2012年07月28日

マスメディア問題としてのオスプレイ騒動

沖縄、岩国へのオスプレイ配備をめぐり、オスプレイの危険性を訴える報道が過熱しているようです。「ようです」と書くのは、自分はテレビを見ないし、新聞も読まないからです。しかし、ウェブ上で見られる新聞報道や、テレビ視聴者の書き込みなどを見ると、オスプレイ・バッシングは相当なレベルのようです。

テレビと新聞を捨てた身からすると、なぜオスプレイが問題なのかまるでわかりません。なるほど試作段階で大きな事故が連続しました。しかしそれはあらゆる新型機についていえます。正規運用開始後にも何度か事故を起こしています。しかしそれもあらゆる軍用機について同じことがいえます。たとえば、1975年以降だけで次のような死亡事故を起こしている軍用機があります。

1977年5月   イスラエルで墜落、54人死亡。
1977年10月  フィリピンで墜落、31人死亡。
1983年4月   バージニア沖で墜落、1人死亡。
1984年3月   韓国で夜間訓練中に山に激突。29人死亡。
1984年6月   カリフォルニアで訓練中に事故、4人死亡。
1984年11月  ノースカロライナで 訓練中に爆発炎上、6人死亡。
1985年5月   日本海で墜落、17人死亡。
1985年7月   沖縄で訓練中に事故、4人死亡。
1985年8月   カリフォルニアで墜落、1人死亡。
1986年5月   カリフォルニアで墜落、4人死亡。
1987年1月   カリフォルニアで夜間訓練中に墜落、5人死亡。
1989年3月   韓国で訓練中に墜落炎上、22人死亡。
1990年5月   カリフォルニアで墜落、1人死亡。
1994年3月   カリフォルニアで着陸に失敗、1人死亡。
1995年6月   海自機が神奈川沖で墜落、8人死亡。
1996年5月   コネチカットで完成後の試運転で墜落、4人死亡。
1997年2月   イスラエルで2機の同型機が接触墜落、73人死亡。
2000年8月   テキサス沖で墜落、4人死亡。
2002年1月   アフガンで墜落、2人死亡。
2003年7月   シチリアで墜落、4人死亡。
2005年1月   イラクで墜落、31人死亡。
2006年2月   アデン沖で2機の同型機が接触墜落、10人死亡。
2008年1月   テキサス沖で墜落、3人死亡。
2011年3月   ハワイで墜落、1人死亡。
2012年1月   アフガンで墜落、6人死亡。

35年の間に300人以上の死者を出し、死亡事故以外にも重大な事故を数々起こしている機体は、CH53という大型ヘリコプターです。日本では2004年に沖縄国際大学に墜落して大きなニュースになりました。しかし当時CH53の危険性を指摘する報道は見られず、CH53は今も普通に日本の空を飛んでいます。

CH53の事故率(飛行時間10万時間あたりの重大事故回数)は、沖国大に墜落したD型が4.51で、改良型のE型が2.35だそうですが、その他の軍用ヘリコプターと大差ないのはもちろん、そもそも日本の民間ヘリコプターの事故率が3程度と見積もられていることからしても、特別高い値とはいえないのです。

ではオスプレイの事故はどの程度起きているのかといえば、1989年の試作機初飛行から今日までの死亡事故は7件で、計36人が死亡しています。2005年の配備開始以降の事故率は、海兵隊と空軍特殊部隊のデータを合わせて3.65で、オスプレイが置き換えるCH46ヘリコプターの事故率(1964年の運用開始から今日までの通算で5.74、1975年以降に限ると2.75)と大きく変わることはありません。日本に配備される海兵隊の機体に限れば、事故率は1.93とかなりの優等生です。

このように、とくに危険とはいえないオスプレイに対して、沖縄の活動家たちとその機関紙が騒ぐのはわかります。彼らには米軍にケチををつける権利があり、またそれが彼らの仕事なのですから。しかし、全国紙やNHKをはじめとするキー局が騒ぐのはなんとも奇妙に見えます。

よく言われるように、オスプレイの日本配備で一番困るのは中国ですから、中国のシンパ、または反米アジア主義者が報道機関に多く潜んでいるのは間違いありません。今回の一件は改めてその事実を明らかにしました。マスコミと軍に蔓延るアジア主義により破滅に導かれた戦前の失敗を繰り返さないためにも、彼らの情報操作には警戒しなければなりません。

しかし、マスコミがオスプレイの恐怖を煽る理由は、そうした工作員の策動だけではありません。オスプレイ問題は、イデオロギーとは別のレベルで、マスメディアというシステムの欠点をさらけ出しているのです。

