2008年04月09日

閉鎖的なぼく

Redditを見たら、なんだか日本についての記事が1位になっていてたくさんのコメントがついていたので読んでみました。「厳しい現実:死にゆく日本」というタイトルのブログの記事なんですが、その内容はこんな感じです。

日本はひどい少子化で人口減に苦しんでいる。人口増のためには移民を受け入れるべきだが、日本はそれを拒んでいる。

移民は人口増だけでなく、硬直した社会に新しい考え方をもたらしてくれる。しかし日本社会はあらゆる面で人種差別的で閉鎖的だ。警察や自治体はガイジンに厳しく、マスコミは外国人犯罪ばかり伝えている。日本人は日本人という単一性に強くこだわり、強制連行してきた在日韓国人の子孫にも同化を認めない。

人口減少を食い止めるための日本政府の無策ぶりは移民の拒否だけではない。女性が結婚して子供を産んだ後も仕事を続けるのは日本では困難だ。

それに加えて日本人は恋愛に淡白で、夫婦はほとんどセックスをしないし、女性の性欲はよくないものと見られている。

こうした事情で日本の地方は老人ばかりで、過疎化が進んでいる。

日本を救う方法は移民の受け入れしかない。でなければ日本の人口は永遠に減り続けて滅ぶだろう。


鹿児島で暮らしているというオーストラリア人が書いたこの記事は、特にユニークな視点ではありません。すべて間違いではないけれども、上から目線のステレオタイプな見方。大方の日本人はおもしろく思わないけれども、ある種の日本人には歓迎される。そんな昔からよくある典型的な欧米人の日本社会批判です。

最近では、アニメやマンガのおかげで、日本を夢の国のように理想視する若い外国人たちも増えていますが(それはそれでどうかしてる)、そういう人たちをWapaneseと呼んでバカにする層はそれ以上にたくさんいます(その気持ちはよくわかる)。そんな人たちはたいていワパニーズにこう諭します。

「日本は夢の国などではなく、世界でも有数な差別的かつ閉鎖的な国なのだ」

日本人としてはとても寂しいことですが、差別的とか閉鎖的とかいうイメージもまた、自動車とかアニメと同じように、日本のステレオタイプなのです。

ですからこの記事がRedditで数百にのぼるコメントを集めているのを見たとき、ぼくはまたかとため息がでました。それにRedditというところには、アメリカ的な意味でのリベラルな方たちも結構うろついています。彼らはスシとかプリウスは大好きですが、多文化共生とか、リベラルな価値観を絶対視しがちです。

しかし、その心配は杞憂でした。もちろんこの筆者の話に同意するようなコメントも散見されますが、寄せられたコメントのほとんどはそうではありませんでした。

「自分が日本に受け入れてもらえないんで日本のせいにしてるだけだ。筆者の方こそ日本人をステレオタイプで見る差別主義者だ」とか、

「出生率の低下ならヨーロッパ各国でもおきてる。これから食糧&資源不足の時代が来る中、あんな小さくて山ばかりの島国で今の人口を維持するのは不可能だ。多少減るのは自然なことで、それで日本は苦労するだろうけど滅びなんてしない」とか、

「移民を受け入れるかどうかは日本人が決めることで、まわりに迷惑かけてるわけじゃないんだから文句つけるのはおかしい」とか、

「移民規制はヨーロッパでもしているし、多文化共生の方が優れているなんて独善的な幻想だ」とか、

「今の日本社会を変えてまで移民を入れるべきとは思えない。日本で一番物騒な街でも、アメリカで一番安全な街より安心して暮らせるんだから」とか、

「むしろ古い日本がなくなりつつあることのほうが心配だ」とか、

みんなどうしちゃったのよ?と拍子抜けするくらいに日本に理解を示しちゃってます。在日韓国人のことも、「強制的に連れてこられた人もいないことはないけれど、ほとんどはイギリスにいるインド人と同じで、富を求めて自分の意思で来た人たちだ。彼らが日本国籍を持たないのは日本政府が与えないんじゃなくて、彼ら自身がとろうとしないだけだ」とか、イギリス人の方が丁寧に説明したりしています。

