2012年09月18日

憂鬱な21世紀の幕開け

久しぶりの更新になります。8月に更新しようとしていたのですが、ロンドンオリンピックを見ていたら、何事もなく「昨日の世界」が続いているような感覚に囚われて、なにやら脳が麻痺してしまい、なにひとつ書けなくなってしまいました。

19世紀的価値観を瞬時にして葬った第一次大戦が勃発した1914年の夏は、欧州では数年に一度のすばらしい夏で、人々はすっかり呆け、19世紀的社会が永遠に続くかのような錯覚に囚われていたといいますが、時代が転換するときというのは、その直前に奇妙な凪が生じるものなのかもしれません。

オリンピックは20世紀を象徴するイベントです。そこには20世紀のすべてがあります。100年後に20世紀を知ろうとする人は、オリンピックを研究すれば、そのすべてをつかむことができるはずです。

そんなオリンピックは、今回とても普通に行われました。

ジャッジミスや進行の不手際は随所に見られたものの、そうしたことはスポーツイベントにはつきもので、むしろ大会の普通さを示すほのぼのとしたできごとであり、前回の北京大会のように、政治やカネの匂いは意外なほどかぎとれませんでした。歴代のオリンピックは、多かれ少なかれ、良くも悪しくも時代を映してきましたが、今回はまるで会場ごと1990年代にタイムスリップしたような、時代からふわりと浮いているような、不思議な大会でした。

ところが時代は突如として顔を出しました。サッカー3位決定戦における「ドクトは我が領土」プラカード事件です。安穏とした20世紀の風景を演出したオリンピックの裏では、オリンピックを場違いとしてしまうような時代の変化が進行しており、そのズレがスッと顔を出したのです。

以来、日本の周辺を中心として、世界はタガが外れたように揺れています。奇妙なほど普通なオリンピック、「美しい20世紀の風景」を最後に、いよいよ20世紀は「昨日の世界」になったのかもしれません。

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さて、中国の反日暴動です。

日本人の多くは、中国人暴徒の様子をポカンとして見ているようです。口の悪いネットでも怒りの声は少なく、むしろ愚かな中国人たちの自滅ぶりを楽しんでいる風でもあります。

確かに今回の一件は、中華人民共和国の内部矛盾が相当なレベルまで来ていることの証です。中華人民共和国が倒れるとするなら、それは外国人ではなく、人民の手により暴力的に葬られることはおそらく間違いなく、そうなる期待を抱かせる状況ではあります。ですから自分も、日本のネットで見られるセンチメントに大いに共感します。

しかし、もしそういう方向に事態が推移しなかったら?体制が崩壊するにしても、それは今ではなくしばらく先のことだったら?と考えると、日本人として絶望的にならざるをえません。

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今回の暴動は、「ライヒスクリスタルナハト」を思わせる明白な人種差別暴動です。

日本語で水晶の夜と呼ばれるこの事件は、1938年の11月にドイツで起きたユダヤ人店舗、シナゴーグの襲撃事件です。路上に散乱したショーウインドーの破片が水晶のようにキラキラと輝いて見えたので、水晶の夜と呼ばれます。

この事件は、ドイツ外交官がユダヤ人青年に射殺されたのを機に、当時公私にミス続きで功を焦るゲッベルス宣伝相が「党はデモを行わないが、自発的に起きるデモは妨害しない」と宣言し、過激分子による暴力デモにゴーサインを出したことで起きました。

中国の「デモ」も同じ構図です。

ドイツは、この事件により世界的な非難を浴び、ゴロツキとしての地位を確定的なものにしました。「21世紀のクリスタルナハト」に対する世界での報道と、それへの反応を見ると、中国も悪の帝国としての印象をいよいよ強くすることは間違いないはずです。

それは日本としては救いではあります。しかし、なぐさめ程度の救いでしかありません。

クリスタルナハトを目撃した世界は何をしたか?以前よりもユダヤ人の声に耳を貸すようにはなりました。でもそれだけです。口でドイツを非難するばかりで何もせず、ドイツの反ユダヤ主義者はますます牙を研ぎ、迫害を強めるばかりでした。

ようやく諸外国が拳を振り上げたのはクリスタルナハトの10ヶ月後。ドイツのポーランド侵攻に対して宣戦したわけですが、そのときですら英仏軍は国境線から動かず、もしドイツからフランス侵攻作戦を仕掛けなければ、しばらく睨み合った後に和平していたかもしれません。

いくら世界の賛同を集め、相手の非道ぶりを明らかにしたところで、弱ければやられるしかなく、誰も何もしてくれないのです。

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今日の中国は、ドイツ第三帝国に酷似したファシズム国家ですが、大きな違いもあります。

