環境が悪い、給料が悪い、自分のやりたいことと違う・・・どんな仕事にも不満はあります。ぼくは普段そういう悩みには同情しないのですが、話しを聞いていて、テレビ業界の現実に改めて暗澹とした気持ちになりました。
彼の一番の不満は、今の仕事の内容が自分の求めているものと違うということにあるのですが、別の職場を紹介してやるにはお金の話しをしないわけにはいきません。で、今いくらもらってるんだと聞くと、年に400万くらいだと言います。
番組制作会社に入社して10年以上たつ34歳の男が、ボーナスを含めて額面で400万、手取りにするとたった320万程度です。
彼はとびきり優秀なディレクターではないかもしれませんが、決してダメディレクターではありません。それなのに、カミさんがパートで働いて、2人合わせてやっと年収400万では、子供を作って健全で幸せな家庭など築けるはずもありません。
テレビ業界というのはこういう所なのです。
どのテレビ局でも社員はいい給料をもらっています。34歳だったら額面で800万から1000万にはなり、会社から経費も出て、それを遊興費にあてることもできます。しかし下請けは、そうした景気のいい話しとは無縁です。
テレビ局というのは、社員だけですべてをまかなえないので、番組そのものを外注したり、外部の制作会社から人員の派遣を受けて番組を制作します。あるニュース番組に30人スタッフがいるとすれば、そのうち20人は派遣と見ていいでしょう。
そういう「派遣社員」に対して、実はおおもとのテレビ局が計上するギャラは決して悪くありません。ひと月あたりADなら4、50万、ディレクターなら安くても70万程度は支払います。しかし、本人の手元に渡るのはその半分になってしまうのです。
なぜそうなるかというと、今回ぼくに相談した彼の場合でいうと、こういうことです。
NHKの場合、番組制作のかなりの部分を、NHK情報ネットワーク、NHKエンタープライズといった系列企業に委託しています。委託を受けた系列企業は、外部の制作会社から兵隊を集めて業務をこなします。ですから、NHKが彼の働きに毎月70万円払っていたとしても、まず系列企業が中間マージンをとり、さらに彼が所属している制作会社が上前をはねるので、彼の手元には雀の涙しか落ちてこないのです。
そうした孫請け構造に加えて、天下りの存在もあります。彼の所属している制作会社は、NHKとその系列企業に100人以上を送り込むなかなかの規模を誇る会社なのですが、それだけの発注を受けるには、その見返りとしてNHKから天下りを受け入れなければなりません。そして、天下りした役員たちに高額な報酬を支払うために、一兵卒のギャラは極限まで搾り取られるのです。
そもそも、NHKと派遣会社の間に入るNHKの系列企業からして、NHKを退職した元職員と、出向という形でNHKから送り込まれる職員で運営されているのですから、こうした派遣構造自体、巨大な搾取装置といえます。
これは何もNHKだけではなく、民放各局でも同じ状況です。そして恐らく他の業界でも、大企業というのはそういう風に運営されているのでしょう。しかしそれにしても、天下り構造によって維持されているテレビ局が、公務員の天下りを得意になって叩くのは、一体どういう神経をしているのだろうかと、人間の醜さに目がくらみます。
もし、テレビ業界で働きたいと思っている若者がこれを読んでいたらぜひ言いたい。テレビ業界で働きたいのだったら、安定した高収入が保証される局員か、一攫千金が見込めるタレントを目指して、それがダメならあきらめなさい。制作会社でもいいから働きたいというのであれば、テレビ局から番組の外注を受けているような、企画制作能力がある会社を選びなさいと。
テレビ局への人員派遣を主な業務とする制作会社に入ることは、テレビ局員の懐を潤わすために、奴隷契約を交わすのと同じことです。
私も学生時代に制作会社でインターンをした時には、テレビ業界で働けるだけでもありがたく思えという感じで、最初は無給になるところを別の社員の方の口ぞえでお給料がでたというような経験があります。
驕っていますよね、本当に。
世代的には私の方が少し上になるかもしれません。
現状でのテレビ局、代理店の搾取構造こそ、
一番構造改革が必要な場所ではないのかと私も常々思っています。
SAPIOの記事からですが、
日本で一番平均給料が高いのが、局と代理店というのが
彼らが利権の頂点にいるというなによりの証です。
ただ、現場の方もヘタレにすぎるとも思っています。
立ち向かう気概がないという点で。
人の非難をするのは簡単なので、私は私なりに反旗を翻し、
自分ひとりで作品を作ることに挑戦しています。
発表の場所は現在はヤフー動画です。
ヤフーを助けるつもりでもないのですが、
ネットでの可能性を提示したいものですから。
局がネットに対して否定的になるのは、
潜在的に自分たちの権益が犯されると
感じているからなのだろうと思っています。
この記事の趣旨には基本的に賛成ですが、あまりにも事実誤認が多すぎます。局員の給与や外部スタッフに曲から支払われているギャランティなど、かなり変な数字が載っていますね。実態は全然違います。
20年くらい前のデータか、あるいはNHKだけの話ではないですか?
それと、下請けの会社に関しては、派遣であろうが大手の制作会社であろうが「人脈だけ作って近い将来独立する」などの目標を持った人以外は絶対に入社してはいけません。
自社ビルを持っていたり、ゴールデンに複数のレギュラーを抱えている制作会社で、債務超過で自転車操業している会社は珍しくありませんから。
最初の男性ディレクターの話は、この業界では当たり前になっている「ピンハネ率50%会社」に責任があり、局側の抱える問題とはチョット違うように感じました。
面白く読ませて頂いてましたが、民間放送局に勤務する立場としては、この記事だけ疑問を感じたのでコメントさせて頂きました。失礼しました。
そうですね。この記事であげた数字は少し古いかもしれません。この10年でギャラは急降下していますからね。それは認めます。
>おゆなむさん
たしかに現場はへたれです。公共放送にしろ民放にしろ、実は局員は派遣ディレクターたちに同情的だったりするのですが、その下にぶらさがっている気概のない派遣ディレクターたち自身が、まるで宦官のように脚を引っ張り合い、状況を悪くしているような気がします。