こんなこと数年前には考えられませんでした。もちろん日本のことを曇りのない目で見る外国人は昔からたくさんいたはずですが、彼らの言葉はなかなか表には出てこず、目に付くのは海外のマスメディアにおける上から目線のステレオタイプな日本批評と、それをオウムのように反芻する日本のインテリの言葉ばかりでした。

10年前より5年前、5年前より去年、そして去年より今と、日本と欧米の距離はどんどん近づいているような気がします。こっちも近づいているし、そしてなにより向こうの方がすごいスピードで近づいてきているのを感じます。

今回、ネタを提供してくれた記事の筆者と並んで偏見にあふれていたのは、欧米人たちは相変わらず上から目線で日本を批判するだろうと決め付けてしまっていたぼくだったわけでした。とほほ。

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この記事へのコメント
いつも面白い記事で、楽しみに読んでます。なかなか他にないですよ、こんなに面白いブログなんて。
ところで、テレビの仕事をやめられたそうですが、今・今後はどういうことをされていくのか、とても興味があります。さしつかえなければ、そういうことについても触れてください。
Posted by ティーべ at 2008年04月09日 09:43
渡辺

ふーむ、不思議な現象ですねえ。中韓の工作が活発な英語圏のインターネットで、
しかも海外マスコミも従来の日本報道に終始していると思われるのに。

日本政府が特別なことをしているとは考えにくく、従来型リベラルがネットで受
け入れにくくなりつつあるのか、日本ファンが増えているのか、謎です。

管理人さんの見解を聞かせてもらえれば幸いです。
Posted by 渡辺 at 2008年04月09日 10:13
「マスコミは外国人犯罪ばかり伝えている」という事はオーストラリアでは外国人犯罪は滅多に報道されないんでしょうか。

でもある意味、このオーストラリア人は日本のマスコミの報道をとても真面目にチェックした結果、このような投稿をしたように見えます。
「このままいくと日本の未来は!!!」みたいな報道は毎日のようにされてますし。

少し前にラジオでパックンマックンのパックンが「人は隣の芝生は青く見えるものなんです。社会保障に不安があると、すぐ北欧がいいとかー、輸入品で食生活が豊かになると、今度は食の安全がとかー、いつまでたってもキリがない。」と話してましたが、このオーストラリア人はこれからもずっと日本にいるつもりで憂いているんでしょうか。

それにしても、在日の帰化問題なんて日本人でも良く知らない人がまだまだいるだろうに、そのイギリス人の人はすごいですね。
Posted by cube at 2008年04月09日 13:00
oribeさんがなされているような事を、日本から欧米へという逆ベクトルで輸入している人たちのおかげなのでしょうか。
なんかほのかに嬉しい気持ちです。
でも、海外で暮らしている日本人の可能性も?
Posted by とうふ at 2008年04月09日 13:09
大手メディアで上から目線のステレオタイプな日本批判が多いのは事実ですが、日本関連のブログがだんだん充実してきていろんな声が聞こえるようになってきています。日本在住の外国人が増えてますが、だんだん英語メディアの偏向ぶりに気付き始めるというパターンがあるようですね。ネットの世界では無知な外国人アクティヴィストや日本の左翼への疑念がここのところじわじわと広がっている印象を受けます。英語のできる日本人や日本語のできる外国人が大手メディアに流れない正確な情報をネットに流すようになってきているのが大きいでしょう。ここ数年でだいぶましになってきていると思いますよ。まだまだですがね。
Posted by mozu at 2008年04月09日 14:25
「日本を観光国に」小泉さんがそう音頭を取っていた当時は「
わざわざ遠くから来るとは思えない。なんとも馬鹿げたことを・・・」と思っていたのですが、
今や日本のあちらこちらで海外からの観光客が珍しくなくなりました。
当時の自分は日本の文化的な価値に気がつかなかったんだなーと思い返す次第です。
今回のエントリーを読んで、自分が行ったことのある国で実際に楽しい想い出があれば、
より深く調べてみようとするものなのかなぁと、観光客の増加との関連を思ってみたり。
Posted by パジャマ男 at 2008年04月09日 14:44
そのオーストラリア人が書いたような発言は度々外国人から聞かされますし、ネットの書き込みでも良く見ます。
コンビニに売っていたとされる「外国人犯罪ファイル」という雑誌がよく話題になってました。

