この遅れの意味を、American Thinker のトーマス・リフソンさんが解説しています。ヨーロッパ型経営の代表選手であるエアバスに何が起きているのか?かつて自由主義者の見地から日本バッシャーを一笑に付したリフソンさんのコラムは、日本の進むべき道を考える上で示唆に富んでいます。

「ヨーロッパの希望」A380
官僚を大量に創出し、規制と助成金を連発して官民一体の計画経済を進めるEUのやり方は、もともとアメリカのみならず、世界の自由主義者から批判されてきました。A380という夢の旅客機は、EUの官僚大国化が進んだ2000年以降に開発された、そうした新しいヨーロッパの象徴です。
A380のお披露目に際して、シュレーダー独首相(当時)が、「古き良きヨーロッパがこれを可能にしたのだ」とアメリカを揶揄する演説をしたことは、エアバス社の経営構造、A380の開発自体が、アメリカ的な自由経済へのアンチテーゼだったことを伺わせます。
国家の経営参加と助成金による経営は、エアバス社の目を市場だけでなく、政治に向けさせた。利益を追求するだけでなく、公共の利益と従業員の福祉に力を入れるエアバスは、しばしばヨーロッパ型の「社会事業」と呼ばれてきた。
しかしそれは、事業として明白に失敗しました。度重なる一方的な納入延期により生じる多額の賠償と信用低下を、技術革新のための代価と正当化するのは欺瞞に過ぎません。
もちろんエアバスは、事業のスリム化を進めて損失の穴埋めをしようとしています。具体的には、フランスのトゥールーズとドイツのハンブルクにある欧州の二大拠点を整理統合し、中国か、アメリカのアラバマ州に建設中の工場に生産を振り分ければ、年に数千億円のコスト削減になるといいます。しかしその避けがたい改革に着手すれば、エアバスの存在意義そのものを自己否定することになります。
トゥールーズとハンブルクの拠点は、それぞれ1万人を超える従業員を雇用しています。そのひとつを閉鎖するということは、言うまでもなく地域経済に大打撃を与えます。そしてエアバスの本社であるトゥールーズの閉鎖は考えられません。フランスは絶対にそれを許しません。となれば犠牲になるのはハンブルクしかありません。ドイツからすれば、「欧州共同の家なんて言っておいて、困ったら結局自分の利益優先かよ!」というわけです。欧州統合の象徴が、欧州分裂の象徴に転じかねません。というわけで、エアバスをエアバスとして保持していくために、落ち着く先は恐らくひとつです。
ハンブルクの事業所を閉鎖して製造拠点を中国かアラバマに移すという計画は、国の援助を引き出すための脅しかもしれない。顧客に賠償し、A380の問題を解決し、ボーイング社の787ドリームライナーに対抗するA350を開発するために、エアバスは、生み出すかもしれない利益よりも多額の出費をすることになるだろう。
こうしてエアバスは、ヨーロッパ人の税金で支えられていくことになります。そして国から金を搾り取ることを覚えた企業は、市場を軽視し、一方で国の政策に左右され、より非効率化していくことになります。そもそもA380という革新的な旅客機の開発自体、国の援助を当てにしなければ推進できない、リスクを度外視した冒険でした。
A380は夢から悪夢へと変わった。それは経済の問題であるだけでなく外交問題であり、そして象徴的な意味を含んだ問題だ。A380の生産中止は考えられない。それはヨーロッパのメンツを傷つけるからだ。しかしこの計画はすでに何十億ユーロも予算をオーバーし、今も出口は見つからない。
考えられる最悪の事態は、問題を完全に解決しないまま引き渡すことだ。600人の乗客を乗せて墜落するなど洒落にもならない。そもそもこの計画を実行に移したこと自体桁外れな野心のなせる業だが、事故が起きれば、悪夢は桁外れな災害となる。
企業の利益だけでなく公共の利益を考え、技術革新をリードするという、誰から見てもバラ色のプロジェクトは、結局誰の利益にもならないお荷物になりつつあります。そしてそれが構造的な理由によるのであれば、品質の低下は避けられない必然です。事故という最悪の事態は、決してたちの悪い冗談とは言い切れません。
A380自体はすばらしい夢、チャレンジです。そして全体の利益を考えての経営も美しい志です。しかし、それが社会に甚大な損失をもたらし、その犠牲の上にしか成り立たないのであれば、それは資本家のどん欲さなど比較にならない悪質な欺瞞、犯罪とは言えないでしょうか?
