2008年03月28日

テレビとルターと著作権

ユーチューブの台頭以降、テレビ局は、やたらと著作権を黄門様の印籠のように振りかざして規制をうながしています。テレビ局の本音は、「ネットの成り上がり者たちがおれたちの縄張りに無断で入ってきてもうけて、おれたちにみかじめ料を払わないのはおかしい。おれたちにもネットの甘い汁を吸わせろ。言うこと聞かないと潰すぞコラァ!」ということなのですが、あんまりストレートに言うと世間の同情を得られないので、「著作権を蔑ろにすることはクリエイターを殺すことだ。このままでは日本のコンテンツ力が弱体化してしまう」と上品に言い変えているわけです。

ぼくはこれまでにいろいろと番組を作り、中には何度も何度も再放送されて、その挙げ句DVD化されたものもあります。先日ネットで検索したら、ワンセット1万6千円くらいで販売していてビックリしました。まあそんなに売れるシロモノではありませんし、カネのことは言いません。でも、幾晩も徹夜して構成を練って撮影して編集して、その作品の中で使われている言葉はすべてぼくの頭の中から出てきたものなのに、ぼくの知らない所で勝手にビジネス展開されるというのは、どうにもやり切れません。

もちろんこれは、著作権の問題とは関係ないことです。契約書を提示されたわけではありませんが、この業界の慣行にならい、わずかなギャラをもらうことで、作品のすべての権利を制作会社に売り渡したわけですから。ぼくの立場が弱く、あちらの立場が強かっただけのことです。

しかし、こういう慣行の上に自分たちの資産を築き、もし制作者たちに出演者なみの権利を認めたらとたんに行き詰まるテレビ業界が「クリエーターのために著作権を守れ」と主張するのを聞くと、どの面下げてと言いたくなります。法律的に問題なければよしとばかりに、弱い立場にいるクリエイターたちを搾取しまくり、著作権の精神を踏みにじりまくっているくせに。

それにしても著作権の話は魑魅魍魎で、とてもぼくのような素人に深入りできる問題ではありません。とはいうもののネットとテレビ局などのコンテンツホルダーと著作権を巡る今の状況は、上に述べたテレビ局の態度にしてもそうですが、著作権の保護を叫ぶことと著作権の精神が反対の方向を向いているような、不気味な状況にあるといえると思います。

著作権(コピーライト)誕生のきっかけは、15世紀なかばのグーテンベルクによる活版印刷の実用化です。コピー技術の開発で、筆者の知らぬ所で印刷屋が勝手にどんどん本をコピーして売るようになり、これはとなったわけです。

そしてコピー技術による最初のメガヒットが、ルターの翻訳聖書です。数年のうちに数十万部売れたとかいう話もありますので、当時の人口と技術、そして本の値段を考えると、今もって史上最大のヒット作といえるかもしれません。

そんなに売れる本ですから、当然あちこちで勝手にコピーされて売られることになり、ルターさんも頭を悩ませたそうです。印税が少なくなることは大目に見ていたそうですが、何より我慢ならなかったのは、一字一句にまで骨身を削って考え抜いた文章を勝手に変えられてしまうことでした。ルターさんの願いは、ドイツの各家庭に自分が訳した聖書が行き渡ることなのに、勝手に中身を改変されてしまってはメッセージが届きません。著作権が整っていれば、あまねく世界に正しい情報を届けられるのに、と思ったかもしれません。

それから500年あまり。技術的には国境を越えてあらゆる情報をやり取りすることが可能なのに、著作権が壁となって、人為的に制約をかけています。もしも、著作権のない時代から一足飛びにネットの時代になっていたら世の中のコンテンツ産業はどう発展したでしょうか?人類は創造することをやめてしまったのか、それとも・・・。



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この記事へのコメント
インターネットの出現が著作権を脅かすと、クリエイターや発明者のやる気を殺ぎ、まるで共産主義のような社会になってしまいそうでいやですね...それとも強かな人間が新たなビジネスモデルを発掘して、新しい世界を作るのでしょうか。いずれにしても世の中の変化は良くも悪くも否応無しにやって来ます、ピンチはチャンスと考えるのが吉ですかね \(^^)
Posted by trma at 2008年03月28日 09:40
TV局のYouTubeに対する対応は規制一辺倒ではなく、いいように利用している部分もあるような。

というのは、一昨年末民放のある連続ドラマを見ていたのですが、YouTubeに漢字字幕の台湾のケーブルTVかなにかの録画がタイムラグもほとんどなく全編UPされ続けていたのです。
最初はすぐに削除されるものと思ってましたが、ドラマ放送中はずっとそのままで、日本で最終話が放送されるやいなやバッサリ削除されました。

視聴率うなぎ登りのドラマが出現しにくくなっている現在、画質は悪くとも第一話からの映像をあます事無く視聴できる機会があれば、評判を聞いて途中から参入しやすくなる。
本放送が終わってしまえば後はDVDを売って、再放送の視聴率を稼ぐ為にはYouTubeの動画は邪魔になる・・・という事だったんでしょうか。
Posted by デポ at 2008年03月28日 20:10
著作権保護というのは、作家や直接製作に関わった人達の権利を保護する為ではなく、
著作権保護に関わっている人達の利権を保護する為にある「大義名分」なのかも知れません。

あるミュージシャンが、自分の作った歌詞を雑誌か何かで引用したら、
その分の著作権料を請求された、なんていう笑えない話がありましたね。
Posted by arcadia at 2008年03月29日 16:38
遅れ馳せながら復活おめでとう御座います。
長い中断の間色々あった様ですがこれからも頑張って下さい。
著作権の問題と言えば、最近YouTube等の動画投稿サイトを見るにつけ、私にはどうもこれが言論封殺の都合の良い口実になっている様なフシが感じられるのですが如何なのでしょう?
著作権法でも部分的な引用は認められていたと思ったのですが、映像作品などはまた扱いが違うのでしょうか?
何れにしても我が国の大手マスメディアのこの辺りの感覚はかなり古いと言うか、ホントは作り手の権利がどうとかはどうでも良くて、やっぱりヤクザの上納金かみかじめ料みたいな感覚で居るんじゃないか、って素直にそう思いますね。
Posted by k.c at 2008年03月30日 02:47
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