それは、単純かつセンセーショナルなイメージで、世の中を語ろうとする性質です。

マスメディアとは、マスメディアというシステムによって生み出される「衆愚」を踊らせるための技の大系であり、新奇な機体であるオスプレイというネタをそこに放り込むと、ほとんど自動的に「オスプレイはアブナイ」という料理がでてきてしまうのです。

オスプレイの料理法は教科書通りで、「衆愚操作法」のお手本に使えるほどです。その手順は以下のとおりです。

1) 強烈なイメージを視聴者/読者の脳髄に叩きこむ。
   →オスプレイの場合、事故映像を見せたり、「未亡人製造機」というレッテルを貼り付けます。



上の映像は開発開始から間もない1991年の試作機の事故で、事故原因は整備ミス(配線のつなぎ間違え)と判明しています。従って今日のオスプレイとは何の関係もないのですが、イメージの刷り込みをするには十分です。

2) イメージを「自分の問題」として認識させる。
→今年起きた2件の事故を紹介します。

「未亡人製造機」と呼ばれた試作機時代のオスプレイと、今日のオスプレイは似て非なるものですが、そんなことは関係ありません。並列して紹介することで、視聴者/読者の頭には、コントロール不能に陥った1991年のオスプレイが、今まさに自分の頭上を飛ぼうとしているように認識されます。

3) イメージを数字で補強する。
   →オスプレイの事故率の高さを印象づけるデータを紹介します。例えばー

沖縄への配備が予定される米軍の新型輸送機オスプレイに関連する事故が、量産決定後の2006〜11年の5年間に58件起きていたことが米軍の資料で分かった。


事故率というのは、飛行時間10万時間あたりの重大事故(クラスA事故)の発生頻度ですが、それだとオスプレイの凶悪さを裏付ける上で説得力を欠くので、クラスB、クラスCという軽度の事故を含めた数字を合わせて事故数を水増ししています。

しかし、軽度の事故はどの機体でもそれなりに起きます。朝日新聞があげた数字は、海兵隊と空軍両者の数字を足したもので、合わせて通算飛行時間は14万時間ほどです。航空事故の統計はたいていクラスAのみをもととしているので、クラスBやクラスCのデータはあまり出てこないのですが、たとえばアメリカの沿岸警備隊の主力ヘリコプターHH65は、2010年の1年間で5万5千時間飛行して、A〜C合わせて18件の事故を起こしています。14万時間飛んだとすると、事故件数は約46回。この数字とオスプレイを比べて、騒ぐほど多いと言えるのかは微妙なところです。

なお、空軍の報告書によると、オスプレイのクラスC事故のほとんどは、この映像のようなランディングギアの不具合であるようです(このケースでは車輪カバーがぐらぐらしているのがわかります)。政府と近隣自治体は、部品の落下を起こさないよう米軍に申し入れしておくべきかもしれません。

数字ほど恣意的にいくらでも操作できるものはありません。統計から一部を取り出せば、どんな論でも組みたてることができます。しかし視聴者/読者の頭には、数字=客観的とのイメージがあるので、出した者勝ちで都合のよい数字を提供すれば、漠然とした恐怖は具体的な裏付けを持つ恐怖として認識されるようになるのです。

4) イメージを権威で補強する。
   →アメリカ人の専門家にオスプレイの危険性を訴えさせる。

マスコミは往々にして反権力を気取りますが、実はマスコミ報道ほど権威主義的なものはありません。マスコミ報道の肝は、論旨ではなく肩書きで語ることにあります。実際には専門家といっても意見はそれぞれで、論旨不明瞭な人もいれば、イッちゃってる人もいます。さらには長いインタビューから一言二言欲しいコメントを抜き出すわけなので、ディレクター/記者の意図にあわせていくらでも細工できます。ですから現実にはマスコミに登場する専門家ほどあてにならないものはありません。しかしこれこそマスコミ報道の決定打で、大学教授や専門家という肩書きさえあれば、衆愚へのイメージ植え付けはいよいよ確実なものとなるのです。

というわけで、新奇な機体であるオスプレイは、マスメディアのツボにピタリと嵌る、煽りの要素をすべて兼ね備えたイジリがいのあるネタ、ネギを背負ったカモのような存在なのです。ですから、何人かの工作員が「オスプレイは危ない!」と声をあげれば、マスメディアはビビッと反応して、嬉々として煽り始めるのです。

今でこそインターネットがあるので、マスコミの煽りは簡単に見破ることができます。しかしこれが15年前なら、マスコミが提供するデータを頼りにするしかないパンピーは、為す術もなく朝日やNHKの手の平の上で踊らされていたでしょうし、かくいう自分も、何の疑いも持たずにオスプレイの危険性を指摘するニュースを制作していたに違いありません。

