2009年06月07日

モザイク

精神病院の様子を、患者にモザイクをかけることなしに描いたドキュメンタリー映画を撮影した、想田和弘さんが、モザイクについてこう語っています。

「モザイクをかけると患者とそうでない者の関係が固定化され、見てはいけない、触れてはいけないというタブーを拡大再生産するからです。さらに、モザイクをかけることは撮影される側ではなく、撮影する側を守るものだという認識を強く持っていました。出ている人の顔を隠せば、おどろおどろしいBGMを流して異星人のように描いても、責任を追及されない。モザイクは、制作者の被写体に対する責任の放棄であり、映像の自殺といってもいい」

精神科診療所の内部にカメラを入れた映画監督・想田和弘
http://www.cyzo.com/2009/06/post_2099.html


映像を作る仕事をしている人は、このコメントを暗記するまで復唱すべきです。

モザイクというのは、匿名の告発者などの顔を、映像をぼかしてわからなくする映像加工のことですが、昨今のテレビのモザイク病は本当にひどい。時には、街角からレポートするレポーターのまわりすべてにモザイクをかけたりして、平気でいるのです。

映し出せないものであるならば、そこからレポートするのはバカげていないか?映してもいい、別の画を探すべきではないのか?代替する映像が一切ないのであれば、映像作品として成立しないのでボツにすべきではないか?

こういう思考を経ずに安易にモザイクをかけるのは、モザイクをかけることを前提にして、撮影しているからです。モザイクそれ自体を、「見てはいけない、触れてはいけないというタブー」であることを視聴者にアピールして興味を引く小道具として利用しているのです。

ジャーナリズムというものに価値があるとするならば、それはタブーを壊していくことで、タブーを強化するような態度は、ジャーナリズムの自殺どころではありません。そんなのは、ただの人民束縛装置です。

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この記事へのコメント
モザイクだらけ、声は宇宙人加工の街頭レポート、気持ち悪いですね。
だけど自分個人はTV局のレポートに映るのは嫌で、街頭撮影があると進路変更するしインタビュアーにコメント求められても断ってきました。
TV局側が主張したい結論へ強引に導くための部品として編集加工するに違いないという不信感がある。

マスコミ業界を信頼しない人が増え、面倒なことは尽く避けようとするマスコミとの相互不信状態がモザイクだらけ画面ってことかな。
そんなもの誰が見たいんだろう・・・
Posted by ひよこ at 2009年06月07日 20:49
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