独の脱原発を笑ったフランス人がドイツから自然エネルギー輸入
グリーンなサイトの伝えることですから、こういう論調になるのは仕方ありません。だから注釈を入れておこうと思います。
たしかに今フランスはひどい電力危機で、ドイツをふくむ周辺国から電力をドカ買いしています。ドイツよりも温暖なフランスは、予期せぬ寒波の到来にパニック状態となり、電気暖房を主とするフランス家庭ががんがんエアコンをつけ、電気需要が予想を上回ってしまったのです。
日本でいえば、ドイツは北海道で、フランスは関東地方のようなものです。毎年零下10度を体験している地方が零下20度の寒波に襲われても想定内でしょうが、関東地方が零下15度にでもなれば、いろいろと問題が起きるのは当然です。原発とか自然エネルギーとかの問題ではないのです。
記事中にある「フランスの電力市場は1キロワット時あたり34セントと、ドイツ市場のほぼ3倍だ」というのは、電力のスポット価格のことで、電気料金のことではありません。電気使用量が過去最高を記録したフランスでスポット価格があがるのはあたり前で、ドイツの電気料金はフランスよりもずっと割高です。
さて、この記事で引用している「フォーカスオンライン」の元記事というのは、たぶん次の記事だと思います。
Trotz Eiseskälte exportiert Deutschland Strom(寒波にかかわらずドイツは電力を輸出)
このニュースは、ドイツでもかなり大きく伝えられたそうです。緑の党を中心とする左派のみならず、いまや政府の方針である脱原発はドイツの国是ですから、脱原発を肯定するようなニュースはファンファーレとともに伝えられる傾向があるのです。
ところがこの記事のコメント欄を見ると、下記のような書き込みがあることに気づきます。
本当?すでにオーストリアの2基の予備発電所を稼働し、さらにバーデン・ヴュルテンベルク州の予備発電所も稼働させたのに?
このコメントは嘘ではありません。脱原発を決めたドイツは、万が一の電力不足に備えて、いくつか予備発電所を持っているのですが、今回の寒波ではそれをすべて稼働させています。ドイツの電力が背水の陣であることは、いくつかの新聞が伝えています。
Deutschland vor Blackout(ドイツに停電の危機)
Deutschland muss Reservekraftwerke zuschalten(予備発電に頼るドイツ)
ところがこちらのニュースはあまり大きく伝えられず、とくにテレビはガン無視しているので、この報道に接したドイツ人たちは「フランスに輸出してるんじゃなかったの?どういうこと?」「フランスに輸出してると大騒ぎしといてこれとは、とんだギャグだな」と困惑し、あきれています。
今回の異常寒波では、フランスもドイツも電力が不足しており、独仏国境地帯で一時的にドイツからフランスに電力が輸出されたものの、ドイツはぜんぜん余裕ではないのです。
これウソ臭いなと思ってました。国境を越えて電力が行き交うEUにおいてこの価格差はおかしいなと。
それにしても日本とドイツとイタリアが反原発でアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国が推進。敗戦国が原発止めるのは奇遇なんですかね?
原発大国フランスの電力不足は今年に限った事ではありませんよ。
この数年、冬と夏は毎年のように電力不足でドイツなどから供給を受けており、
ドイツの脱原発で、電力不足を大きく不安視しているのはフランスの方です。
フランス 猛暑と干ばつで原発操業停止の恐れ 温暖化が原発利用能力を減らす 2005
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/nuclear/news/05071201.htm
海外エネルギー情報|学ぶ・知る・楽しむ|東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/pressroom/overseas/2010/100225-j.html
電力の輸出大国であるフランス(以下、仏)は2009年、電力不足により隣国からの輸入を大幅に増加させています。
仏、原発維持に巨額投資必要 会計検査院が報告書 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012020101000968.html
「これほど巨額の投資は実際には不可能とみられる」と指摘している。