報告書の中では、制作現場でどのようにねつ造が行われていたか、その過程を細かに描写しているわけですが、読んでいて、駆け出しの頃ウナギの取材をした時のことを思い出してしまったのです。
土用丑の日に、ウナギの夏バテ効果と、ついでに旨いウナギの店を紹介しようという、語るも恥ずかしい超ありがちな企画を立てまして、ぼくはある大学の栄養学の先生の所に取材に伺ったわけです。で、肝心のウナギの効用について先生にインタビューしたんですが・・・
先生:「ウナギは脂肪が多いから、それがスタミナになるってことはあるかもしれないね」
ぼく:「本で調べたら、ウナギにはビタミンAとかビタミンEが含まれているそうですが?」
先生:「すごく微量だから、それは関係ないよ」
ぼく:「とすると、ウナギには特に効用はないわけですか?」
先生:「江戸時代の人は肉を食べなかったから、脂肪が多いウナギを食べると、スタミナがついたんだろうね」
ぼく:「えっと、そもそもウナギには、どんな成分が含まれてるんでしたっけ?」
先生:「脂肪だね」
ぼく:「他には?」
先生:「食べて影響があるのは脂肪くらいだね」
ぼくはいろいろと質問の仕方を変えて、何とか「使えるコメント」を言わせようとしたんですが、その先生はなかなかくせ者で、何を聞いても上のような感じで堂々巡りです。
というわけで、最初のうちこそ、「こんなインタビュー撮って帰ったら怒られる」と焦っていたぼくも、話しているうちにだんだん先生に感化されてしまいまして、局に帰ってから、「土用の丑の日にウナギを食べるのは気分の問題だから、効用くんだりを紹介するのはやめませんか?」とチーフに提案してみたのです。
するとまあ、怒られたの何のって。敏腕で通っていたチーフから、思い切り無能の烙印を押されてしまいました。「欲しいコメントが撮れるまで、2時間でも3時間でもねばるのがディレクターってもんだろ!そいつがダメだったら、別の先生見つけてこい!」と。
結局ぼくは、そのチーフに「お前はディレクターに向いてない。お前が今までの自分を全部捨てて頭を下げるんだったら一から仕込んでやる。それが出来ないんだったら辞めろ!」と言われるに至り、悩んだ挙げ句当時属していた制作会社を辞めました。
どこかの局で今も活躍しているだろうそのチーフとは、今でも顔を合わせたくありませんが、ぼくがディレクターに向いていないという彼の判断は、皮肉ではなく正しかったと思っています。
それに「実は鰻よりコレの方が夏バテに利く」とかの方が目新しくウケル企画と思われます。おまけに役に立ち、事実にも基づくオマケ付き。制作時間も短いんじゃないですかね。そういう企画を逆提案してこそ番組制作のプロと思います(鰻屋がスポンサーじゃないだろうし)。しかし実際は、何重にも下請けされてるだろうし無理でしょうな。
その「敏腕」チーフはまぁ可哀想な人です。
マスコミの体質を知ってたんじゃないのかな?
で、のらりくらりとかわしていたんじゃないなと。。。
それじゃあ朝鮮の歴史教科書と一緒じゃないの。
oribeさんも偉い!!
プロフェッショナルはこうでなければ。^^
上の方の言われている「まず結論ありき、そして都合のいい情報だけ集めて編集、都合のいい情報すら無いときは捏造してでも」というのは、職人になりきれない者を淘汰するための踏み絵としても機能しているんじゃないかと思います。
誇りや良心を麻痺させて職人に徹しきった者だけが成功するという、実はすごくよくできたシステムなんじゃないかなあ。
ただ、小野まささんの言われる「可哀想な人」というのには大いに同感ですね。
それに、oribeさんがお話のチーフみたいな人じゃないから皆がここに集まって来るんだと思います。
大学の先生も変な言質を取られたら学会で信用を失いますよね。
実際に番組を作ってる製作会社が受け取る制作費は、最初にスポンサーが支払った費用の10分の1以下だそうですね。
一番大変な目をする製作現場が、途中でピンはねして丸投げしてる奴等より取分が少ないのだから、段々馬鹿らしくなって来るのも判らんでもありません。
夢や意欲を持って入社した製作現場の人間も、現実と折り合う事を覚え、求められる番組を出来るだけ少ない手間隙・予算・時間で作る事を優先するようになり、捏造に手を染めたんだろうな。
代理店やテレビ局の言いなりになってるスポンサーに、匿名の手紙で内実を直訴してみてはどうでしょう?
ウナギなだけにのらりくらり?
誰がうまいこと言えと。w
実はそのようなチーフさんが、敏腕で通ってしまう業界の在り方にそもそも問題があったのであって、その限界が最近の騒動のカタチを生みだしてるんじゃないでしょうかね...w
>私には、ウナギにスタミナ効果が無いという情報の方が衝撃が大きいのですが、そういう企画はまずかったんですかね?
