?読者の支持が高いコメントをいくつか紹介します。

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◆エネルギーシフトの失敗は日毎に明らかになるばかりだ。ドイツの電力は限界で、電気代の値上がりもひどい。なにより雄弁に失敗を物語るのは、プロパガンディストがほんの小さな成功に大騒ぎして、プロジェクトの成功を声高に語るところだ。たまたま天気に恵まれて、ほんの少しフランスに輸出しただけだというのに。

◆私の知る限り、2011年にフランスから輸入した電力は約18000GWhで、輸出は140GWhだ。これは輸入超過なんてレベルではなく、130倍もの差だ。だがドイツの政治家とメディアは、エネルギーシフトに疑いを持たせる数字は語ろうとしない。

◆バイエルンではすでにエネルギーシフトは破綻している。原発の半分を停止したため、電力はチェコとオーストリアからの輸入頼み。州政府はガス発電所を建設しようとしているが、自然エネルギー優先政策のせいで採算が合わないとドイツ企業は撤退し、今はロシアのガスプロムと交渉中。外国頼りで不安だ。しかも新規発電所の稼働は残りの原発の稼働停止に間に合わないとくる。

◆エネルギーシフトなんていうのは、素人をその気にさせるためのコピーにすぎない。ドイツは輸出工業立国であり、安くて安定した電力はその命綱だ。ドイツの存亡に関わる重大な問題をエコロビーに任せるべきではない。プロの判断を仰ぐべきだ。

◆かつてのドイツは一流の電力産業と一流の原発を有し、安くて安全な電力を生み出していた。だが政治家のゲームに滅茶苦茶にされてしまった。本当の悪夢はこれからだ。

◆つい最近までエネルギーシフトを熱く語っていたやつらはどこに隠れたんだ?天候次第では停電してたんだから仕方ないか。巨額の税金をつぎこんだのに風力と太陽光発電は見込みの2割しか発電せず、そのくせ電気代は去年から2割増しだ。そろそろバカなことはやめるべき時だ。

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フランクフルター・アルゲマイネ紙はドイツを代表するセンターレフトの高級紙ですが、記事によれせられたコメントのほとんどは「反エネルギーシフト」でした。

ドイツでここまで反原発派が衰退している理由は、この冬の電力危機はもちろんですが、日本からのニュースの影響もあると感じます。

福島第一で事故が起きたとき、ドイツのマスコミは、チェルノブイリを凌駕する大事故としてセンセーショナルに伝え、それでエネルギーシフトを決めた経緯があります。ところがここまでのところ日本で犠牲者は出ていません。

もちろん放射能の最終的な影響は時間がたたないとわかりません。しかし、ドイツの国民に阿鼻叫喚の地獄絵図を描いて見せてしまった手前、今さら「影響はこれから」などと言説を変えてもオオカミ少年にしか見えないのです。

日本人に劣らず両極端に走りやすく、しかも一度決断するといやに迅速に行動するドイツ人のことですから、あるいは「ドイツ情勢は奇々怪々なり」ということもあるかもしれません。



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