ドイツは戦争のできる国家建設にいそしみ、経済的に自給自足を目指していましたが、中国は世界経済に深くコミットすることで、攻められにくい国家建設にいそしんでいます。もし中国が先進国と戦争すれば、中国経済は大打撃を被るでしょうが、相手国もまた大打撃を被るので、戦争になりにくいのです。

そして中国は膨大な人口を擁する大金脈であり、なおかつ一党独裁です。民主国である他の先進国と軋轢が生じれば、経済人たちのロビー活動により、必ず民主国が折れる仕組みなのです。

中国の経済はおそらくすでにバブル崩壊しており、金鉱としての価値は半減していると自分は見ていますが、経済人たちは目に見える目先の利益を追い求めるので、そんな話は耳に入りません。今回の場合、日本はもちろん、アメリカ、ヨーロッパの経済人たちは、戦争を食い止めるために、各政府に猛烈にプレッシャーをかけているはずです。

それでどうなるのか?

アメリカ政府は中国に強面で自重するようにもちかけ、一方で日本に譲歩を迫るはずです。尖閣をめぐり、一見して譲歩には見えないけれど、その実中国を利する譲歩と、中国政府バージョンの南京大虐殺を認めるような公式声明のセット、というところでしょう。

そうして平和は守られます。ミュンヘン会談再びです。

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ミュンヘン会談で国家防衛の要衝であるズデーテンラントを割譲させられたチェコは、もはや独立国として生存できず、やがて全土をドイツに併合されてしまいました。今回日本が飲まされるだろう譲歩は、それほど大きなものではありません。

しかし、世界は結局弱肉強食であるという現実を見せつけられた日本は、力への信奉を強めることになるはずです。

核武装して憲法9条を改正する?それもひとつの手です。ただし、それは必ずしも力とイコールではありません。

でかくて強くて経済的恩恵ももたらしてくれる(ように見える)中華帝国に擦り寄り、その庇護下に入るという手も、もはや大国とは言えない日本が力を手にし、弱肉強食の時代に生き残る術のひとつなのです。

21世紀の大動乱はアジアが発火点となる可能性が高いですが、中朝連合軍に国土を蹂躙される恐怖に比べれば、中国様のポチとして生きるほうが、何倍もましというものです。

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この記事へのコメント
相手の理性や良心に期待してはいけない。
相手の能力に備え、最悪に備えよ

私はまだ最悪を回避する事ができると思っていますが、それには最悪の想定する必要があります。
ところが、なまじ自分の金を突っ込んでしまっている
経済人のような人たちには受け入れがたく、
希望的観測にすがってしまうものじゃないかな
Posted by littlefox at 2012年09月18日 16:06
ユダヤはヨーロッパでは元々嫌われ者でしたからね。
今回の日本と比べられるかどうか。
Posted by ta at 2012年09月18日 17:12
>中国様のポチとして生きるほうが、何倍もましというものです。

とても同意出来ないね。
Posted by のん at 2012年09月18日 17:16
>中華帝国に擦り寄り、その庇護下に入るという手も、もはや大国とは言えない日本が力を手にし、弱肉強食の時代に生き残る術のひとつなのです。
>中朝連合軍に国土を蹂躙される恐怖に比べれば、中国様のポチとして生きるほうが、何倍もましというものです。

あの、このままずっと休養なさっていたほうが・・
Posted by 昭和青年 at 2012年09月18日 20:01
失礼。逆説の皮肉だったんですよね。
そう。日本はもう腹をくくって、世界の大動乱に備えなければなりません。

さてその動乱後、今の先進国はいくつ残っているでしょうか・・
Posted by 昭和青年 at 2012年09月18日 20:11
暗澹たる気持ちになるのは、民主党政権が次から次へと最悪手を打ってきて、これからも最悪手を打つことが予想できるからだと思います。
石原慎太郎が都で尖閣を買い取ると言い出した時は、うまいことを考えたものだと思いました。都が買ったとしても日本政府としてはあずかり知らぬことだと強弁できるし、中国も明確なはけ口がなくて空回りしたことでしょう。そのうち何年か後に必要なら都から国にこっそり譲渡すればいいだけの話です。それをいきなり国が買うとは・・・中国に突っ込みどころをたっぷり添加した塩を贈ったようなものです。

もしかしたら日本の製造業と零細な小売業の不信はすべて中国が原因だったのではないかという思いに囚われることがあります。
だったら、これを機会に中国との経済的な関係を静かにフェードアウトしてもいいのではないでしょうか。
日本の消費者物価は上がると思いますが、品質で勝りながら中国の低価格攻勢で疲弊していた日本の産業が回復するかもしれません。中国の需要がなくなっても内需でカバーできるかもしれません。そうすれば、デフレスパイラルから抜け出れるかもしれません。
中国の需要に頼っていた部品メーカーは困るでしょうが、国内に新しい内需を掘り起こせるかもしれません。大手スーパーは格安食品を中国から仕入れられないかもしれませんが、日本の農家は労働と品質に見合った報酬を受け取れるようになるかもしれません。