>Posted by at 2007年05月07日 10:18
この方の感想がなによりも本質をついてて最高ですよ☆
大概の誰もがビタミンEだのAだのスタミナだのって、ウナギを捉えてると思うんすが、「実はそんなに効用はないのよね」というのが、「情報」の面白さなわけで。
oribeさん曰くの「気分の問題」なわけで、要はメンタル的な、なんというか、精神的食文化・習慣なわけでしょう。
そして日本ってそういうものが多い。
いい例かわかんないですけど、正月の雑煮にはじまり、七草がゆだのなんだの....etc.
そこで逆発想で、そういう精神的食文化・習慣の素晴らしさを紹介するに転じた番組だったら、見たかったかもなあ....w
今に始まった訳ではないでしょうが、金権主義でスポンサーやら宗教思想や政治の顔色カラーに左右させられる世界にはウンザリさせられますね。
鰻、そうでしょうね。滋養があるに決まっています。
そこらの若造が卒論でも取り組むような仕上げ方。こうすりゃこうなる式のお手軽さ。売れれば良い銭感情最優先。旨い易い覇やいで占められる。
だから万人共通の食い物ネタが多い。
前にスーパーのバイトをしてた時、昼の思いきりテレビのテーマ食材が毎回品不足になっていた事を思い出した。
納豆だけでなくありとあらゆる食材。
パイナップルの時など築地市場までもが品切れ状態で輸入先を変えてみたり、パイナップルと名のつくもの全てが売れ行きを伸ばす等大変だった。
その内、番組の情報をキャッチしてから仕入れの発注をする等、情報交換が最重要課題となり食に於ける「旬」の発想など益々何処吹く風よとなり下がった。
情報が人の欲をかき立て食の流通を振り回し、その日の売り上げをも左右させ、生産者と消費者とをスパイラルな関係にしてしまう。
情報が力であるとつくづく思う。
情報をコントロールする管制塔に立つ人は その影響力に影響されない方法を身につける術を発信するべき時に気づいて欲しい。
送り出す方も送られる側も 共倒れじゃないか。
素朴じゃ業界からドロップアウトですかね、物売りできませんから。
とりあえず、手っ取り早く欲に目が眩み易いこちらの体質も改善が必要でしょうね。
ネットでですが、うなぎの栄養を調べると、色々なサイトで具体的な数字が出てきますが、けっこう栄養価が高いように書かれていますし、ちゃんと血や肉や骨のあるピチピチした生き物をほぼ丸ごと食べるわけですから、ほとんど脂肪だというその先生の意見にも疑問を感じます。
だったら、アジのたたき、いわしの丸干しや小女子でも良いような。
ビタミンEだのAだのおっしゃる方はトマト・かぼちゃ・にんじん・卵黄などなど、うなぎより安くて家庭で簡単に料理できて日常的に摂取できる素材が沢山あります。
今の日本であえて鰻で栄養を取らなくてはならない理由はなく、雰囲気や好みで食べるものだという解釈でよいかと。
鰻の流通業界や飲食店等にとっては死活問題かもしれませんが。
「うなぎは煙を食う」とは古来から言われていたことでして^^
そして結局新聞にはその記者の用意した通りのコメントをする教授の発言が載っていたとか。似たようなケースはけっこうあるのでしょうね。
栄養の無い食い物の方が珍しいですから。
鰻が精力つけるのに好まれるのは、プラシーボ効果が大きいのでしょう。だって形状が(以下略
ぼくはただ事実を知りたいですけどね。
その今現在わかっている事実も、10年経ったら非常識になってるかもしれませんが。
もうウナギは食べません(>_<)
中国産の、なんたらグリーンとかの薬漬けだったり農民の遺体を食べたりして育った鰻は問題外だけど、国産の多少高くともまともな鰻屋のうな丼は、これからも年数回は食べると思うよ。
自分のひいきにしてる地元の店くらいは応援するさ。
掴みどころのない話が得意だったのではないかとw
そもそも、何で土用の丑の日にウナギがもてはやされるかと言うと、丑の日に「う」の字の付くものを食べると精が付くという民間伝承からきています。『初物を食べると寿命が75日伸びる』と同レベルのおまじないですね。
だから、ホントは梅干でも何でもいいんですが、(当時の食生活からしたら)いかにも脂肪分が多く、精が付きそうなウナギに白羽の矢が当たったらしいです。
けっきょく、栄養学的にはその大学の先生が仰っていたトコロに落ち着くのではないでしょうか。
ただ、私個人としては、四季折々に古から伝わる行事があって食べ物がある文化は好ましいと思ってますから、栄養学的なアプローチがダメなら民俗学的なアプローチに切り替えるようなテレビ業界になっていただきたいですね。
しか考えられなくなってくるんですが、
洗脳されてるだけですかね?
今日はなんかおかしいなと感じて、そういえばってのが多いんですが...
