一方、日本よりも発症者が多いアメリカやヨーロッパでは、煽りを本業とする大衆紙でさえネタにならないと判断したようで、今や関連記事を探すのに苦労するほどです。
この温度差はどこから来ているのでしょうか?
「日本人は、他国人に比べて潔癖で、安全にこだわる性分だから」などといえば、今回の世界で突出した反応も理解できるような気がしてきます。
しかしそういう説には、たいした説得力はありません。
日本人が特別潔癖で伝染病に対して敏感であるならば、なぜ毎年1万人くらい死んでいる通常のインフルエンザをこれまでさほど気にせずに過ごしてきたのか?そして、毎年3万人あまりの発症者を出して、先進国中突出した結核大国のひとつに数えられて平然としているのか不思議です。
結核は、しばらく前に芸能人が発症してニュースになりましたが、とても恐ろしい伝染病です。昔とは違い不治の病でなくなったとはいえ、一度発症すれば10人に1人くらいの割合で命を奪われ、治療にも長い時間がかかります。また決して感染しにくい伝染病というわけではなく、インフルエンザ同様飛沫感染しますし、健康な保菌者からも感染する危険があり、そして日本には保菌者が何百万人もいて、街中をうろうろしているのです。
でも、たいていの日本人はそんなことを気にせず、デパ地下で試食品を食べ、パン屋でむき出しのパンを買い、回転寿司で流れてきた寿司を食い、ラーメン屋の窮屈なカウンターで見知らぬ他人と並んで麺をすすります。日本人が特別潔癖で伝染病に神経質なのであれば、ありえない習慣です。
また、感染の拡大を防ぐには「人ごみを避ける」のが一番なのはよく知られていて、今回日本人が感染を恐れてマスクの装着に固執するのは、日本が過密で人混みを避けられないからだともいわれていますが、それもおかしな話です。
日本は古来から伝染病のない無垢な国ではなく、結核はもちろん、数々のアウトブレークを何度も経験してきました。にもかかわらず都市への人口集中を見直そうともせず、各国に先駆けてフレックスタイム制を導入するようなこともなく、世界でも特異な満員電車による一斉通勤体制を構築し、それを何十年も放置してきたのです。むしろ伝染病に無神経な態度とさえいえます。
やはりこの国は、今回の件に対しておかしな反応を見せているのです。
その理由として考えられるのは、まず、担当大臣の「水際」をむやみに強調した方針立てです。水際という概念は、内と外、自と他を区別します。この手の伝染病を水際で止めることは、日本の交易レベルを考えれば、それこそ関西で発生したインフルエンザを水際で止めるというくらいに途方もない作業であるはずなのですが、状況をそう規定した上に、「国民が一丸となって協力をすれば、この目に見えない敵であるウィルスとの戦いに必ず勝てると思っていますので、是非オールジャパンで、全員の力を合わせてウィルスと戦いたい」などとナショナリズムに訴えることで、内と外、自と他の区別をより強調しました。
こうした構図の上では、海外に出かけて感染した人間は“非国民”になります。遊びで海外に行き、その後熱が出た人などは、非国民扱いを恐れてあえて当局に申請しない人も多いと想像します。
そしてマスコミ、とくにテレビです。
テレビというのは映像で伝える媒体ですが、実は伝染病を表現する映像は限られています。一目で伝染病を印象づけられる映像は、マスク姿くらいしかありません。だから誰もマスクをつけていなくても、マスク姿の人ばかりを探して収録し、伝えるレポーターもマスクをつけて、映像で語ろうとします。マスコミの中には当然、「こういう見せ方はパニックを煽るばかりでマイナスかもしれない」と感じる人はいますが、そういう疑問は、「マスク姿を見せつけることで大衆にマスク装着をすすめることはいいことのはず」という言い訳の前に思考停止してかき消されます。見ている方は、マスク姿しか印象に残らず心穏やかでありませんが、レポートの最後に、「みなさんくれぐれも冷静に。そして、正確な情報を得ることを心がけてください」とでも付け加えれば、テレビマン的には責任回避完了です。
こうしてマスクは、“安全な内”と“危険な外”を隔てる対インフル戦争の象徴となり、マスクをしない人もまた、非国民候補になります。各企業は、社員に感染者が出た場合の責任回避のために社員にマスクを配布したりしてマスクマンを大量生産し、これをまたテレビが伝えるというパニックの再生産。
巷ではマスク不足が深刻化しているという報道もありますが、こういう形で医療器具が不足したり、感染パニックで医療システムがパンクしたりすれば、インフルエンザ以外の病気に苦しむ人たちの命を危険にさらしかねません。マスク装着は完全に無意味ではなく、感染の広がりをいくらかでも抑える効果があるのに違いありませんが、みんなのためを思うのであれば、健康な人はあえてマスクをしない勇気も必要ではないかと愚考します。
とにかくマスコミというのは、「靖国」だの「南京」だの、一部のアジア諸国がかかわる歴史認識に関してはやたらとナショナリズムを警戒してみせますが、それは所詮ポーズだけで、エクスキューズさえあれば、大衆を惹き付ける偏狭な排外的態度を煽ることに躊躇しません。それは、マスコミの宿命であり本能です。
