2009年06月24日

黄昏のテレビマン

とても今さら感がある記事ですが、

過酷な労働…辞めるAD 番組制作に支障も(産経新聞)

なぜADが辞めるのか、記事ではあれこれと分析していますが、その理由を何よりも雄弁に語るのは、次の一節です。

ADが定着しない背景について現代っ子気質を挙げる声は多い。制作会社「ネクサス」の池谷誠一社長は「自分が生まれてきた意味を探すライフワークとして仕事を見なくなった。働いていても自分の時間は欲しいし、好きなこともやりたい。自己実現の意味が違ってきている」と言う。


これは昭和60年くらいになされた発言でしょうか?会社のトップの認識がこれでは、ADが逃げるのもわかります。

1990年頃までのテレビ業界は、年々パイが大きくなっていく状況で、ADとして数年苦しみに耐え抜けば20代後半にはディレクターとして一本立ちでき、30代後半くらいでプロデューサーの肩書きがもらえ、あとは所属する制作会社の管理職になるなり、独立して会社をおこすなりというキャリアモデルがありました。

しかしそれはとうの昔、バブル景気が崩壊した1993年くらいに崩れたのです。

パイの拡大はストップし、管理職もプロデューサーの枠もパンパン。昇進の道を絶たれたディレクターの数ばかりが膨れあがり、ADは、できれば永久にADのままいて欲しいような存在になりました。

それでもしばらくはカラ景気の中もちこたえてきたのですが、ネットが映像の分野にまで及び始めた2004年頃になると、ついにパイの縮小が始まったのです。

すり切れたシャツを着て、「この仕事ツブシきかないからさ」とごちりながら屈辱的な仕事をさせられる50代の先輩ディレクターを眼前にしながら、「自分が生まれてきた意味を探すライフワークとして」仕事を見ることなどできるわけありません。

それでも若いADの中には、「未来がどんなに暗くても、才能とやる気で生き残ってやる!」という熱い人もいるでしょう。しかしそれは間違いです。パイが縮小する斜陽産業では、適者生存の競争原理は働きません。いや、働かないことはないのですが、斜陽産業における適者とは、才能とかそういうことではなく、純粋に政治力なのです。

ぼくはテレビ業界に思い残したことはありませんが、ひとつやってみたいことがあるとするなら、黄昏のテレビマンたちのドキュメンタリーです。それは、ワーキングプアの物語であり、ひとつの産業の終わりの物語であり、栄華を極めた帝国の崩壊の物語であり、20世紀の終わりを描く物語になるはずです。

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この記事へのコメント
ヒヤヒヤ
まったくその通りであります。
Posted by hiten at 2009年06月24日 18:41
崩壊物語の表側だけでお腹いっぱいですよ・・・
地デジとかコピーワンスとかB-CASとか・・・
Posted by neco at 2009年06月25日 00:56
>パイが縮小する斜陽産業では、適者生存の競争原理は働きません。いや、働かないことはないのですが、斜陽産業における適者とは、才能とかそういうことではなく、純粋に政治力なのです。

これはテレビ業界だけでなく、さまざまなところに見られます。たとえば私の属する大学など。
しかし、なぜ斜陽産業では、斜陽産業に限って、適者生存ではなく政治力だけがものがいうと言えるのか、その辺はどう説明されるでしょうか?
Posted by 質問 at 2009年06月25日 22:23
>>しかし、なぜ斜陽産業では、斜陽産業に限って、適者生存ではなく政治力だけがものがいうと言えるのか、その辺はどう説明されるでしょうか?

今の僻地の状況をみれば自ずと分かることだと思います。(ひょっとして東国原知事はその辺に気づいてしまったのかもしれません)
Posted by JFK at 2009年06月25日 23:02
テレビを叩いて今日もメシがウマイ!という時もあるのですが、最近は純粋に、面白いテレビが見たいなぁと思うようになりました。

外人に「何?ww日本のテレビはこんなレベルなの?wwワラワラww」
と言われると、ものすごーく腹が立つ自分がいるので^^

黄昏た才能あるテレビマンは今何をしているんでしょうか。IKEAで店員に絡んでいたりするんでしょうか

だとしたらもったいない!
僕も日本のテレビ業界には何も期待していませんが、テレビにはまだまだ期待していますよ、oribeさん。
Posted by ムームー at 2009年06月26日 19:35
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