そんな時代が、ついこの前まで100年余り続いていたのです。国民総出で対米開戦の報に快哉を叫んだのも、無理はないと思います。

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この記事へのコメント
私は報道に毒されてしまっていましたのでオスプレイの事故件数を知ったとき、「多い」と思いました。航空機関係の事故に関係する数値を調べようともせずに。どうすればOribeさんのように、疑問を持つことができるのでしょうか。「常に物事は疑ってかかれ」といいますが、一体どこを疑えばいいのでしょうか。更に肯定して受け入れてしまった後、再考するにはどうすればよいのでしょうか。
・・・バカみたいな質問ですみません(泣)。
Posted by JJB at 2012年07月28日 07:42
私の場合ですが、twitterのリストに専門家を入れておいてマスゴミの報道のチェックに活用しています。科学、経済、外交、スポーツジャーナリスト等々。
それだけでも、だいぶ違いますよ。
原発事故の初期理解にも役立ちました。
Posted by sisimai at 2012年07月28日 08:13
日本の国は、米軍に頼ることなく、日本軍で守れ。
そのうえで、相互に安全を保障すればよい。
他人に仕事を任せておいて、いちいちあれこれ言うのは不謹慎である。
消去法を得意とする論客ばかりでは、総理の寿命も短くなる。筋の通った政治もできない。

未来社会の建設には、建設的な意見が必要である。
未来構文がなくては、未来の内容は過不足なく構築できない。
未来構文があれば、理想が語れる。無ければ、筋の通らない空想になる。

日本語の文章には、未来・現在・過去の区別はない。
現在の内容は過不足なく考えられても、過去と未来にはそれができない。
日本人は、未来の内容に辻褄を合わせて語るのは得意でない。考えられない事柄は想定外になる。
だから、有事の際の危機管理も破たんする。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/
Posted by noga at 2012年07月28日 10:10
>そもそも日本の民間ヘリコプターの事故率が3程度と見積もられていることからしても、特別高い値とはいえないのです。


これは軍用機とは事故の算出基準が異なります。調べられた方がいいです。例えばクラスAという評価は米軍独自です。
Posted by ミゴ at 2012年07月28日 20:35
>ミゴさん
>軍用機とは事故の算出基準が異なります。調べられた方がいいです。

調べてみました。

民間のヘリコプター
>10万時間あたりの事故率は4件、死亡事故は2.7件ということになる。

米軍
>米軍は現在、航空機事故について(1)死者が出るか200万ドル以上の損害が出たりした事故を「クラスA」(2)重傷か50万〜200万ドルの損害が出た事故を「クラスB」(3)軽傷か5万〜50万ドルの損害を出した事故を「クラスC」―などと分類


と言う事で、民間側は【死亡事故のみ】に対して、米軍のクラスA事故は【死亡事故+200万ドル以上の損害の事故】を含むので、米軍のクラスA事故の方が多めに出てくる計算になりますね!

死人が出なくても機体が全損した事故であれば、民間側は計算されず、米軍側だけ計算する訳です。
Posted by SIRO at 2012年07月28日 21:30
戦後日本のマスコミは、中世ヨーロッパの教会に近い存在。
Posted by   at 2012年07月29日 19:36
結局、マスコミなんてハイパー瓦版でしかなかった、ってことですよね。
派手な口上に乗せられて瓦版に群がる江戸の「庶民」と、今までの「国民」も大差なかったわけです。

後世の歴史家は「インターネットの普及により、民衆はやっと市民となることができた」なんて言ってるんでしょうね。
Posted by 昭和青年 at 2012年07月30日 01:29
>>JJB様
例えばオスプレイの件なら単純に「オスプレイ 事故」等で検索する。で、今度は1番引っかかったのと逆の内容(事故が多いなら 実は少ない等)で更に検索。
あとはネットのみならず複数のメディア、もっと言えば「生の声」があればあとはそれらを元に検証です。
勿論ジャーナリスト、専門家の言う事、書籍も丸々信じてはいけません
ネットもツイッターだけでは偏りますから2ちゃん、ふたば等も活用する。

そして何より、「ここ」も疑って下さいね。
個人のblogですから全く問題は無いと言えばそれまでですが、ここの内容もマスメディアに警鐘を鳴らしつつやはり偏向的な視点の時がありますから。
Posted by 頑張れニコン at 2012年08月01日 02:18
更新時期のむら、なんとかしてもらえませんかね
Posted by a at 2012年09月03日 23:24
オスプレイ配備に抗議してアメリカ製品、アメリカ企業、アメリカを売りにした商品・店などのボイコットを展開しよう!
Posted by すぐる at 2012年09月17日 14:54
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