最近、豚インフルエンザに関連して、「水際作戦」という言葉をよく耳にします。ウイルスの拡大を、日本国内に入る前に水際で止めようというわけです。空港では、メキシコからの便に対して厳重な検疫対策が取られているようです。
なるほど、伝染病の拡大を抑えるには、水際作戦に勝るものはないように見えます。上陸されてしまえばある程度の被害は避けられないし、根絶するのは困難になります。ならば敵が脆弱なうちに叩くというわけで、それが一番簡単かつ確実であるように思えます。しかしながら、伝染病も、戦争も、水際作戦ほど簡単そうでいてうまくいかないものはありません。
「水際の演説」と同様に、「上陸してきたら大西洋にたたき落とす!」と自信を見せていたドイツも、ノルマンディで大軍に上陸を許すなど、戦争で水際作戦が成功したのは、それこそ遙か昔の元寇くらいなような気がします。しかも神風の助けを借りて。
というように、滅多に成功しない水際作戦ですが、戦争における水際作戦でなにより特徴的なのは、上陸を許してしまうととてももろいということです。イタリアもドイツも、水際作戦に失敗したあとは、1年ともたずに白旗をあげています。敵を水際で止めるためには、長大な海岸線に大軍を貼り付けておかねばならず、そのため一度上陸を許してしまうと、敵の侵攻を食い止めるだけの予備兵力が不足し、いいようにやられてしまうのです。
もちろん、成功すればそれに越したことはない水際作戦のために海岸線に大軍を並べ、かついざというときのために十分な予備兵力も後方に温存しておければいいのですが、どんなに強大な国家でも、そこまでの余裕はありません。限られた予算、資源、マンパワーの中から優先順位をつけてやりくりせねばならず、だからこそ、「あっちを立てればこっちが立たず」で、水際作戦を優先して失敗してしまうともろいのです。
今回のインフルエンザ騒動で、政府はとてもよく仕事をしているように見えます。WHOによれば、「水際で止めることは不可能」だそうですが、それでも水際で止めるために大がかりな検疫体制をとり、かつ、上陸を許した後の対策も整えているようです。
どこかの国のニュースでは、サーモグラフィーによる発熱検査は何の意味もないということですし、たまたま見たロシアのニュースなどでは、「そもそもインフルエンザで毎年1万人以上死んでいるので、今回の件で大騒ぎするのは解せない。ワクチンの特許を持つアメリカの製薬会社の影を疑う声もある」などというひねた伝え方すらしていましたが、それでも、万が一に備えて出来る限りの手を打つのは立派な態度に違いありません。
第二次大戦で硫黄島の防衛を任された栗林中将は、米軍の上陸を水際で食い止めるのは不可能だと判断し、陣地を内陸に移して1日でも長く敵を釘付けにすることを目指し、その目標を果たしました。輝かしい勝利とはとても呼べませんが、限られたリソースに優先順位をつけて運用し、できるかぎりの効果を生んだ好例です。
栗林中将は名将といわれますが、彼と反対の態度を取る指揮官を愚将、あるいは凡将といいます。たぶん彼らは、中将と同じ立場におかれた場合、水際作戦を捨てきれず、こんな風に言うはずです。
「内陸の陣地に下がるのは勝利を捨てるのと同義。ほんのわずかでも可能性がある限り、水際での撃退に賭けるべき」。
絶望的な戦いに挑み、最後はバンザイ突撃で玉砕したりして、それもまた勇気ある立派な態度といえるのかもしれませんが、それだけです。
指揮官として究極の判断を強いられ、それを実行した栗林中将などに比べると、新型インフルエンザという敵の来襲に備える今の日本政府の指揮官たちは、水際作戦で敵の上陸をくじくことに全力を投入しつつ、かつ上陸を許した場合にも万全の体制で備えられるほどに無尽蔵のリソースを有する超裕福な超人集団なのかもしれません。
「今日こそ更新されているはず・・!」とwktkしながらここを訪れ、トボトボと引き返す毎日が続いていましたがやっと報われたぜ!
今後の活動に期待しつつ、今日はルンルン気分で帰ろうと思います。
また、気が向いたら更新して下さい。
今後もぽちぽち更新してください。
政府の対応は今のところまずまずではないでしょうか。
今回の本文で、いつもの逆説的な喩えが読み取れなかったので素直にコメントしてみました。。
しかしまあアレです。
めっちゃ久々の更新にちょっとコーフンしとります。
法律やらの足回りが遅い分、水際作戦にならざるを得ないだろうね。どんな法律ぶち上げてもセイケンコータイしか言わないデカい政党も居るし。
出来る限りのこととして、他にやりようがあるならそれを提示する人が現れてくれれば良し、それに応えない場合はおもっくそ叩いて良いとは思いますが。
今の医療体制では医者の数が足りません都心でも田舎でもね
国土が狭く交通も発達してるので被害にあわない人は過疎地に住んでる人だけでしょう
予備兵力などはなから無いも同然
検疫官すら足らないのですよ
横浜市長のような無能もいるしね
むろんマスコミを中心とした軽挙妄動は慎まねばなりませんな。
しかし、そもそもこういう事態を想定・研究することすら許さない阿呆が一定数いますからなあ…
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a171188.htm
ここから更に別の問題に対しても対策を広げられるなら優秀な知将と言えるかもしれません。
それと対新型インフルエンザでは水際を突破された場合にもワクチンの製造や直接病院へ行く前に電話で相談するように呼びかける等の対策をしています。
実際それ以上の対策はまだ難しいでしょう。
最大の問題は、新型インフルエンザが北米からだけと決め付け、中国という最大の脅威から目をそむけている事じゃないかと
感染者がでても発表しない事がある中国こそが最大の脅威なのです。
インフルエンザ、今回の騒動に?でしたが、うまく私の?を説明してもらったようでスッキリします。
これからも、更新たのしみにしています。
さて、豚インフルエンザですが、日本でまだ確認されていないのは、奇跡に近いと思っています。
また、ご指摘の水際対策の有効性についても、同感ですが、水際対策をしないわけにはいかないだろうし、難しいところだと思います。
今回は予行演習だと考えてます。
言う事を聞かない人もいて、その対応も含めて次の流行に備えたらと思います。
私自身ではありませんが、呼吸器関連の疾病で、インフルエンザどころか軽い風邪に罹っただけでもヤバイ者も少数ながら居るのです。何時かは罹患するでしょう。だが、それは予防接種が完備してからであって欲しいというのが切なる願いです。
今回は「水際作戦より遅滞防御を!」という提言に聞こえますが戦闘に例えるのは間違いと考えます。インフル感染に対する遅滞防御とは具体的に何なのでしょうか?