中国はビクともしないかもしれません。日本からの基幹部品を使えなくなっても、品質の劣るより安い代替品でまかなうでしょう。世界マーケットでの中国の低価格攻勢は変わらないでしょう。日本は技術と品質で競争するだけです。今と何も変わりません。
だったら日本は中国というマーケットを捨て、不当な低価格品の流入を絶ち、内需を掘り起こしたほうが得策だと確信します。
Posted by タマ at 2012年09月18日 21:14
 今の中共政府が人民に暴力的に倒されるのはかまわんのですが、新たな政府(と呼べるものができるのか?)が今よりマシである保障はありませんしこれもまた憂鬱ですね。
 清朝末期からの軍閥もろくなものではなかったそうですし。
Posted by ax at 2012年09月18日 23:01
>中国様のポチとして生きるほうが、何倍もましというものです。

独裁国家のポチ?
あほか、第二のチベットになるのはごめんだね。

Posted by 福富 at 2012年09月19日 10:22
殺されるのと、死ぬほどつらい目に遭うのと
どっちかといえば、つらい方がマシかなあ

ってことかな
Posted by あむ at 2012年09月19日 11:02
そうそう、私も憂鬱な気分になるのでTVのニュースは見ません。
でも、中国が次から次へと策を打ち出していることはわかります。そのほとんどが嫌がらせレベルだということも想像できますが、成果はあがっているようです。世界中の中国系市民に指令してデモをさせるのもその一環でしょう。馬鹿馬鹿しいとは思いますが、アピール力はあります。何も知らない第三国の人も、繰り返し繰り返ししつこくいつまでも中国人のデモを見せつけられれば、南京大虐殺と同様に「洗脳」されるかもしれません。
民主党政権はその対策をしているのでしょうか? せめて外務省に対策をとるように指示をしているのでしょうか? まさか外務省はいつもの独特な事情でサボタージュしていないでしょうね?
いま、中国では日本人が韓国人のふりをして難から逃れることがあるそうです。
そのうち、世界中で日本人が日本人と名乗ることが恥ずかしくて憚らる事態になるのではないかと、心配です。

動物は迫害を受け続けるといずれその運命を受け入れてしまいます。殺されることさえも静かに受け入れてしまいます。人間は直接の暴力がなくても裏切られ続けることで、無気力になり、運命だと諦めてしまいます。いま、日本人の多くがその境地の寸前です。しかも裏切り続けるその張本人が自国の政府だというのが日本人の悲喜劇でしょう。
シッポを振っているだけのポチのほうがまし。わたしも考えることをやめたらどんなに気が楽だろうと思うことがあります。
Posted by タマ at 2012年09月19日 14:54
なんだかなぁ(苦笑)と、わらいながらも
どうしちゃったの?お熱があるの?
という感想しか持てませんでした。
Posted by 大山田 at 2012年09月20日 20:48
初読で読み取れない人多いだろうなあと思いましたがやはりというか。

自分としては・・
>中国様のポチとして生きるほうが、何倍もまし。
と考える人が(特に経済人等、力を持つ人に)多そうだと予想し、それで日本人として絶望的にならざるをえません。となっていると読み取るところですが。

自分は皮肉がきいてて、考えさせる文章構成で好きですが、中々ブログをお書きになること苦労があることを感じさせられました。
Posted by ななき at 2012年09月21日 12:34
>ななき様
こちらのブログ主様の特徴ですよね
皮肉や回りくどい言い回しをわざと書く。
何かしら意図があるんだと思いますが大抵の場合解りにくいだけな様な…
それと後半の文章にみんな引っ掛かってますが
今回のオリンピックが竹島プラカード問題以前平和的だったと言うのは目か脳が腐ってるとしか言い様が有りませんね
Posted by 竹しマン at 2012年09月22日 22:33
なんか悲観的な人が多いけど、悲観的であるべきだった時代はようやくすぎ去った気がするけどね。ガス田問題や反小泉デモの時は、それこそ憂鬱な21世紀の幕開けと思ったし、もう日本はダメかもしれないと感じていたけど、今回はなかなかいい感じでやってるんじゃないかな。
Posted by aaa at 2012年09月23日 13:01
ここまで皮肉を理解できない人が多いと
別の意味で苦笑してそうだな
Posted by あ at 2012年09月26日 07:27
アメリカのポチならしっぽを振ればかわいがられるけど 中国のポチは食べられてしまうからそんなのにはなりたくないな
Posted by ころ at 2012年10月16日 07:09
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