船頭多くして船、山に登る
社会主義に近い社民主義がそれに陥り易いのは宿命でしょうが、EUを舞台とした国際的組織がそれに陥ったのが、悪夢と言える所以ですね。
単なる経済的失策だけでは治まりが付かず、国際的な問題にも発展しかねない事態は、当事者にとっては目も当てられない事態でしょう。
こういった事態を見るとやはり、様々な面でEUというのは性急過ぎた行いなのではないかと思ってしまいます。
現実を無視した甘美な理想を追うとどうなるか、日本にとっては色々な面で本当によい教訓でしょうね。
特定アジアに対する経済的、技術的、政治的、援助がそれです。
とある日本企業はODA事業を受注して稼ぐでしょうし、またある日本企業は、政治的援助の見返りに特定アジアの市場に対するアクセスを許されるでしょう、そしてそれらの取引の間に関係者はリベートを得るのでしょう。
(政治屋だけでなく、恐らく大企業の幹部等も)
しかし元をたどれば、全て日本国民が生み出した事物を、ロンダリングして特定の企業や個人、外国政府が山分けしているという構図になります。
書いててムナシクなってきました。
引き合いに出すものが全然違うと思いますが。
どっちかと言うと有明海干拓事業や四国本州連絡橋事業のように一度走り出したら止まらない、止まれないものの弊害かと。それの国際版。
船が山に登っても大赤字で飛行機が飛ばなくなっても、民間機軍用機に関わらず共同開発したがるのは欧州人の性なのでしょうか??
その分,ハワイ,サンフランシスコ,ヒースローなどの海外路線
をA380で入れれば,乗客はハッピーだと思う。
http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/747kai.html
かなり色合いは違いますが旧ソビエトのロケット開発を思い出しました。
リニアの事故も記憶に新しいところだし、欧州の輝かしい技術の粋がいつの間にやらこんなことに。。
非常にいい機体でしたが、セールスは惨憺たるものでしたね…。
MUTIさんご紹介のサイトにエアバス社とその周辺のレポートが
http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/taihen.html
下請けに日本企業がいくつも参入してるということで頑張って良いものを作ってほしいですが、もうグダグダですね
なぜ違う?
違うと思うなら、なぜ違うか書いてもらわないと理解できない。
不特定多数の人間の生産物を、受け取る資格の無い特定の人間が独占するという意味で同じと思うが?
もちろん、貴君が書いた事例も正しいとは思うが。
ハンドルネーム入れ忘れた。
正直ボーイングの一人勝ちは、不当な価格の吊り上げにつながるのでエアバスには頑張って欲しいんですが。
大丈夫なのか、ドイツの技術・・・
リニア事故:独政府、直後「安全」強調し不信感拡大
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/news/20060924k0000m030063000c.html
>しかし、費用が高いため政府や地元州の予算のめどがたっていない。トランスラピッドを開発した製鉄メーカー・ティッセンクルップ社は、利益の上がらないリニア事業に不満を募らせ今月、1年半以内に建設計画の決定がなければ、リニア技術を中国に売却すると表明。独政府に圧力をかけている。
まともに飛ぶ前から悲運の名機が決定してそうで、戦後欧州機のセオリー通りな気がします
at>さん
目に見える物と、見えない物の差だけの違いでは?
大きなプロジェクトは、やめ時を間違えると、
後が大変です。
ところで、近年のエアバスの好調を支えていたのは主に中国や中東のエアラインです。温家宝らがたびたびアメリカに見せつけるかのように得意気にエアバスの大量発注を発表してましたよね(ボ社からも買ってバランスを取ってるけど)。おかげで未曾有の大量バックログに対してエアバスの生産能力向上が追いつかず、それが製造現場に混乱を招き、皮肉にも今回のA380生産遅延となって一気に表面化した、という説もあります。
ボーイングもB787は史上初の全複合材製胴体という未知の要素があり、実際に就航し軌道に乗るまではまだ楽観視できません。B787がもしコケたら大変な事になります。とにかくエアバスvsボーイングの覇権争いは何か壮大な歴史絵巻を見るかのようで実に面白い。
787の複合材も、先立つ777の複合材の使用実績の良好さ、信頼性を買っての大量使用らしい。
まあ、これからどう転ぶかわからないけど。
(以上全てソースは2ch)
私は空港に勤務していますが,規制緩和された航空業界は,以前ほどの余裕はありません。
日本なら,JALのひどさは新聞等で報道されている以上です。
例えば,平成4〜5年頃のJALは,近距離(韓国路線など)でも,定員の半分乗ってくれば採算が取れると言っていました。
今は違います。人気のあるグアムやハワイ路線でも,定員の9割前後乗ってくれないと赤字だ言います。それだけ,一人当たりの単価が安いということです。関空では,ロスアンジェルス路線が10月から運行休止です。
600〜800人乗れるなら,運行コストが安いと言われても,それなりの人数が乗らないと赤字ですよ。大型機は投入出来る路線が限られるから。
航空会社も購入には慎重ではないでしょうか。飛んだはいいが,赤字の垂れ流しではね。
