2013年01月25日

英のEU離脱と日英ブロック

イギリスのキャメロン首相が、2017年末までにEU離脱を問う国民投票を実施すると宣言しました。イギリスのEU不信は以前から顕著でしたが、明確にタイムラインを示されるとやはり衝撃的です。

EUの集権的官僚主義は、ファシズムや共産主義の基底にあるエガリタリアニズムの流れを汲むきわめて大陸的な姿勢で、海洋国のイギリスとは相容れません。しかし現実問題としてイギリスに、EUという自由貿易圏から離脱することによる経済的損失に堪えられるとは思えません。

仮にイギリスがEUを脱退したとしても、EUはイギリスとの交易をストップするわけではありません。しかし経済ブロックというのは、ブロック内にいることによる経済的恩恵は目に見えなくても、ブロック外におかれることによる経済的損失は甚大という特性を持ちます。EUという経済ブロックの外にポツンと孤立することは、イギリスの経済的凋落を意味します。

気持ちとしてはEUと別れたいけれど、別れると自立できないイギリスのジレンマを解決するには、別の経済ブロックに加入するしかありません。

ひとつはアメリカの経済ブロックに入ることです。イギリスの最大貿易相手国はアメリカですから、経済的には最も合理的な選択です。しかしそれは、アメリカと欧州の間で「バランサー」としての役割に存在意義を見出してきたイギリスが、アメリカのポチに転落することを意味します。独立心の強いイギリス人にすれば、大陸ヨーロッパと組む以上の屈辱です。

もうひとつの選択は、今や形式的な存在でしかない英連邦を強化し、経済ブロックとして復活させることです。しかしカナダはすでに米ブロックに属していますし、もはや大国とはいえないイギリスが今さら日の沈まない帝国の復活を叫んでも、雑魚国しかついてこないのは目に見えています。

このようなイギリスの状況を見ると、日本の置かれた状況に酷似しているのがわかります。世界のブロック化が止まらないのであれば、日本は中国ブロックかアメリカブロックに入るしかありません。どちらか選べとなるとアメリカブロック(TPP)しかないのですが、米帝の衛星国になるようで、プライドの高い日本人には厳しい選択です。

さて、こうした世界の状況を見てつくづく思うのですが、似たもの同士の日英は手を組めないものでしょうか?ユーラシア大陸の東西の端に浮かぶ両国を合わせた経済規模はなかなかのもので、米、欧、中の覇権に拒否感を抱く国々を惹きつけるだけの魅力を持ちます。

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イギリスのEU離れの理由には、EU経由でやってくる移民を制御したい思いもありますから、そこでも日本との価値観にズレはありません。日本からすれば、英語宗主国イギリスの発言権は頼もしく、アメリカを敵に回す可能性も小さくなりますし、英連邦に属すインドやアフリカ諸国との関係強化も見込めます。世界は、米・中・独仏・日英+印・ロシアの5ブロックに分割されるというわけです。

もちろん日本の最大の国益は、世界からあらゆる経済ブロックが消滅することです。しかし黙って座していてもどうにもなりません。イギリスとの海洋ブロック構築に乗り出すことは、地域ブロック化する世界への防衛策であると同時に、仮に実現しないとしても、イギリスにEU脱退をうながすことによりEUの弱体化と崩壊を引き起こし、ひいては世界のブロック化を阻止する一手となりえるのです。

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この記事へのコメント
 文化は、人の集まる処で経済が栄え文化も発展するのは、古代からの法則ですが、逆に、人口が減少して行くのは其れ形の理由がありますが、人口密集地へのコミットメントが無い限り、衰亡に向かうのも亦、法則の裡でしょう。

この先の世界の中心が東南アジアや南アジアと云った、人口密集地帯に遷移して行く事は、自明の理ではないでしょうか。

 すると、英国の取るべきは、oribeさんのご指摘の英連邦の復活でしょう。 特に、オーストラリアは、資源輸出国に甘んじていますが、未開拓の広大な土地や資源は、人類に残された最後の開拓地なのかもしれません。

 然も、日本とは、嘗て日英同盟を結んだ仲、この先日本こそこの地域を成長させる最も大きな推進力国です。亦、英国王室と日本の皇室は、途中戦争があったのにも拘らず、永年に亘り、親戚の様な友誼を保ってきた事も英国にはきっとプラスに働きます。

 大西洋ではなく、目を転じインド・太平洋で国益を考えれば、米国も日本もインドも豪州もニュージーランドもいるわけです。

 大消費地である東南アジアに足りないものは、広大な耕地である事は論を俟ちません。 東南アジアで溢れかえる人口を労働層・消費層にした新たな農業技術で、不毛の地を緑地化、耕地化、そして、工業化して、新たな近代国家を誕生させる事こそ、嘗て、この地を支配した英国人が求めるべき新たな地平ではなかろうか。

 シナの東北(満州)と同じ面積の土地を巡って血で血を洗う戦いを、長年続けて来た欧州半島の「売り成分」も、そろそろ、売り切れです。
Posted by ナポレオン・ソロ at 2013年01月25日 16:54
そうなるとF35でなく、F-Xはタイフーンにすべきですね。あとはMI6に諜報活動の仕方を教わるとか。
Posted by ヒロ at 2013年01月25日 21:07
素晴らしくタイムリーな記事ですね。


英中銀、中国との通貨スワップ協定締結で原則合意する用意=中銀幹部
[ロンドン 24日 ロイター] イングランド銀行(英中央銀行)が中国と通貨スワップ協定を締結することで原則合意する用意があることが、英中銀幹部の話で24日、明らかになった。
 実現すれば、英中銀は日米欧7カ国(G7)の中銀として初めて中国と通貨スワップ協定を締結することになる。
 英中銀の銀行サービス部門エクゼクティブ・ディレクター、クリス・サーモン氏は、拡大しつつある人民元建て取引のオフショア市場を支援することが目的と述べた。


英国の伝統的な二枚じ…もとい多次元外交の復活かしらん?
Posted by azaz at 2013年01月25日 22:11
EUと言う世界で最も成功すると思われていた経済ブロックが、崩壊しかけている真っ最中に、一体何を言ってるんですか???
Posted by 昭和青年 at 2013年01月26日 10:58
ブロック化が進んでいるのは事実ですよ。
EUが失敗しているにもかかわらず、解体できないのはそこが原因ですし。

英国がどういう道を選ぶにしろ、日本も腹を決めておかねばなりません。
Posted by at 2013年01月26日 15:21
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