「欧州議会選、経済危機背景に中道右派勝利 極右政党も台頭」産経
「EU議会選、極右・極左政党が伸長…厳しい景気・雇用反映」読売
「欧州議会選、中道左派が退潮 政局流動化、統合に影」日経
極右政党の台頭は、実際のところあまり騒ぎ立てるほどのレベルではないと思うのですが、はっきりしているのは、左派勢力の衰退です。
イギリスでは、労働党が「過去100年で最大の敗北」というほどの壊滅的敗北を喫しましたし、同様にドイツ社民党も、戦後最悪の低得票率に沈みました。
もともと社民主義天国の欧州で、これはショッキングなことです。
しかも今は経済危機の最中です。「市場原理主義は終わりだ」「格差是正」「郵政民営化は失敗」などなど叫ばれ、欧州の社民主義を模範とする民主党が躍進し、与党の中でもそういう勢力が幅をきかす日本の現状を見るまでもなく、今回のような金融危機は、本来社民勢力に有利に働くはずなのです。
実際にイギリスの労働党は、もともと市場原理主義を導入しつつ福祉に力を入れるという「第3の道」を追求していたものの、金融危機に直面して先祖返りしつつあり、そうすることで有権者にアピールしていました。またドイツ社民党も、下の選挙ポスターでわかるように、金融危機を追い風にしようとしていました。
”金融ザメはFDP(自由主義政党)を選ぶ”
しかし結果は逆に出たのです。ドイツ社民党の幹部は、なぜここまで負けたのか理由がわからず、文字通り頭を抱えています。
その一方、ドイツにおいて大躍進したのは、自由主義を奉じる自民党(FDP)でした。ここ20年来で最高の支持を集めたFDPのヴェスターヴェレ党首は、新聞のインタビューにこんな風に答えています。
Q:新自由主義が否定されているというのに、新自由主義政党が高い支持率を集めるというのは、おかしな時代ですね?
「どこの政党のことを言っているんですか?」
Q:FDPのことです。
「新自由主義政党なんて知りません。どの政党も左傾化して社会主義的経済を指向するなか唯一異議を唱え、中産階級のための中道を目指し、行きすぎた強欲には反対している自由主義政党なら知っています」
Q:市場原理主義は欲に支配されたシステムでは?
「いいえ、どんな経済システムも欲に支配されています。ただ他の政党が目指している計画経済だと、欲は隠蔽されてしまうのです。それのほうが問題です」
Q:しかし、金融危機は市場経済の欠陥の現れではないのですか?
「それこそまさに国の失政です。アメリカは家を持てない人に家を与えようとし、ドイツは銀行に放漫経営を許しました。どちらも国の失政です。ぶよぶよに太った官僚システムが中産階級の首を絞め、銀行システムを破壊したのです」
Q:金融危機を前にしても信念は揺らいでいないようですね。
「それどころか、日々自由主義への確信を強くしています。今回の金融危機の最大の教訓は、国は管理者としても、銀行家としても失格だったということです・・・」
„Steinbrück hat ein Fiasko angerichtet“
インタビュアーの質問を見てもわかるように、ドイツも日本もマスコミの認識は変わりません。しかし、日本など問題にならないくらいに社民主義が定着している欧州で、結果はそうならなかったのです。
日本の政治家たちは、この“不可解な現象”についてよく考えてみるべきです。
大不況という点に限って見れば、金融・財政政策という
ごく当たり前の対策を上手く出来るかどうかだけが重要。
もっともユーロ統一通貨圏では両者とも限界がある。
もしその「新自由主義政党」が穏当なマクロ介入すら否定する
素朴なハイエク・シュムペーター主義者の集まりだったとしたら
有権者は最悪の選択をしたことになります。
欧州の人たちが小泉の構造改革を支持した日本人と同じような幻想を抱いているのかどうかは知りませんが。
不況対策を離れて言えば、EU圏内の国家が社民主義に固執するのは
市民が支持するかどうかとは関係なくそもそもナンセンスです。
EUは域内の自由化を理念とし、特にユーロ圏は域内流動化を絶対条件とする故。
EU圏においては独特のジレンマが存在するというべきでしょう。
ユーロに属していない英国は独自の金融政策が打てるという点で、
やや有利です。
まずひとつは欧州では「左翼政権は経済政策がヘタクソ」というイメージがあるからじゃないかな。。。って、本当にそういうイメージが現在もあるか確認した訳ではないですが、フランスでミッテランが最初に政権とって景気を悪化させた際に、そんなイメージが確立されたと何処かで呼んだ記憶があります。何分古い話なんで今は判らんですが。
次に、やはり左翼政権は移民に対して寛容な印象があるからではないかな。不況において最も切実なのは仕事の確保です。人間は生活費が得られれば良いってモンではない。苦しい時こそ、働くことで社会と繋がっていたいのです。故に、フクシをバラ撒いてくれる左翼政権よりも、自国民の職を守ってくれる保守政権を支持しているのだとするならば、正に「欧州人民侮りがたし」であります。
後、欧州マスコミですが、今回の金融危機で市場経済そのものを否定しているとしたら、なんと浅墓なことか。殆ど借金で投機とか、借金(債権)に投機なんてのは、まともな市場経済ではありません。市場経済のやり方を間違えたのなら、淡々とやり方を改めるべきなのです。市場経済に懲りたから社会主義に飛び付けば良いというものではありません。市場経済は諸人の「我欲」を肯定し、それによってバランスを保とうとするもの。公平無私の管理者を前提とするシステムよりも健全に思えるのです。