そもそも感染は戦闘とは根本的に異なるポイントが幾つかあります。それは感染を続けても敵(インフル)の戦力が全く消耗しないこと・・・寧ろ敵の戦力は増大するのです。有利な点もあります。感染が広がらなければ時間は人間に味方する・・・免疫やワクチンという援軍が来るのです。
ならば初期にリソースを集中し、水際作戦で(完璧ではなくても)感染範囲を極力広げずに時間を稼ぐのは理に適っていると思います。また、騒ぐことで一人一人の国民を用心深く神経質にすることこそ有効な遅滞防御にもなると考えます。
勿論、水際作戦をやるリソースをもっと有効活用する具体案があるなら別ですが
私には考え付きませんね。
インフルエンザよりもその後の対応の方が恐ろしいよ
症状も軽いし嫌がって病院に行かなくなるやつも出るんじゃないか
問題は水際作戦そのものよりも、国民に犠牲を冷静に受け止め、政府の闘いを支持する気概があるかでしょうね。
死亡者が出た途端、総理の責任を追及するマスゴミの姿が目に浮かびます。
さて、インフルも怖いですが、日本国内では南京事件に関するプロパガンダ戦争や、外国人参政権等の合法的間接侵略戦争が行われつつあります。
これらも水際で叩かねば、日本に未来は有り得ません。
ん・・?ン・・?どうやらOribeさんが言いたかったのは最後の数行に凝縮されているようですね・・・・それにしても硫黄島という離島、孤島での戦術を引き合いに出して現下の新型インフレエンザの対応を論ずるのには些か無理があると思います。戦争での水際作戦の失敗は、当然のこと、敵の後続部隊の上陸を許してしまうという致命的な失敗でしょう。だが、新型インフレエンザでの場合は、モグラたたきの失敗のようなもので、その都度、国内での対応を迫られるというもので、致命的な失敗ではないでしょう。もともと発症している人間は水際作戦で補足できても、潜伏期間の人間は、当然、補足できないことが前提でしょうから、戦時の水際作戦を引き合いに出して論じること自体が、失礼ながら、お門違いと言えるかと思います。いずれにしても今回のOribeさんの主張は、実に、傍観者的な立場からの論理展開にすぎないと思いました。
硫黄島の部分は、致命的な失敗というか、
水際作戦にこだわらず、状況に応じた最善の策をとるって話なのでは
要点がずれている気がします
>要点がずれている気がします
要点?「要点」ってのは、一般に、「大切な点」を意味しますが・・・・「論点」のことですか?ね・・・それに
>水際作戦にこだわらず、状況に応じた最善の策をとるって話なのでは
というほどに、現下の新型インフルエンザ対策が硬直したものだとは思えませんが・・・まず、水際で、それを抜けたものは国内での個別対応ってことで、至って柔軟な対応を行っているのではありませんか?ね・・・まあ、ケチをつけようと思えば、何とでも言えますがね。
有名なガリポリの戦いとか。
水際作戦にリソースをつぎ込みすぎるとさらに国内の体制整備が遅れてしまうというジレンマですね。
難しい選択を迫られる中で政府や官僚は頑張ってると思いますよ。
という行政の姿勢によって感染がより拡大する可能性がありますからね。
それよりも検査キットを大量生産・購入したり、
マスクを配布したりするなど、お金というリソースで考えるともっと幅広い使い道は確かにあると思います。
久々の更新嬉しかったです。
またちょくちょく書いてください〜
気づいたら更新されている!!!
無理をしないで、気の向いたときに更新をしていただけるとありがたいです。
私には世の中の見方について一番しっくり来るブログなので、ご健在なのを確認するだけでも嬉しいのです。。。
エントリに関しては、リソースに恵まれているのは純粋にいいことですよね。
脱線しますが。個人的には純粋な意味で権力(人に有無を言わせず言うことを聞かせるって意味で。)が大好きな人は、これからは公衆衛生か経済をやって、WHOかIMFに就職するのがいいんじゃないかと思ってますがね。
「日本が感染症対策の途上国である」
厚労省の新型インフルエンザ対策の欠陥を、木村もりよ医師に聞く
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10071/
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10071/
誰が水際対策で「感染者のすべてを発見することができる」などと言っていたのでしょうか?ね・・・・潜伏期間にあれば水際をスルーすることは容易に想像できると思うし・・・この医系技官は、国会でも証言していたが、少々おバカさんのように思う。