2007年05月23日

死ねない組織はゾンビになる。

企業にとって最大の脅威は、客が離れてつぶれてしまうことです。だから、何か不祥事が起きたとき、責任者は客に対して頭を下げます。その不祥事が不可避なもので、会社に責任がないとしても。

しかしある種の企業は、客に対して頭を下げず、国に対して頭を下げます。NHK、民放を含めた日本のテレビ局はその代表です。

理由は単純で、不祥事を起こしても、客が離れてつぶれてしまうことがないからです。利益を生む源泉が、客の支持を集めることではなく、国によって与えられた放送免許にあるからです。

テレビ局の横暴を止めるには、規制を強化するのではなく、規制を緩和すべきとぼくは考えていますが、その大きな理由はここにあります。規制を強化すれば、テレビ局における顧客としての国の位相はますます高まり、一方でより視聴者を軽視するようになります。テレビ局の問題は、視聴者軽視に尽きるというのに、その傾向をますます強めるだけだからです。

テレビ局の視聴者軽視の姿勢は、不祥事が起きたとき、やたらと「コンプライアンス(法令順守)」という言葉を使うことにも見て取れます。何か不祥事が起きたときに「コンプライアンスの徹底」などということしか考えられない企業は、終わりです。というか、終わるようにしなければいけません。

なぜならば、そもそもルールを守るのは社会人としての基本であり、企業の価値と言うのは、法令を順守しているかどうかなどという低い基準ではなく、はるかその上の基準、「お客様の満足する製品、サービス」を、どこまで提供できるかで決まるからです。

そして、そうした企業として当然の目標に向けてまい進している企業には、汚職等のルール違反を平気で犯すような社員が生存する余地はありません。法令順守が徹底しているからではなく、汚職などして企業の効率を落とすような社員は、「お客様の満足する製品、サービス」を提供する上で障害にしかならず、企業の没落を招くからです。コンプライアンス以前に、組織の死活問題だからです。

そう考えると、社内で淫行が起きると、「警備員を増やそう!」、汚職が起きれば、「コンプライアンス委員会を作ろう!」、などという手しか打てないNHKなどは、もはやゾンビです。競争の激しい民間の産業であれば、そんな企業はとっくに消滅しているはずです。

しかしNHKは確固として存在しています。民放各局も余裕で利益をあげ続けています。彼らの利益の源泉が「お客様」にはないからです。だから、社員の規律を正すには、もはやコンプライアンスを叫ぶしかないまでに堕落しているというのに余裕なのです。

彼らの顔を客の方に向けるには、客の判断次第でつぶれるという状況を作り出すことしかありません。

そしてそれはまた、ぼくのように無力な下請け、孫受けの制作者のためにもなります。なぜならば、各テレビ局が視聴者の方向を向き、いい番組を作ることに生き残りをかけるような状況になれば、テレビ局の管理職たちは、下請けや部下の能力をシビアに判断することを迫られ、そこにコネや癒着やハッタリやおべっかの入り込む余地はなくなるからです。


…こんなことを書いたのは、最近NHKで仕事をしていて「無能な管理職が増えた」とつくづく感じるからです。汚職の疑いがある管理職たちがごっそり異動し、その後釜に来た人たちが、ものの見事に無能ぞろいなのです(もちろん例外もあります)。多分彼らは、汚職ができるほどの才もないのでしょう。だから汚職はしないでしょうが、それだけです。法令を順守することで給料をもらっているようなものです。

そういう人間の下で働くとき、ぼくは言われたことだけをただ粛々とこなすようにしています。番組を良くするような着想が浮かんでも、提案したりしません。そんなことをしても、なんの得にもならないどころか、いらぬトラブルを招くだけだからです。仕事の直接の発注主からも、「切られたくなかったら、明らかな間違いであっても指示に従え」と厳命されています。国民から取り立てた受信料を着服するのは論外です。しかし、効率の悪い仕事をして受信料を浪費するのも、それに劣らぬ裏切りだと思うのですが…。