後はやはり有道出人ですかね。
彼の影響力は相当あります。
Posted by トシ at 2008年04月09日 15:15
感動しました。

しかし、それを知っても、敢えて無視する人もいるんだろう。これも、偏見かな。
あらゆる日本の文化の基礎を伝えた朝鮮半島に感謝せよ、と言うような欧米の輩は、いままでの知識に固執するんじゃないかなぁ。特に年齢がいくと…
Posted by アゴ at 2008年04月09日 19:40
このオーストラリア人は、
なぜ死にゆく日本に寄生してるんだろうか?
私なら死にゆく国に滞在も寄生もしたくないし、
関わりたくもない。
有道出人と同じ臭いがする。



Posted by ran at 2008年04月09日 20:23
この豪州人は、鹿児島と言う地方都市に、何年住んでいるのだろうか。自分で実際に見た事なのか。
 その気になれば、100%論破出来る事ばかりの、サヨクのよく言うステレオタイプ論に過ぎない。
 日本の問題は、ここ十数年間GDPが増えない、デフレだと言うのに。
Posted by 八目山人 at 2008年04月09日 21:13
これも偏見ですが、あまりにも典型的なので。たぶんこの人の情報源はネットではDebitoのブログとJapanTimesとJapanTodayと毎日の英語版でしょう。だいたいどんな本を読んでいるのかも想像できます。そして日本語はたぶんあまりできないでしょう。こういうタイプをありがたがる日本人がいるのが問題なんですがね。
Posted by mozu at 2008年04月09日 22:24
都内の某米系企業で働いてますけど。。。。外人沢山居ますよ。欧米に限らず、最近インド人大杉wなぐらい。すごくうまくやってます。外人の同僚にも「おつかれー、又明日ー」って言って帰ります。ポイントは彼らがちょっとの日本語を話してくれる事、そうすればこちらも、「俺たちばかり協力させられている』気分なしに、気持ちよく、異文化交流できますもん。うちの社を見てると、日本が差別的って何処の話って思います。
Posted by スリーナイン at 2008年04月09日 23:01
結局、何も今に始まった事では無く解ってる人は解っているって事なのでしょう、ただ今迄はその様な人達に発言の場と言うか意見を発信する機会が無かったって言うだけで。

然し、最早時代は、世界は変りました。
現にこうやって私の如き無知無学の徒が、人様のブログにお邪魔してわかった風な事を書き込んで悦に入っているのですからw

そう、凡そこの世に存在する悪徳の限りを飲み干し醜く肥大化し骨の髄まで腐りきった邪心に塗れたオールドメディアよ、貴様等をWeb2.0(笑)が地獄の底へと叩き落すのだ!!!


…ろうか?
Posted by k.c at 2008年04月09日 23:26
初めてコメントさせて頂きます。
今世界ではネットの普及により右派がそれぞれ増えてきていると聞きます。

そうした流れで、自国だけでは無く、他国の保守にも理解が広まってきたんではないでしょうか?