エアバスがA380の開発をスタートさせたとき、ボーイングは747を大型化する747Xをやるかどうかさんざん悩んだ末に断念した。このときは、ボーイングの終わりの始まりだと皆が思った。世界でエアバス1社になるのかと。
ボーイングはその後、ソニッククルーザーという眉唾の新世代機をでっち上げて進めようとしたんだけれど、マーケットリサーチの結果、今の787の開発へと進んで、今はこの前評判がものすごくよくて、上昇傾向にある。
いま、エアバスが叩かれているけれど、ついこの間までは逆だったんですよ。開発資金のかなりの部分ををEU各国政府が出しているってことで、ボーイングはずっとそれを避難してましたが、うまくまわってるときは誰もそれをとりあげたりはしないんですよね。
まあ、ボーイングにしても、開発パートナーの日本の分担金は政府が出したりしてますから、どっちもどっちなんですがね。
三菱やら戦前の航空機メーカーに首輪つけたと思ったら、
ホンダとか、また違うところから芽がでてくると言う…(笑
旅客機も待ち望まれるけど、F-3もまだかなぁ。
防衛庁技研と空自の先進技術検証機はとても萌える形状だった。
是非ホンダにエンジン作って欲しい。
車でも飛行機でもすごい頑張ってますよね。
さぁー、日本航空産業の復活なるか。
>一方で国の政策に左右され、より非効率化していく
これの小型縮小版はいくらでも身近に見られますね。
欧州統合を高らかに謳い上げたEUにしてからがこの惨状だというのに、
いわんや『東亜細亜共同体』においてをや。
その昔から理想論にうつつを抜かしたりしないイギリスはさすがです。
ウルトラライトジェットカテゴリーで善戦してくれることを祈りますが、カテゴリーの中では高めなので果たして販売が上手くいくかどうか予断を許しません。
特に、機体とエンジン両方が新規開発と言う所が難しい処です。ただ、これが売りになってもいるのですが...。(特にエンジンは既存エンジンより20%燃費が良いそうです。)
ヨーロッパの将来はどうなるのでしょう・・。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
実際の所、どうなるんでしょうかねえ・・・・。
ヒコーキだのロケットだのは妙にロマンをそそられるアイテムだし、これにのめりこむのが独仏ってのもなんか分るような気がします(偏見)
確かにでかいことはでかいのですが、技術的には特に目新しいことはないようですが。
何千人もの労働者を抱える英国内のエアバス工場の運命は?!ってとこですね。
EUの成立当時から、フランスの夢物語をドイツの金で尻拭いするという傾向が見られますが、このような関係が続けば欧州が不安定化しかねません。この記事を読んでもまだ「東アジア共同体」などとのたまう阿呆がいるんでしょうか?
仏原子力発電所から電力を買ってるのが問題ですけど。
フランス産業、ビニールのバックに単純なプリントをして
10倍以上で売るビジネスは成功してると思います。
滑走路の数などを節約できて、有用だと思う。
戦前の日本は陸軍と海軍という二つの国家内国家に引きずり回されて滅びましたが、欧州連合は仏独という二大巨頭によって滅びるのか。
でもこの二カ国+イタリア(要するに出発メンバー)以外の英、アイル、中欧は結構うまく行っているらしいですね。ドーナツ化現象?
つまりフランスにとっての欧州共同体は新手の賠償金だったと。
日本の隣国が支那と韓国で良かった、この二カ国は声は大きいけれど間が抜けている、英仏は狡猾ですから。
すでに1機当りの価格が日本円で100億に手が届きそうです。
ビックリドッキリメカを考えるのが楽しくて。。。
開発コストの高騰はなどんな物件でもあるはずです。
今までに無い物を開発するという事は、進めていくうちに今までに無い問題が出て、その分コストが上がるのは当然で、事前の見積もり通りに行くと考えるのは間違いです。
私自身、「設計する前にコストを見積もれ」なんて馬鹿な事を言われて絶句する毎日です。
預言者じゃないので、考える前に考えるにつれて出てくる問題を予想せよと言われてもね。
本音を言いましょう。
<< 新規開発の事前見積もりはドンブリ勘定です >>
ハイ。
良く言っても経験。
開発中に判明した問題点をクリアする為の追加コストが必要になります。
A380の遅延の理由は、能無しの私にはわかりません。
ただ、遅れて当然、遅れなかったら現場の技術者は良くやったなとは思います。
納期交渉のサバ読みにしくじったかな?
遅れを取り戻すために不眠不休になりますし、現場は地獄だろうなきっと。
その辺の見通しの甘さが出たんでしょうかA380。
他にも、贅沢な機内設備とかの宣伝をしてたりして、ズレてるような気もします。
巨人機のメリットって大きさから来る安いシートマイルコストじゃないの?(詰込みによるエコノミークラス症候群は勘弁ですが)
本来なら成功しても良さげなプロジェクトが、役所仕事の影響でピンチという話でしょうか。
こういうので1番怖いのは、安全コストを減らして損失補てんする事じゃないかな。
安全コストは利益を生まないからね。
こういう国策と絡んだ技術開発・競争史って面白いですね。
A380は果たして陽の目を見ることが出来ても、採算次第でコンコルドのような時代のあだ花になってしまうのでしょうか。
日本方式も当初は散々叩かれたんだけど……。