まあ、NHKのようなシステムでそこまで改革できるのであれば、今頃ぼくらは真っ赤なユートピアでみな幸せに暮らしていたでしょうね。



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この記事へのコメント
どうでしょうね。例えば私は、「地上波テレビ局」が視聴者の方向を向くことなど、絶対にないと絶望視しております。
何故なら、彼らにとってのお客様は、視聴者ではなく「スポンサー」ですから。商品も視聴者に提供する「番組」ではありません。スポンサーに提供する「視聴率」です。言うなれば、テレビ局にとっての視聴者は、商品を肥え太らせるための「エサ」です。番組は、エサをより多く収穫するための「肥料」でしょうか。
視聴者が「お客様」になれるのは、有料放送に対してだけです。有料のCSチャンネルになら、私はまだ期待を抱けます。「お客様」が契約解除することを、彼らは嫌いますから。
地上波には、もう金輪際期待しません。「食用の豚に食べさせるトウモロコシ」ごときが何を言ったところで、彼らはエサを変えるだけです。
Posted by uNKNOWN at 2007年05月23日 05:40
まぁ、何というか、oribeさんもテレビ局の人間なんですねぇ。
Posted by at 2007年05月23日 09:04
正直、復帰してからのネタはつまらんですな。
愚痴を聞かされているだけ。

そんなに現行のTV局が作り上げた番組制作システムの枠が気に入らないのなら、他の仕事をやればどうですか? 映像の仕事って、TV局相手のものだけじゃないでしょ?
Posted by shootron at 2007年05月23日 10:41
ヒヤヒヤ。パチパチパチ。
まったくその通りであります。
Posted by hiten at 2007年05月23日 11:16
<どうでしょうね。例えば私は、「地上波テレビ局」が視聴者の方向を向くことなど、絶対にないと絶望視しております。

私は逆に「いとも簡単に視聴者のほうを向く」と思っております。
なぜなら視聴者の支持が無ければスポンサーがつかないからです。
今も昔もそれがマスコミの本質ではないでしょうか。
言っていることは似たようなものですが(笑)
Posted by はまちゃん at 2007年05月23日 11:26
放送のことは詳しくは知らないのですが規制緩和して新規参入する電波の枠は足りているのでしょうか?私も放送や新聞、雑誌等のマスコミ業界は規制で守られた歪な業界に感じます。地方局やCS、UHF等のアナウンサーとキー局アナウンサーは一体何が違うのかと。そこは入社試験のみの結果であり実力主義のキャリアアップは働かない世界。アナウンサーと特殊技能職だが、営業や事務まで一律高給なのは僻み以前に明らかにおかしい。

また日本の特徴として規制や資格で守られた業界の給与は一般より高い。日本は貿易立国、科学立国だと政府が音頭を取っても弁護士、医者、マスコミ等内需系職業が花形であり、優秀な人材(悪く言えば賢くあざとい)はそちらに流れている現状は如何なものかと思います。
Posted by ララ at 2007年05月23日 12:17
客におもねって下品なお笑い番組ばかり垂れ流すと非難され、視聴者を見ずに自家中心的なことをやってるとこんどは…真実はこの間ぐらいにあるんでしょうが、なかなか…
おっしゃるとおり、コンプライアンスなんて馬鹿のやること…とまではいいませんが、汚職もまともにできないような無能な人間よりは妾を何人囲おうが、自分の職務をまっとうする有能な人間と仕事をしたいものです。まぁ友達にするなら別ですが。で、中国からの輸出品みたいに、自分の商品に毒が入っているっていう、あまりにもわかりやすいコンプライアンスの問題で例えると、意図的であってもそうでなくても、無能な人間が貴重な電波を無駄遣いして、腐った商品を垂れ流すことになってしまっているのは法令を単純に条文通り遵守していたとしても、結果的には社会倫理としてどうなの? と思うのですよ。(その番組を見た結果精神を病む人が出てくれば、コンプライアンスの問題になるかもしれませんがw)フルセット・コンプライアンス的にはこちらのほうが余程問題です。
Posted by jhon at 2007年05月23日 12:30
ゾンビではなくバンパイヤ。しかもその報酬たるや30代で千万越え、で電通並みのコネ採用。何とか還元水の息子も某NHK穴。
変幻自在の吸血鬼に見つからない様にかくれんぼ。
「無能な管理職が増えた」その通りです。
根っ子が腐り始めてます。有能なペテン師なら騙されガイもあるものを、、、。
定年をとっくに過ぎた爺婆が座る椅子があるんだもん○×財団、○×法人、特区徳得だわさ。
港区のアスベストだらけの煉瓦のだだっ広い部屋で年収ン千万の天下りの爺婆がやることも無く毎日フリーセルゲームに興じてる姿、耐えられん。
Posted by ミカエル at 2007年05月23日 13:08
いつも楽しく拝見させていただいております。ありがとうございます。
--