移民問題はスウェーデン、フランス等でさんざん問題点が見えていますのでこの認識は世界共通なんだろうと思いました。

あと私もブログを書きはじめたんですが、いつも大変興味深く拝見させて頂いてますのでリンク張らせて頂きました。

これからも楽しみにしています。
Posted by VODG at 2008年04月10日 05:24
自らの環境を鑑みて、相手を尊重する。
こういう理解してくれる外国人さんを歓迎したいです。
ぶっちゃけ勉強になります。
Posted by 猫 at 2008年04月10日 09:53
今日、こんな面白いブログがあったことを
知ってとても興奮しています。
できれば、どんどん翻訳した記事を載せてほしいです。
特にチベットや中国に関する話題はとても興味深く
感じました。
Posted by shaku at 2008年04月10日 10:15
日本が抱えてる問題は、程度の差こそあれ、他の先進国も抱えてることが多いんだよな。
Posted by 東 at 2008年04月10日 14:39
欧米で「差別社会ニッポン」みたいな記事を好んで書くのはユダヤ系のメディアが多いですね。NYタイムズなんか、その典型。悪名高い有道出人さんもNYTが好んでとりあげています。日本の書店にはユダヤ陰謀論モノがけっこうな数で置いてありますから、ユダヤ系の方は、それに憤慨して日本社会を人種差別的と叩きます。でも実際に日本に住んでる欧米人やアフリカ人からすると「日本が差別社会??」という感じだそうです。
Posted by 太郎 at 2008年04月11日 00:20
豪州、NZ、アメリカは国連での先住民に対する権利決議に反対しましたが、自国の先住民に対する差別はどうなんですかね?
Posted by   at 2008年04月12日 14:42
おそらく日本製品が他国のもの、特に最近は中国製品よりはるかに優れているがゆえ、欧米人は日本製を信じられないほど評価しています。イタリア存住の英国人が「日本車はスタイリッシュだから人気が高い」と言ってました。またここ20年ほどで昔の「お登りサン」的な旅行者も減り、行儀の良い日本人は好印象のようです。つまりアジアの中では日本は優等生と見られてるようです。
あと英国や欧州の人たちは移民とかグローバリゼーションで独自文化が壊されたことを遺憾に思っているようで、「日本はどう?」という質問をよく受けます。「オレたちみたいになるなよ」というニュアンスですね。

案外日本人が思ってるほど、世界で日本人は嫌われても軽蔑されてもいない、というのが実感です。
もっと自信を持って良いですね。

このブログは他の保守系ブログと違って、前向きで明るい話題が多いのが良いと思ってます。
これからも拝見させて頂きます。
Posted by 日本人 at 2008年04月13日 22:35
俺、今もうすぐ22歳になるイギリス白人の女子大生と付き合っています。

彼女は韓国人の所業に不快感を感じていました。
特に打ち込んでいる剣道のことで文化窃盗、起源捏造をやらかして居直っていることで
韓国人の言うことを鵜呑みにせずに疑うようになったと。
イギリスでも日本と同じで弱者優遇の弊害から、マイノリティの理不尽な要求ばかりが通り、
謙虚で真面目で人種的でない一般庶民の疑問がレイシストと
ラベリングされる雰囲気もあるからフラストレーションもたまっているのでしょう。

ブログ主さんはTV業界務めでオタク文化に好意的でないと思いますけど、
ここ数年でヨーロッパ人の意見が変わったのは、幼い頃から見ていたアニメ、マンガで
日本人の価値観や生活思想を皮膚感覚で理解していた子供たちが成人したことが大きいと思います。
japanophileの白人の若い子と話をすると分かると思いますが、
神風特攻隊も武士道の表現と理解してもらえます。
俺が5年前に、ヨーロッパで狂気の沙汰と神風を笑われたときとは隔世の感があります。
もちろん移民問題で保守化した影響も大きいと思いますけど。

彼女はアニメ、マンガから日本にはまり込んだ剣道初段のtypical wapaneseですが、
エディンバラ大学在籍の知的な女の子ですよ。
彼女の部屋でweeabooが出てきてトラブルを起こす回のあるアニメを見せたら、
顔を真っ赤にして苦笑いをしてました。

彼女が日本語を勉強している理由は
「日本人は引っ込み思案で他国人の交渉説得が下手だし
めんどくさがっているから、私たちがやってあげる」
のだそうです。

wapaneseらしくちょっと感覚がずれているところがありますが、
世界全土でそういう分母が増えれば
高学歴で社会的地位を持った分子も増えるので
それを前提とした国家政策も考えてもいいと思います。
Posted by 初米です at 2008年07月14日 17:01
>初米ですさん

そういう話を聞くとホッとさせられますね。
とにかく日本の本当の、ありのままの姿をもっと多くの外国人に知ってもらいたいですね。
彼女、大事にしてあげてください。
Posted by よっしゃぁ! at 2009年07月16日 00:09
欧米的なステレオタイプが蔓延するのは、
彼ら自身の潜在的差別意識によるものが多分に
あると思います。単なる価値観の違いに過ぎない
のに、それを押し付けようとする傲慢さすら
感じられます。

日本人は欧米に対する過度な憧れや被差別
意識はなく、アフリカやアジアを含む他の
国の人々とはあくまでも対等な関係として
接しているので、
そのような扱いに慣れていない人にとっては、
暮しにくいと感じるかも知れません。
Posted by たつ at 2009年08月11日 17:05
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