2010年01月26日

怖い話

いろいろな意味で怖い話です。

先日IPCCは、2007年の報告書でなされた「ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する」という記述の誤りを認めましたが、その背景が明らかになってきました。

Glacier scientist: I knew data hadn't been verified

報告書の執筆者の一人、ムラリ・ラル博士は、誤ったデータを載せた理由をこう述べています。

We thought that if we can highlight it, it will impact policy-makers and politicians and encourage them to take some concrete action.

そこを強調すれば、政治を動かせると思ったから

怖いですね。こういう話が出てくるのは、クライメート事件に次いで2度目です。科学と政治、そして、目的は手段を正当化するという態度の合体は、劇薬です。

しかし、博士の立場になって考えてみれば、そう驚くことでもないのかもしれません。当たり前のことですが、科学者もまた、邪な欲に溢れた人間です。研究費をたくさんもらいたいとか、社会的に認められて仰ぎ見られたいとか、自分の考える方向に世の中を動かしたいとか、そういう欲と無縁でいられるわけはありません。自分に都合のいいようにデータを改ざんしたり、大げさにアピールしたくなる気持はよくわかります。それは誰でも、日々実行していることです。

ラル博士の話を続けます。

Dr Lal said: ‘We knew the WWF report with the 2035 date was “grey literature” [material not published in a peer-reviewed journal]. But it was never picked up by any of the authors in our working group, nor by any of the more than 500 external reviewers, by the governments to which it was sent, or by the final IPCC review editors.’

元データの怪しさは承知していた。でも、執筆グループの仲間も、500人を越える外部の査読者も、草案を送付した各国政府も、IPCCの最終査読者も、それを指摘しなかった。

これはかなり怖いです。一流の頭脳を持ち、クリティカルシンキングを身につけた一流の科学者であるはずの人たち、さらに各国のエリート官僚たちまでもが、誰一人として初歩的なエセ科学に気づかなかったのです。こうなると科学というより、人間の無力さを感じてしまいます。

しかしこれとて、よく考えてみれば仕方のない所があります。何しろ彼らはみな同じ穴の狢です。科学者連中はもちろん、温暖化対策の名のもとに、社会に対してより大きな影響力を行使する大義名分を得る官僚と政治家たちに、温暖化論を疑う動機はありません。

同じ利益グループに属す人たちにいくらチェックさせた所で、所詮人間には見たい物しか見えません。彼らは知性溢れる有能な人々かもしれませんが、無我で無謬な超人ではないのです。

だから欧米のジャーナリズムには、温暖化派からいかにコケにされようと、温暖化論に批判的な声が絶えることはありませんでした。権威ある学者の主張だからと鵜呑みにせず、独自にデータの再検証をし、温暖化論に懐疑的な専門化にも発言の場を与えてきました。そして今こうして、科学者たちの間違いにチェックを入れることができたのです。

それに比べてこの国のマスコミは、何を根拠にヒマラヤ氷河の消失を大々的に報じていたのでしょうか?「偉い人たちがそう言ったから」というのであれば、それはジャーナリズムではありません。この事件の展開を見ていて一番のホラーはここです。

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この記事へのコメント
人より目立ちたい、人の耳目を集めたいと言うのは、洋の東西を問わず、という事ですね。
もっとも日本の場合はマスコミが集団で、ヒステリックにあっちだこっちだと煽りまくってるから手に負えないというか。
だからこの件もあまり大きく、と言うかクライメート事件のように、ほぼ黙殺されてしまうのでしょう。
こういうのは、やがてファシズム(のようなもの)にまで流れ着いて行くのでしょうか?
ああ、嫌な流れだ。
Posted by ナナシー at 2010年01月26日 17:19
ネトウヨが賞賛する昔の日本人は、本当に「右に倣え」だったからなぁ。マスコミはいまだにその全体主義的な精神を引きずっているわけだが。
まぁ日本でも若い人は、主に関西のお笑いの影響下で、「つっこみ」の精神を身につけているからいいよな。今後は変わっていくでしょう。
Posted by ぽ at 2010年01月26日 21:07
偉い人たちがそう言ったから。それだけで煽ったなどと信じたり考えたりする人がどれほど大勢いるかはわかりませんが目くらましをして日本にエコ意識を浸透させたいのは第一に金のためですよね。
欧米のジャーナリズムより劣る、まったくもっておっしゃる通りです。
排出権取引の市場ですから日本の金をせしめるために日本を責め日本人を罠にはめようとする卑劣さにおいてもまったく日本は叶いません。
Posted by take at 2010年01月26日 21:40
温暖化否定論者の動機については、考えが
及ばないのでしょうか。権威を鵜呑みにしない
慎重さがあるならば、その権威を否定する
サイドにも同様な疑いの目を向けるべきなの
では。

決着がついてないのでなんとも言えませんが、
温暖化で得をする人間もいれば、同様に温暖化
の否定で得をする人間もいるはず。

Posted by mikhail b sokolov at 2010年01月26日 23:11
科学者、あるいは理系と言い換えても良いですが人なんですよね、まぁ昔からよくある話なのかもしれないですがね。

そもそもおかしいんですよね。

仮に二酸化炭素が原因で(あくまで仮に)温暖化するとして、メリットとデメリットを比較してそれはトータルとしてどうなんだと?

デメリットが大きいとして、温暖化を防止する方法で何がベスト(技術的に&コスト的に)なのか?