さて、記事についてボクもほぼ同意見です。

また、絶望の中には何も生まれないことから、やはりメディアーーーコンテンツを産み出す職業のひとつーーーに関わっている方であれば、最後の最後まで自分なりの志を持っていることは素晴らしいことだし、そうあるべきだとボクは思っています。

では肝心の「ではどうすればいいか?」という方法論や方向性ですが、例えば…、

現在のテレビ局は視聴率という、ある決められた尺度によって関係者が右往左往している現実がありますよね。 であれば、テレビ局やスポンサーが視聴者の方を向くような新しい尺度を作ることによってそれは可能になるかも知れません…と、ふと思いつきました。


それは例えば、「企業の社会的責任(SCR)」をテレビ局向けに導入する第三者機関(既存のなれ合いのような審議会ではなく)を設置するという方法もあります。

今で言うところのビデオリサーチのような類のポジションになると思いますが、それにしても、そのハンドリングは“D”のようなところが、牛耳ってしまうのでしょうが、まぁ、それは得意分野ということですので(笑)、全体としては良い方向性になると思います。


もしくは、『価格.COM』のような発想で、視聴者が積極的にまとまって意見を言うネットサービスもありかも知れませんね。そして、積極的にユーザーの意見を聞き入れる姿勢は良い企業イメージに繋がることからも、スポンサードしてくれる企業は多いかも知れません。

長文失礼いたしました。
陰ながら応援しております。どうぞご自愛下さい。
Posted by いしやま at 2007年05月23日 14:20
>>はまちゃん様
>>なぜなら視聴者の支持が無ければスポンサーがつかないからです。
…私はその部分に、大きな疑問を抱いているのですが。
「視聴者の反発を気にしないスポンサー」がいるんじゃないか…と勘ぐりたくなる番組(スポンサー込み)は、個人的には結構あります。
Posted by uNKNOWN at 2007年05月23日 14:41
しかもこのゾンビは国民の血を啜って生きてます。
Posted by P at 2007年05月24日 10:51
このブログはほとんどゾンビ状態だと思うが
Posted by at 2007年05月24日 11:55
まぁ、最後の3段落はNHKをほかの大企業や役所(JALでも何とか銀行でもよい)の名前に代えてそのまま読んでも成り立つ、会社批判の公式みたいな文章ですな。

「最近の若いモンは…。」の長文バージョン。
Posted by at 2007年05月24日 12:23
日本のテレビの腐敗ぶりは社会的問題になってると思うし、Oribeさんはそのあり様に対してテレビに携わるものの一人として提言されてるわけですよね。
テレビに携わるものがテレビ局のあり様に対して意見するのは、裏切りですか。
恐らくご同業だと思われる匿名諸氏のコメントを見るにつけ、この国の放送業界の病巣ぶりが窺い知れるというものです。
この国の腐敗しきったマスコミに公正な報道など期待しないほうがいいのかもしれませんね。
Posted by 簗瀬 at 2007年05月24日 17:06
そもそもTV番組にCMを出すことで売れるものなんて、番組そのものとタイアップしたものだけでは?
玩具会社がアニメ番組のスポンサーになってキャラクターグッズを売るような例ですね。

なんせ情報メディアが多様化している訳で、スポンサーでさえTVCMで客が自分達の方を見るとは思っていないような気が・・・
僅かなりとも慎重さがあるものならば誰だって何か買おうとする時には、TVCMで比較しないで専門誌なりレビュー記事なりを探すでしょう。
昔のようにTVと新聞と店頭だけで選ぶ時代ではありません。

正直、TVCMはスーパーの安売りチラシ以下でしかなく、仮に規制緩和してTV局の視聴率争いが激化したとしてもスポンサーサイドではTVCMの効能は今と大して変わらないと思いますし、番組競争が激化してもそれはTV業界から外に一歩も波及しないと思いますよ。

CMなんてスキップさせるか便所に行くかお茶を入れるか雑談するかで、いちいち見ないし(本音
Posted by 桜十字 at 2007年05月24日 18:13
復活されていましたか、1ヶ月以上気付きませんでした・・・遅れ馳せながらお帰りなさい。

それにしてもNHKは兎も角(それ以前の問題ですから)、民放の連中はそもそもスポンサーの金が何処から出てるかなんて考えた事無いんでしょうかねぇ・・・まさか企業が印刷工場で作ってるとでも・・・?
まぁ、その辺の認識となるとスポンサー企業の中にも怪しいのがチラホラ・・・。
Posted by k.c at 2007年05月24日 21:38
俺も、
「視聴者に有益な番組=高視聴率番組=スポンサーにとって有益な番組」
と云う図式には懐疑的だな。

