しかし個人的には、これほどまでに興味を持てない大統領選はありませんでした。世界の親分を決める選挙に自分も参加したいと、かつては思ったものでした。しかし今回は、もし選挙権をあげると言われても辞退したと思います。それほどまでに、今回はどちらが勝とうと同じと感じさせられる選挙でした。
経済政策的には、社会主義者などと呼ばれながらマネーゲーマーの顔色をうかがい、借金地獄で身動きの取れないオバマと、口だけ番長でもともと共和党左派のロムニーは、結果として同じような政策に着地したに違いありませんし、日米関係でも両者に差はないと言えます。違いは肌の色だけです。
さて、今回の大統領選挙を総括し、その世界史的意義をどう見るかという議論が盛んです。オバマが2期目を決めたことは、新自由主義の終わりを示すなんて言う人もいます。しかし、今回の大統領選からはより明白な傾向が見て取れます。
APの調査によれば、今回の投票者数は、2008年の選挙に比べて1400万人も少なかったといいます。アメリカでは、イラク戦争以降左右の対立が高まるにつれ投票率が伸び、オバマ旋風が吹いた前回の選挙では有権者の58パーセントにあたる1億3100万人が投票したのですが、今回は1億1700万人程度にとどまり、50パーセントを割り込みそうです。50%未満の投票率は、1828年以降3回しかない珍事です。
ハリケーンのせいではありません。投票率の低下はあらゆる州で見られました。今回の選挙では、「スイング・ステート」といわれる両党が拮抗している州に両陣営とも大半のリソースをつぎ込み、とくにオハイオ州とフロリダ州では空前の選挙祭りという様相を呈したのですが、その両州ですら投票率は低下しました。
民主党支持者はオバマに幻滅し、ただ共和党候補に勝たせたくないという動機から活動し、共和党支持者は分裂し、ただオバマに勝たせたくないという動機から活動する、「lesser of two evils」を選ぶ中傷合戦に有権者は失望したのです。
「積極的に支持する政党がない」という嘆きは、世界中で共通して見られる現象です。日本では次の総選挙でそうなるのは確実ですし、ヨーロッパ各国でも同様です。ヨーロッパでは、左派政党は社民主義を捨て、保守政党は左傾し、もはや左右の差は一切なく、従って有権者に選択の余地はありません。
日本やヨーロッパでは、主要政党は「中道よりやや左」に収斂し、左右の対立軸が消滅して久しいですが、鈍重なアメリカでは、世界のトレンドから一周遅れて左右の対立が激化していました。しかしそれもどうやら終わりで、共和党も民主党も同じ穴のムジナと認識される日が近いようです。そしてアメリカという超大国が左右対立の構図は現代に合わないと気づいた時、世界は動き、新しい対立軸の確立へと近づくに違いありません。
「新自由主義」とか「グローバリズム」とかいう机上のドグマも、圧倒的な現実を前にもはや意味を失っています。
ただ、じゃあどうすれば良いのかという点については、国情によってまちまちで、これだという単一の解決策は無さそうです。こうした混乱は相当長期間にわたって続き、そこから脱出するための熾烈な国際競争が始まっているんでしょうね。
ドル暴落後はいったいどんな体制の国になることか(ハンガーゲームのパネムもどき?)。
意外とゴルバチョフ的なポジションにオバマは就いたりして・・