そして短期・中期・長期で何を行うべきか?(当然手法も変わるはずなのですが…)

と言う部分がスッポリ抜けてるんですよねぇ。

既に科学の領域ではないので、これ以上は私には解りかねますなぁ
Posted by 月下獨酌 at 2010年01月27日 00:14
>ネトウヨが賞賛する昔の日本人は、本当に「右に倣え」だったからなぁ。
あらら、ついに民主に投票した人までネトウヨになっちゃったか・・・
Posted by ふとん at 2010年01月27日 07:40
ふとんさんに一票。

「ネトウヨの仕業」のレッテル張りも
いい加減にしてほしい。

Posted by kao at 2010年01月27日 11:45
確かNHKで一回見ましたよ。朝。 他は知りませんけど。
日本のマスゴミはあんまり取り上げている感じはしませんね。
エコエコ詐欺は2,3年前から気付いているのでやってません。 省エネはしますけど。
まあ知人に引っかかっているのがいますが、それも勉強だと思っています。 何時気付くか知りませんが。
Posted by その他 at 2010年01月27日 19:56
それでもエコエコ利権や思惑のある個人団体などのによって現在の進められてる排出量25%削減や排出量取引などが止まる事は無いんだろうな。
Posted by ウォースパイト at 2010年01月28日 00:52
つっこみは『精神』ではなく単なる型です。ボケにたいしてつっこむとおもしろいという方程式。
ボケのないところでつっこんでばかりいる人がいるとしたらそれはただのあまのじゃくです。

でもあえてこのつたないたとえにのっかるとしましょう。
つっこみというのは、ボケのどこが違っていて何が正しかったのか、ということを明確に指摘しなければいけません。そうしないとボケとつっこみの方程式は成立しないわけですね。

「ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する」がボケだったと仮定しますと、つっこむ側(曰く『日本の若い人』)はどこが間違っていて何が正しいのかを明確に指摘しなければつっこみとして成立しません。

ところが多くの『日本の若い人』が見ている日本のマスメディアには、このボケのどこが間違っているのかあるいは本当は何が正しいのかという「つっこみ材料」となる情報がほとんど存在しない。そもそも、「ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する」という話がボケだということすら気づかないでしょうし、また気づかれないような報道しかされていないわけです。

いくら『日本の若い人』がつっこみの精神(?)なるものを身につけていたとしても、こんな状況ではそれこそ科学者にでもならない限り、永遠につっこめません。

このような状況で『今後は変わっていくでしょう。』なんて楽観的にボケられても、こちらとしては思わず逆に「こんな状況でどうやってつっこんだらええねん」という突っ込みを入れたくなってしまいますね。
Posted by white at 2010年01月28日 12:21
「権威ある学者の主張」どころか、朝のワイドショーなどは(女性アナが)「国連事務総長に子供たちの絵を渡せた」「ゴアさんに会えた」と大騒ぎでした。
電波少年か?と思いましたが、こんな番組が同時間帯の年間視聴率1位なんですから。

COP15の高島彩
http://radiokids2010.blog28.fc2.com/blog-entry-190.html
>COP15って、なんかそんな感じなのか、と思っていた。ところが、BBCニュースを見ると、モルディブの大統領は演説しながら激怒し、各国間の協議は紛糾し、オバマや鳩山は駆けつけ、会場の外ではデモ隊が警察と衝突して暴動のようになっているではないか。こうした様子は水曜日くらいからBBCやCNNでずっと報道されているが、「めざまし」は黙殺。今朝は高島彩が「会議の行方はまだわからないですが、子供たちの絵を事務総長に渡すことはできました」とにっこり笑って最後の中継を締めくくっていた。大塚さんも「子供たちの絵を事務総長に渡すことはできました」とくぐもった声でバカのように繰り返し、満足げだった。
 めざまし的にはCOP15は大成功だったということか。
Posted by ミツ at 2010年01月28日 13:37
めざましに限らず馬鹿コメントを発する女子のアナウンサーは目立つが、その目立つポジションにわざと置かれているのも演出のうちで、ああいう番組に添えられた人間は局の台本に基づいて話している。
その台本を用意し指示するのは上の人間だ。その程度のアナウンサーを採用し、そのポジションに置く決定権を持つ偉い人たちが、しょせんその程度ということだ。
だれこれのレベルだの問題というよりそれを作り、全体をまとめ女子アナの馬鹿さ加減をみて溜飲をさげる、あなたのような視聴者を含め、その程度のクオリティでまわされているのが「めざまし」しかり日本のワイドショーニュースショーだということだ。

Posted by take at 2010年01月28日 14:16
takeさん
>ああいう番組に添えられた人間は局の台本に基づいて話している。

それは百も承知した上で
>朝のワイドショーなどは(女性アナが)「〜と大騒ぎ

と書いたのですが、かえって誤解を招いたようです。
Posted by ミツ at 2010年01月28日 15:53
関西の文化は元々権威に否定的で世の中の流れと逆方向の報道もあるんですよね。
最近は東京の情報過疎が進んでいるとか。
ネットが使えないと恐いですね。
Posted by きぅ at 2010年01月28日 16:26
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ヒマラヤの氷河は消えない
Excerpt: 取り上げようと思ってて忘れてた。地球温暖化に関するデータの捏造に関して先日のクライメイトゲート事件に続いてこんな話が。   怖い話...
Weblog: 人生は雨の日ばかりじゃない  Ver.2
Tracked: 2010-02-04 20:38
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