TVCMの刷り込み効果が有効なのは、タイアップソングだけだと思う。
視聴率の高い番組を独占スポンサードするよりも、枠を決めないフリー契約で流す方が効果が高い気がする。
データなど無いので想像に過ぎないが。

視聴者が番組に対して直接対価を支払うPPVにしないと、視聴者の為の番組なんか作られないし、今の地上波TV局にそれを求めるのは全くナンセンスだと思うな。
Posted by mdyaroh at 2007年05月25日 00:44
もうペイビュウしかないでしょう
他の商品と一緒で欲しい人がお金を払う
コマーシャルを見ることを許諾した人だけがみる
これがシンプルな商形態だとおもいます
Posted by うっちゃん at 2007年05月25日 21:30
日本のマスメディアは現行のままで進んだら視聴者、読者から見放されるのは目に見えていませんか?
新聞はそろそろ限界という感じです。新聞の次はテレビでしょう。
今のメディアは有益な情報を流そうというより、製作者側に都合の良い嘘ばかり垂れ流そうという印象がぬぐえません。事実として嘘を垂れ流していますよね。
そういう事をやっていたらどんな団体だろうと遅かれ早かれ滅ぶんじゃないでしょうか。
Posted by akatori777 at 2007年05月29日 13:47
僕は「勿論」、NHKの受信料を払っていません。
Posted by FUTTY at 2007年06月06日 12:32
 NHK職員のoribeさんには申し訳ないが、私は、「勿論」もう何十年もNHKの受信料を払っていません。勿体ないからではなく、NHKという存在の、この国に於ける立場・位置が全く理解できないからです。国営放送と名乗っておきながら、国家公務員でもなければ、無論企業でもない。そのくせ、国家公務員でもあり企業でもある。番組の素晴らしさは、重々承知しています。非常によく観てますから。しかし、払う気はない。この超身勝手は、理由はともあれ、決して私一人のモノだけではないと思います。
 一昨年、受信料の着服事件が発覚してから、この長年私が貫いてきた姿勢が、決して間違っていなかったという確信を得ました。恐らく、発覚したのが、たまたま一昨年のことだっただけで、水面下では、ずっと以前から行なわれていたはずではないですか?
 運営費ということで言えば、NHKは本来、国から予算を貰うべきではないですか?だってCMを流している訳ではないから。私たちは、民放が流しているCMの商品やサービスを買って生活しています。そうやって、そのCMの提供元の企業で働く人々の生活を支えています。しかしNHKとの接触といえば、受信料を徴収しに来る人か、TV内でのモニター募集の欄(コーナー)くらいなもので(良質の番組を提供してもらっていることは、重々承知してはいるものの)、我々の日常生活に対して直接的な利益・有用性を提供してもらっている感覚がないから。「ありがたい番組」は提供してもらってますよ。だけど、それは国営放送の仕事として当然のことであって、だからといって、我々がNHK職員さんの生活を支える理由には、どうしてもならない。
 NHKの受信料も、強制であって強制でない。いっそのこと、何処かの民宿みたいに、受けたサービスに対する対価を、視聴者が決めるという方式を採ってみては?で、不足分は国から貰う。
 長々綴りましたが、本当はこんなことを書きたかったのではなく、放送局の"JR"であるNHKが、本来は、最も国をありのままに映す存在でなければならないはずなのに、単なる「国の番犬的存在」でしかなくなっているということを、ちょっと長々と述べてみたかったのですが、その件に関しては、次の回に譲りたいと思います。



Posted by FUTTY at 2007年06月06日 13:32
FUTTYさん

> NHK職員のoribeさんには申し訳ないが、

主張はともかく上記は大暴投ですな(w
通信簿に「人の話を聞いてない」「プリントを読まない」と評されませんでしたか?
Posted by 小野まさ at 2007年06月07日 03:02
タイトルに惹かれてトラバしちゃいました。
本当に国民みんながテレビ見なくならない限り、変わらないのかもしれませんね。
Posted by しっぷう at 2007年06月07日 23:23
NHKに素晴らしい番組など期待しておりません。
国営放送はただ事実事項のみ全映像カット無しを流していればいいのです。

主観、捏造、作為を含ませられる編集こそ不要です。参加者、設定に仕込みが出来る討論番組も不要です。アナウンサーすら不要です。合成音で十分です。
Posted by urea at 2007年06月10日 19:27
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