食ったら、いつも以上に勃k(ry
フラシーボ効果は偉大なり、という事で
今では常識になってますし、テレビなどでも
はっきりとそう言ってますね。
オリベさんの話を読んで、やはり学問は勝つ
って感じがしました。
ウナギに栄養が無い、というのも極端です。
少なくともビタミンA、Eに関してはかなり含有量の高い食品ですよ。
ビタミンA
http://www.oishasan.co.jp/oisha/vitamin/vitamin_A.html
ビタミンE
http://www.miwa-mi.com/project/calorie/nut_list/vitamin_e.html
まあ、確かにウナギを一回食べたからと言ってモリモリスタミナがつく事はないのでしょう。
が、あん肝は食す機会やグラム数がそれほど多いものではありませんし、レバーは子供が、カボチャは男が苦手なケースの多い食品です。
(ウナギが嫌いでなければ)ビタミンの供給源としては良い食品ではないかと。
でもそれが日常ってもんでしょ、って肯定したら成立しないのがマスコミ。針小棒大で警鐘という名の破鐘をガンガン叩くだけ。勿論その鐘を叩く行為を経済効果として売っているから叩き方にも叩く場所にも意図が出まくり。
家の真ん中にテレビがある生活をしている以上共存しかないのかもね。
でも無いとみんな代わりになるものを・・・ってネットで何か探すんだけどそれって代わり映えしないといえば代わり映えしない行為なんだろうね。
それでも怠惰な日常を越えたい、人より面白いネタを知っている、人と同じおもしろいネタを知っているという欲求がマスコミを肯定していくんだろうね。
つまり、それまでの経験則から「暑い季節に鰻を食べると精が付く」とされてきた訳ではなかったんだね。
俺がチーフだったら、「じゃ、鰻に一番脂が乗る季節は何時なのか?何時が旬で一番旨いのか?」と云う話に持って行くな。
んで、「旨い店」の話に繋げる。
土用が旬でないのなら、「安くて旨い鰻を食べるなら、何時がいいのか?」と云う企画にする。
でも、それでは15年前のTV業界ではやって行けないんだろうね。
うんざりしています。あなたは辞めるべきでは
無かった。
とは言っても、居られなかったでしょうね。
もしくは既に流通に情報を流してしまったか。
金や権力に媚びるのは犬にでもできる
しかし「スジを通す」というのは本当の人間
にしかできない
いい子、いい子。
人間として正しい。
正直で誠実だとTVの中の人は勤まらないんだな。
でも、土用の丑の日に気分で鰻を食べるのは日本人として正しい。
どうせ気分でバレンタインやクリスマスするんだ。
初詣して、豆巻いて恵方巻き頬ばり、花見して、七夕して、お盆の墓参りして、月見して、初もの食ったら西向いて笑う。
それが日本人。
ノータリンな僕たち国民のツケがoribeさんにいってしまっているようで、なんだか謝りたい気分です。
・・・・ていうのも負担かな?
格好悪くてグダグダな話も色々聞いてみたいですね。
そもそもそんな単純に物事がわかるわけないが、お手軽に知りたい人が多い。
テレビ的には敏腕でも世間的に言えば嘘つきですよね。ただ一度違うムラに行けばそこはまた世間的に非難される凄腕がいるわけで。
その大学教授もある意味凄腕。対マスコミ用の戦略が出来ている。発言を切り貼りして使われないようにしている。
つまり、最初の番組企画が「思いつき」で、その後で専門家(科学者)に取材に行くのではなくて、
番組を企画するために、まず科学誌・専門誌を読み、その中から素人が驚く発見や意外な事実を、番組にしていくよう工程を変えれば、TVディレクターによる「科学を無視した思い込みのゴリ押し」はおこらないでしょう?
ミスの発生する不合理で非効率な作業工程を工学的に「改善」するって、日本の製造業とかでは普通に導入してきてるわけですが、やっぱり国際競争にさらされない甘やかされた「業界」だと、システム的に見直してみよう、という発想自体が無いのでしょうか?
門外漢の俺が言うのも何だが、それは無理だと思うな。
専門誌などから得た最新情報を基に裏付けを取る方法と、担当ディレクタの煽情的な思い付きに嘘と言われない程度の検証モドキを付け加える方法で、後者の方が視聴率が取れるならそちらが優先されるのが放送業界だから。
視聴者の為の競争ではなく、スポンサーの為の競争をしてるうちは、先ず対治らないよ。
民放各局が相互に他局の番組を検証してくれればいいんだけど、社長が「フェアプレー」とか言ってるようじゃ絶対無理。
そして再び沈黙へ・・・
親戚がウナギ屋をやっております。
土用の丑の日は年間売上のかなりの部分が集中します。チョコレートと状況は似ています。たぶん、件の企画で番組が制作されていたら、的確なフォローがなければ業界(ウナギ屋だけでなく、流通大手も含まれる)を挙げた抗議行動になったと思います。
問題なのは、影響力が大きいことです。習慣が変わってしまうのではないか、と言う恐怖というか、懸念が払拭されない状況では、「本当のこと」はテレビでも新聞でも発表できない、そんな世の中ができあがっているのかもしれません。
マスコミの中で自重しようと言う空気は無いんでしょうか?
犯人が見ているかもしれないのに・・・
と言い切った先生と、誇大宣伝に加担しなかったブログ主は偉い
食ったら旨い。程度でいいのにわざわざ裏付けのない栄養効果をまで謳い文句にしようとする
テレビ業界は世間と意識がズレている事を認識して欲しい