2008年05月29日

アフリカ問題の核心をつくニュース

横浜で、第4回アフリカ会議が行われています。

福田首相は、15分刻みだかで2日間で計20カ国以上の首脳とマラソン会談をしたとか。手にしたメモを棒読みするだけの、会談とは名ばかりの儀式に過ぎませんが、アフリカのエリートたちというのは結構こういうことをありがたがったりするので、意味がないことはないと思います。

中国の資源外交攻勢を軸に、今アフリカでは、19世紀末の植民地獲得競争以来の「アフリカ争奪戦=Scramble for Africa」が起きているといわれ、これもまた、アフリカ争奪戦の一幕というわけです。

19世紀のアフリカ争奪戦の原動力は、いうまでもなく、「植民地を持つことで国家の威信を高めたい」という、欧州列強の純粋なるエゴでしたが、それは、「未開の民に文明を伝える」「イスラム商人による奴隷取引を止める」という、当時としては美しい大義を伴っていました。

現代のアフリカ争奪戦も、「資源」と「国際会議における議席獲得」という大国の思惑は必ず、「エイズ治療」や「貧困撲滅」などという美しいお題目を伴い、アフリカを伝える報道では、そういう決まりでもあるかのように難民キャンプの子供たちや貧しい人々が主役の地位を与えられます。

昨晩見た「報道ステーション」でもそうでした。

中国の資源外交やレアメタルの高騰で、今アフリカの国々は年4パーセントを越える経済成長をしているが、一般の人々はその恩恵に与れず、むしろ世界的な食糧価格の高騰で生活は苦しくなっている…。エチオピアの現状を伝えるVTRに続いて、司会の古館氏は、アフリカに対する先進国の欺瞞と責任を熱く語り、コーナーを締めくくりました。

しかしこの報道の肝は、その後にありました。古館氏の締めに続いて間髪をいれず、サブキャスターがこうテロップミスを謝罪したのです。

「先ほどのVTRで、福田総理と会談していた首脳のテロップが、エチオピアとなっていましたが、中央アフリカの間違いでした。訂正して謝罪いたします」

ええ、ええ、そりゃ仕方ありません。大方の日本人にとっては、エチオピアも中央アフリカも似たようなものですし、首脳の顔も同じに見えます。いくらアフリカの悲惨を言葉を尽くして語っても、貧しい庶民の救済を訴えても、所詮はレポートの主役として取り上げた国の首脳を間違えてしまう程度の他人事に過ぎず、こればかりはどうしようもないのです。

19世紀末から現在に至るまで、おそらくアフリカほどに人道家の眼が向けられた地域はありません。しかし、今もってアフリカの大部はグダグダです。たぶん「報道ステーション」は、そういう虚しい現実を、思い切った新手法により伝えてくれたのです。

参加国「温暖化で被害」強調
毎日 08年5月29日

banner_03.gif
この記事へのコメント
アフリカには、エジプトとエチオピアと南アフリカしか無いと思っていました。
Posted by at 2008年05月29日 13:42
 「大方の日本人」の一人として思いますが、奴隷貿易・植民地化・資源争奪など、アフリカ以外の国々の関わりでアフリカが「グダグダに」されてしまったのだとすれば、これから将来のアフリカ諸国が真の独立を得て健全な国家たり得るには如何にするべきなのでしょうか。
 それとも、所詮真の独立や健全な国家像などは望めない、荒れるに任せておいて後は野となれ山となれとでも言う様に、放置するしかないのでしょうか。
 どなたかご教示して頂けませんか。出来る事なら、個人的な偏見や先入観でなく、現実的かつ建設的なお考えとして。
Posted by . at 2008年05月29日 14:05
比較的うまくいってるボツワナみたいな国もあるんで、その辺が参考になるんではないかな。

何故アフリカに真の独立や健全な国家像が必要かどうかは知らんが。
Posted by at 2008年05月29日 15:02
うむ、僕も現実のアフリカに興味持てない。
エジプトとエチオピアと南アフリカ、動物関係でケニア、セットで覚えてるアルジェリアとナイジェリア、危ないシリア、性転換でモロッコ、ゾマホンさんのベナン・・・そんなもんかな。勿論、大体の位置しか判らない。正直、やや蔑視してるかもね(自覚的なレイシストですから)。日本人はみんなそうじゃない?

冒険小説の舞台としては好きですね。「ソロモン王の洞窟」等のハガード作品、ベルヌの「気球に乗って5週間」や「サハラ砂漠の秘密」…ああ、何れも主人公は白人だった(笑)。

. さん

偏見や先入観かも知れないが、現実的かつ建設的な考えを述べれば、もう一度植民地からやり直すのが当り前の解に思われます。但し「奴隷」ではなく「徒弟」として。いや、茶化してるんじゃないです。

半世紀くらい後の完全な独立を期して、民主的で穏健な先進国を「師匠」、第三国を「後見人」にして、その指導と支援の元に統治者・被統治者共に民主国家の訓練を始めて、徐々に自治権を拡大させていく。勿論、徒弟期間中「師匠」に対しては束脩代りに貿易上の便宜を図る。

現実的な案と思うけど、どんな後進国もプライドだけは高いから「徒弟」に甘んじることが出来るか疑問ですね。それさえ出来れば大きな障害は無いでしょう(「師匠」国と「後見人」国が善意かつ厳格で有り続けることが出来るかも難かしいかも)。
彼等が間違えたのは「民主制は滅茶苦茶難しくハードルが高い」ことを理解しなかったこと。何であれ難しいことへの対策が地道な訓練であることは当然。