清潔好きだけれど神経質なまでに潔癖というわけではなく、自文化に対するプライドが高いけれど外の優れたものには寛容というように、何事にもガチガチでない柔軟さが、日本の強さだとぼくは思います。マスコミと、マスコミから生まれた大臣のコラボレーションにより引き起こされた今回の“メディアインフル”を通じて多くの人が免疫をつけ、居心地のいい日本が戻ってくることを切に願います。
まあ、熱しやすく冷めやすいとも言いますが。
しかしそれがマスコミの身勝手で独善的な正義感による煽りや誘導(場合によっては他国やある集団の意図)によるものって思うと、、、。もはや怒りとか怖さとかって感情は一巡してしまって、気持ちを表現する言葉が思いつきません、まったく。
“メディアインフル”への免疫を大方の人がつけた時には、もうメディアから報道の文字は消え、娯楽一色に染まっていることでしょう。
マスコミに釣られるほどみんなバカじゃない
でもマスコミはそれを許さない
なんだかなあ・・・
電車の中で咳すると物凄く痛いんだよ・・・・・・人の視線が。
零下30度のずるムケビーム光線だぜ。特に若い女、そして、オバサン。
無言で睨まれ立ち去られると心臓ナイフだよ。
車両を替わられた時にゃ、思わず「昭和ブルース」歌っちゃったよ。
別に間近に居る訳でなし、手で押さえたりしているのだが駄目だ。
まぁ、気持ちも良くわかる。咳一発で5m位は飛沫が飛ぶからな。
故に、せめてものエクスキューズがマスクなのだ。
そういう意味で今回の騒ぎは鬱陶しいのであるが、
近親者が呼吸器系の疾患を患っている者にとっては色々難しい。
このまま超スピードで全国展開されるのも困るし、元々深刻な事態に
なり得ない患者にタミフルを飲み尽くされるのもマズイ。
水際作戦である程度遅らせる事ができるかと思ったが残念だなあ。
ん・・?ン・・?「毎年1万くらい死んでいる」って日本のことでしょうか?確か、インフルエンザによる死者の数は平年は千人未満で推移しているが、多い年は数千人に達することがあったようですね。ただ、最近は、
> インフルエンザによる死亡については、直接の死因がインフルエンザではなく、肺炎等の他の疾患による場合は、死因別死亡数にはあらわれない。従って、WTOや厚生労働省では、超過死亡(excess death, excess mortality)の概念でインフルエンザによる死亡数を推計している。これは、インフルエンザが流行した年に通常年と比較して死亡者数が多くなった場合、それをインフルエンザによる死亡と見なす考え方である(具体的にはインフルエンザ以外の諸要因による死亡者数をベースラインとして推計して実際の死亡者数との差をインフルエンザによる超過死亡とする)。
>インフルエンザによる死者数の推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1955.html
・・・・ということで、「毎年1万人もの人がインフルエンザで死んでいる」というのは如何なものかと思います。それに従来のインフルエンザが比較的高齢者を直撃するのに対し、今般の新型インフルエンザは若者に多く感染者が出ているなど解明しなければならない点が多々あると思いますね・・・確かに結果を見てから、傍観者的に意見を述べるのなら、どうでも言えるとは思いますが・・・・。
うーむ、よく分かる(笑)
マスクの役割がウイルス対策じゃなくて、ヒステリー対策になっちゃってるんですよね。
今回の騒動を異常だなぁと、頭で冷静に理解している人は結構多いとは思うんですが、世俗で細々と生きている人間としては長いものには巻かれるしかないというのが現状でしょうね。
oribeさんの仰る通り、一人ひとりが日本人の国民性や物事の道理を理解して、踏みしめていく習慣を身に付けていかないと、この手の問題は解決しないでしょうなー。
マスコミは当てにならんので、このブログの更新再開は本当に心強い!
今回の騒ぎで、マスク等を備蓄する家庭も増えるだろうし、良い事だ。
政府の過剰と言えるほどの対応は、ぶっちゃけて言うとマスコミ対策に尽きると思います。
この状況で政府が冷静で、費用対効果高い対応をしてしまうと、マスコミから対応がなってないとか、危機感が足りないとか、危機管理が出来てないと朝から晩までこき下ろされ、政権交代が必要だと宣伝されてしまいます。
どっからどう見ても税金と人と時間の無駄遣いです。
しかし政権の維持という問題がある以上、政府にはこうするしかなかったと思います。
ですから、大臣が夜中や明け方に行った必要性を感じない記者会見とか、役に立っているようには見えない対策本部など、批判するのはちょっとかわいそうに思います。
万が一、従業員→客への感染があった場合、マスコミに袋叩きにされた上、それがグループ全体に波及したら・・・と想定しての事と思いますが、どこまでエスカレートしていくんでしょうね。
自分が感染らないより、感染を拡げない意味でマスクをする人がほとんどですし「健康なのにマスクは異常」とおっしゃる人もコレが鳥インフルだったら対応が変わるんでしょうし(笑
マスコミ的な反応という意味で、五十歩百歩な気がしますね。
政府の対応は鳥インフルの予行演習だと思えば問題点を洗い出すのにちょうど良かったと思います。
結果分かったのが政府よりも地方の対応の悪さでしょう。そういう「問題点」の所在を明らかにせず、何でも「政府が〜」って視点で片付ける人こそが結局事態を悪化させるんだろうなと思います。