2010年12月25日

白船と日本のクリスマス

12月25日は言わずと知れたクリスマスです。

日本はキリスト教の国でもないのに、なんでクリスマスを祝うのかな?という疑問に対して、戦後アメリカの影響を受けたから、なんてよく言われますが、それは正確ではありません。

なるほど戦後の日本は、さまざまな分野でアメリカの影響を強く受けましたが、日本には、戦後に劣らず、というよりたぶんそれ以上の情熱でアメリカ文化を受け入れた時期がありました。

それは、1905年(明治38年)から1924年(大正13年)に至る20年間です。

アメリカ流のクリスマスはこの時期に日本に入り、上流階級から庶民へと、急速に広まりました。野球もこの時期に爆発的に普及しました。野球などというアメリカのエキゾチックスポーツを抱擁した国は日本だけですが、それだけでも、当時の日本に吹き荒れた「アメ流」の凄さが偲ばれるというものです。

ではなんでこの時期の日本はアメリカに惚れたのでしょうか?普通に考えれば、アメリカの方が文化が進んでいて、なおかつ日米関係が良好だったから、となります。しかしそうではありません。この時期の日米関係はむしろ険悪であり、のちの正面衝突の種は、すべてこの時期にまかれたのです。

両国はまず、日露戦争後の満州の権益をめぐって政治的に対立し、以降アメリカのアジア外交は、ひたすら日本を封じ込めることに注がれました。またその対立は、日本人移民への差別を引き起こしました。1906年のカリフォルニア州における日本人学童隔離に始まり、1924年のいわゆる「排日移民法」制定に到るまで、アメリカは日本人の神経を逆なでする行為をとり続けたのです。

このように、アメリカの日本を見る眼は、刻々と厳しさを増していました。それにもかかわらず、日本はアメ流ブームに沸いていたのです。そんなこの時期の日米関係を象徴する出来事は、1908年の「白船来航」です。

1907年の暮、アメリカは、国力を誇示するために、船体を白く塗装した大艦隊「グレート・ホワイト・フリート」を編成し、世界一周の親善航海に派遣しました。メインターゲットは日本です。明白な威嚇行為、砲艦外交でした。欧米では日米戦争の勃発を危惧する声まであがりました。横浜に上陸した白船艦隊の乗員たちは、沿道に繰り出した日本人たちの様子に、警戒の眼を向けていたといいます。表面上の歓迎ムードの裏に、「ズルガシコイ日本人」の本心を読み取ろうとしていたのです。両国の緊張関係を鑑みれば、アメリカ人たちの身構えは当然といえます。

しかし彼らは、日米の小旗を振る日本人たちの無邪気な笑顔に、強制や演技はもとより、一切の裏心めいたものを見つけることはできませんでした。世紀のイベントを見学しようと沿道に繰り出した日本人たちは、アメリカの軍人たちを、憧れの大スターであるかのように、心の底から歓迎していたのです。

その理由は単純です。日本の指導者層は、アメリカと対決することを恐れ、何としてでも友好関係を維持したいと望んでいたのです。だから、国民を刺激して両国関係をこれ以上こじらせるわけにはいかないと、日露戦争を契機に庶民にまで普及した新聞を通じて、アメリカ愛を吹き込んだのです。白船来航に際しては、各新聞は空前のアメリカ礼賛キャンペーンを張りました。上陸当日には、紙面に英語で「Welcome!」の見出しが踊りました。そして大衆は、半世紀前の黒船来航に比された歴史的な大イベントに酔い、クリスマスから野球まで、アメリカを抱きしめたのです。

その後の歴史は言わずもがなです。大国クラブのメンバーとして国際社会を生き抜くには、ただ友好を唱えていればなんとかなるものではありません。1924年の排日移民法の制定に際して、日本の識者たちは「裏切られた!」と叫びました。まるで、愛すれば愛してもらえると信じる夢見る乙女です。これを機にアメ流は退潮し始め、しばらくすると日本人は、今度は闇雲にアメリカを憎むようになるのでした。

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日本のクリスマスの背景には、こうした苦い歴史も隠されているのです。

最後に、その治世を通じてアメリカ文化を取り入れ続けた大正天皇は、大正15年12月25日に崩御しました。翌年からその日は祭日となり、年々反米の声が高まる中、つかの間ではありますが、日本にクリスマスを広める後押しをしたのは、不思議なめぐり合わせです。また、日本において24日のイブの方をクリスマスの本番ととる傾向は、25日が大正天皇の命日であることの名残りとも言われています。

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この記事へのコメント
このお話は、最近のテレビの「韓流」や民主党などの中国ひいきを連想させますね。怖いですね。
 なんとか 一方的、無条件ではないやり方、対等なお互い様な関係を相互に作っていく方向にならんものでしょうかねぇ。
Posted by Boa Field at 2011年01月04日 03:08
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