それが嫌だというならば、世襲の王制に移行するのが次善の策である。
これも冗談ではなく、一生統治者の立場が安泰であるならば国を豊かにすべく心を砕くということです。逆に、次の選挙で負けたら投獄されると思えばこそ、大統領になった瞬間に私欲を肥やし始め、警察や軍隊を私兵化するのでしょう。付焼刃の民主制の方が危ないと思います。先進民主国家でも穏健で信用が置ける国には大概王家が残っています(英国も約束は守る…約束が詐欺だったりするけど)。
Posted by 小野まさ at 2008年05月29日 18:57
相変わらず皮肉っぽいね。

いい太古とは多少わかるけれど
Posted by ふう at 2008年05月29日 19:15
「国家」を押し付けられたアフリカの憂鬱
Posted by R at 2008年05月29日 21:09
>小野まさ様
 シリアはアフリカじゃありませんよw。あなた中学生ですか? 現実のアフリカに興味持てないとかバカな開き直りをする前に、もう少し恥というものを意識してからこういう公開の場で書き込みをした方が良いのでは?

 それとこれ。
>一生統治者の立場が安泰であるならば国を豊かにすべく心を砕くということです。

「スワジランド マイバッハ」あるいは「スワジランド 処女」で検索してみなさい。少しは貴方にも現実が見えることでしょうから。
Posted by しろ at 2008年05月29日 22:17
>しろさん
言いたいことはわかるけど、あなたも少し大人げないのでは?

それはともかく、スワジランドのお話、面白く拝見させていただきました。
個人的には、一部特権階級が欲望のままに好き放題するのは人間として当然のことなので別に構わないと思っています。
資本主義というのも共産主義ほど露骨ではないけど、一部の特権階級が好き放題するためのシステムですよね。
資本主義は自由競争による機会平等という建前をとっているためその他大勢の嫉みを買いにくい、特権階級を固定化するためのより洗練されたシステムだと思います。
今の日本は結果平等の建前による愚民化政策によって特権階級とその他大勢を峻別する共産主義に近いやり方をとっているようですが・・・。

ところで、しろさんはスワジランドのような発展途上国の王様(独裁者?)が国民を無視した浪費行動に走りがちなのはどうしてだとお考えですか?
Posted by bach at 2008年05月29日 23:09
小野さん、ありがとうございます。
しかと拝読致しました。
Posted by . at 2008年05月29日 23:49
しろさん

済みません、語感が似ていたのでカダフィのリビアと取違えました(笑)。
うーん、我ながら本当にアフリカに関心が薄いんですねえ・・・。確かに知ってると云った「有無ジェリア」も国名と漠然とした位置以外は「えーと、ラリーのコースが通ってた様な・・・」位の認識しか無いです。

スワジランド調べてみました。下手な民主国家よりも王国の方が安定はするんじゃないかと思った訳ですが、スワジの様に、偶々王様(それも代々か)の資質が劣悪である場合は当然そうなるでしょうね。でもアフリカの他の国と比べた場合、内戦がずっと続いて少年兵が居たり、民族浄化やってる所よりもマシじゃないですかね。
Posted by 小野まさ at 2008年05月30日 02:41
アフリカでどれだけ内戦が起こっても、アフリカでどれだけ餓死者病死者が出ても、困る国はそう多くない。むしろ下手に発展してもらったら、今まで輸出していた資源を国内で消費し、輸出量が減る分困る国が増えるかも。そういう意味じゃ、アフリカは現状維持が好ましいのかもしれない。

マラッカ海峡やホルムズ海峡と違って、アフリカは交通の要所でも何でもないのだから、内戦なりなんなり好きにしてくださいって感じ。
Posted by at 2008年05月30日 03:59
bach様
>スワジランドのような発展途上国の王様(独裁者?)が国民を無視した浪費行動に走りがちなのはどうしてだとお考えですか?

 こういう愚王ばかりがニュースのトピックとして取り上げられがちですが、私は別に「発展途上国の王(独裁者)は国民を無視した浪費行動に走りがち」とは思ってはいませんし、なぜ彼らがそうなるかと問われれば「それは個人の資質」としか答えようがありません。「正しい独裁者」と呼ばれるトルコのケマル・パシャや、シンガポールのリークァンユーやお隣・南朝鮮の朴正煕の様に開発独裁を推し進めて国力の底上げに貢献した人もいますし。アジアには安定した王国も見受けられます。
 いっぽう先進国では、優れた政治システムとそれを支える国民の民度(それを裏打ちする高等教育の普及度も含めて)がフェイルセーフとなって、こういう愚王の存在を許さないというのはあると思います。ただ、国民の政治への関心が低いといくら優れたシステムでも機能不全に陥ってしまうのは、チンパンジーと揶揄される人物が首相に納まっているどこかの国が証明していると思います。
Posted by しろ at 2008年05月30日 19:05
 1900年頃に、日本がアフリカのどこかを領有して、統治してみたかった。日本は額面通りの帝国主義を実行し、台湾、朝鮮、南洋、満州を10〜20年で立派な国にした。アフリカの国も、立派な国になった可能性がある。
 今ではもう無理だが。
Posted by 八目山人 at 2008年05月30日 21:07
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

banner_03.gif
この記事へのTrackBack URL

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。